夜明けのすべてのレビュー・感想・評価
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日常の、現状を知る映画
正直、上白石さんを拝見するために鑑賞しました。以前からカバーソングとかよく聴いてて、なんとなくファンです。
映画の内容はタイトル通り、日常で苦しんだりヒステリーやパニックになったりする事情を知ったような気分になる勉強になる映画だったと思います。色気も格好良さもありませんので、休日の娯楽とするのは辛いかも知れません。
上白石さんが演ずるところの主人公がPMSという症候群をお持ちと云うことで、突然にキレだしてしまう人の日常を描いた作品ということですが、「ああ、そういう人いるなあ」と感じました。ただ、この映画ほど重くは無いのかもしれないけど、やっぱり声を張り上げて切れる人や、依存症、症候群、恐怖症等々、みんな何らかの病的な問題を抱えていて、生き辛さを感じているのだろうなと思う。それでもお互い理解しながら生きていく。エンディングのスタッフロールで和やかな会社の日常を写す締めくくりはそういうことかと想いました。ちょっとキャッチボールはやり過ぎかなw でも、松村北斗さんの演ずるところの人物が、最初はぶっきらぼうだったのが、お菓子のやり取りにも慣れて、現在の仕事を続けていくことを決意し馴染んでいく姿は、良い成り行きだったと思います。でも移動式プラネタリウムの会社だったら素敵だし誰でもやりたくなっちゃいますね。
病症については色々議論が生まれそうな話だと思います。「蓋を開ける音を立てるな。水ばっか飲んでないで仕事しろ」ってキレるのも、ヒステリックなキレ方は問題だとしても、よく考えてみれば、非常に真っ当な意見ですよね。モヤモヤしたまま、みんな腹の底で思っていても口に出せない。中には溜め込まずにポイポイと周囲にツッコミ入れるような人も居ますが。そういう人、口やかましいけど、案外良い人だったり。
漫画「銃夢」の登場人物、ノヴァ博士の「この世に正気と狂気など無い。あるのは一千の貌(かお)の狂気だけです」というセリフ。この映画に例えて云うなら、「この世に健康な人なんて居ない。居るのは一千の病人だけ」なんでしょう。病病看護ということでしょうか。上白石さんが仕事の斡旋を受けるときにも、相手が子供の電話に出ているところも印象的でした。誰もが何か問題を抱えている。松村北斗さんがパニックしている上白石さんを上手く誘導していましたが、私達だって病人なんです。「みんな病人なんだからお互い理解し合おう」と言われたって、みんな病気で弱気だからやっぱり怖い。パニックの相手を責めるつもりは無いけど、距離を置きたくなるのも仕方ない、というのが、こういう場合の私の意見です。
映画として、内容はごく普通の日常を描いているようで、「上白石さんがいつキレ出すのか」、それがハラハラドキドキでした。ああ、ここで来るのか、おいおい、プラネタリウムの途中でキレたらどうするんだ、などと心配でたまらない。ちょっとしたホラー感も感じました。それほどに上白石さんのキレ芸のキレ味が凄まじい。
最後に、これはまったくの余談ですが、私が見た2024年2月15日の10時8分。京都河原町で鑑賞していたのですが、劇中で地震が起こって停電になるまったく同じタイミングに、震度3マグニチュード3.7の地震が現実に起こりました。一瞬、映画館の演出装置なのかと思い込んだぐらい、奇跡的な同じタイミングです。これはニュースにでもして良いくらいです。でもこんな奇跡、先の災害があっただけに、起こってほしくないですね。
(追記)
時間をおいて少し考えて見たのですが、上白石さんがプラネタリウムのナレーションをしていたシーンは、松村北斗さんが職場に馴染んだ変化と同様に、PMSという症候群を抱えながらも成長した成果を現すシーンではないかと考えます。そういう症候群を抱えていることを知りながらも、会社の同僚達は上白石さんに任せてみようと見守っていたのかと。勿論、これは私個人の解釈に過ぎません。
それにしても、やっぱり上白石さんのナレーションは素晴らしかったですね。町工場のようなところで、あれほど上手にナレーションができる人はそうそう居ないでしょう。そこだけは非現実的でしたw
女性はホルモンバランスと常に闘っている
若い頃はPMSで、歳を取っても更年期でと、遅かれ早かれ、どんな女性も常に己のホルモンバランスと闘っています。この映画を通して世の中の殿方にもっともっとその事実を知ってほしいと思いました。それは、パニック障害よりもランクの低い?本当に病気なの?と周囲の理解を得にくいつらい病気です。同じ女性である私ですら、PMSってそんなに?!なんてビックリしたのですから、もちろん男性が観たらそれはきっと異次元でしょう。PMSの辛さは想像はできても、パニック障害の辛さはやはり想像できません。
思いやりとは、相手のことを慮る事です。分からない相手のことを一生懸命理解しようとする事です。本作品の中では、思いやりあふれる同僚や上司に恵まれて、病気を抱えた2人が微笑ましく支え合う姿が描かれています。とても優しい気持ちになれる温かい映画です。それと同時に、この映画に登場する会社みたいに、いろんな病気や事情を抱えた人が少しでも働きやすい社会になればいいなぁと思いました。
現実社会の世知辛さに少しお疲れ気味のあなたに、ホルモンバランスを崩してイライラしがちなあなたに是非おすすめの映画です♪
今週末映画館でゆっくりと癒されてみては?
人は痛みを知っている分、他者に優しくなれる
年末、遅ればせながら配信で鑑賞。
PMS(月経前症候群)とパニック障害に苦しむ藤沢さんと山添くんが元いた会社を辞め、逃げ込んだ先の移動式プラネタリウム制作会社には、弟を自死で亡くした社長をはじめ、2人の変調を普通に受け入れる社員たちがいる。そんな中、藤沢さんと山添くんは同じ痛みを共有し合うでもない、もちろん、恋人でもない、不思議な気持ちで繋がった同士みたいな関係をゆっくり紡いでいく。2人が交わすコミカルなやり取りに笑い、救われる人もいるだろう。
人は痛みを知っている分、他者に優しくなれる。社会の片隅で誰かと誰かが互いを探り合いながら接近し、触れ合い、そしてまた、離れていく。藤沢さんと山添くんはどうか?
この映画が描くのは、どんなに暗い夜にも必ず夜明けは訪れ、希望と勇気の第一歩を祝福してくれる、ということ。だから見終わって、心がリセットされ、とても清々しくなるのだ。
胸の中が柔らかな大切な光で少しずつ満たされていく
鑑賞前、私の頭にはどこか闘病ものというイメージがあった。それゆえ、観た後に引きずるものがあるのではと躊躇する気持ちがあったのも事実。しかし本作はそんな先入観を序盤から拭い去り、じっくりと主人公たちの日常に寄り添っていく。切々と語られる上白石の声のトーン。ふりしきる雨。どうしようもない、逃げ出したくなる会社での一幕。その雨がやんだ時、彼女はとある教育玩具を製造する小さなメーカーにいる。変わらず苦しみはやってくる。だが隣の席の同僚もまた別の理由で苦しんでいることを知る。また観客は彼らのみならず、誰もが何かしらの事情を抱えて生きていることを垣間見る。そういった部分を内に秘めているからこそ、人は誰かの苦しみを察し、さりげなく共に寄り添い合うことができるのではないか。ゆっくりと一歩ずつ。地球の自転を感じるかのように時を刻むペースが心地よく暖かい。夜が明ける。胸の中に柔らかな光が差し込んでくる一作だ。
タイトルなし
これは映画か?
本作品の8割はモノローグとダイアローグで成り立っている。前編から2/3はほぼカメラは固定で、物語に起伏がない。テーマ提起はあるがそれだけで食いつくには映像に派手さはない。むしろ地味と言って良い。ところが後半すぎたあたりから少しづつ物語が動き出す。物語が動くと言うより登場人物に血が通いだすと言った方がいいかもしれない。映像にも少しづつだが作為が感じられるようなカットが挿み込めれるようになり、地味ながらハッとする。ただそのままエンディングへとなだれ込み観客は放置されるのである。そして放置されたまましばらくしてその意味するところがジワリと湧いてくる。まるで満潮の潮の迫り方のように・・・意識して作ってあるなら凄い。
退職できる職場
原作もちゃんと読みたいなと思った。 松村さんも上白石さんも派手すぎ...
原作もちゃんと読みたいなと思った。
松村さんも上白石さんも派手すぎずリアルにいそうな感じなのがよかった。
理解してくれる会社があったり、寄り添ってくれる人がいるのが素敵。
大きな問題が起きたりする話ではない日常のストーリーだけど飽きずに楽しめた。
淡々とした雰囲気が
「夜明け前が一番暗い」【12月16日追記】日本アカデミー賞優秀賞3部門受賞・キネマ旬報ベスト・テン5部門受賞!
【12月16日レビュー追記】
タイトルは、英国の諺 “The darkest hour is just before the dawn” から。「苦しい時期というのは、それが終わる寸前が最も苦しい。それを乗り越えれば、陽はまた昇り事態は良くなる」
「ささやかな、でも確かなつながりが照らす、かけがえのない物語」「思うようにいかない毎日。それでも私たちは救いあえる」という宣伝コピー通り。観た方には伝わると思いますが、「不寛容社会の御守りのような映画」です。
最近知人から教えてもらった「アサーション(assertion)」。相手と自分を互いに尊重した上で、自己主張するコミュニケーション。この映画はとても「アサーティブ」な作品です。
朝ドラ『カムカムエヴリバディ』で夫婦役を好演した、上白石萌音さんと松村北斗さんが映画で再共演。という事前情報くらいで、今年2月の公開時に見逃していました。
原作も映画も国内外で評判が良かったこと、更に原作と映画は設定が異なると知って、その設定変更がどうしても映画館で観たい理由になりました。
今年のTAMA映画賞で最優秀3部門受賞、報知映画賞で最多6部門ノミネート。受賞を記念して11月に1週間の再上映が決まり、映画館で鑑賞できました。
藤沢さん(上白石萌音)と同僚の山添くん(松村北斗)の、「恋愛」でも「友情」でもない関係の距離感。クスッと笑ったり、涙が流れたり、暖かくなったり、「しばらく一人で怒っててもらっていいですか」は最高でした。
パニック障害について表面的な知識しか無かった私は、「行き付けのラーメン屋さんで、いつものラーメンの味がしなくて不味く感じた」という病識の表現に、ハッとさせられました。
W主演の松村北斗さんは、旧J事務所というバイアス無しで評価されるべき俳優。演技の仕事に集中できれば、菅田将暉さんや磯村勇斗さんのような俳優を目指せる可能性を感じました。
三宅唱監督は、今年の上海映画祭で「中国の映画ファンが今最も好きな日本人映画監督」特集が上映される程、中国でも人気があるという映画祭報告を読みました。
今や北米を超える映画人口の中国で、日本と同じような生きづらさを感じ、この小さな日本映画にも共感してくれる人が多いことは、うれしいニュースでした。
P.S.
栗田科学の事務所に貼られている、ポスターや2ヶ月カレンダーに気付きましたか?
ポスターには『人にやさしく、自分にもやさしく』の「アサーション」のメッセージ。カレンダーは映画公開の2月に追い付き通り過ぎて、「未来」の3月のイベント開催を伝えています。
P.S.2
2/5「第98回キネマ旬報ベスト・テン」日本映画作品賞(日本映画ベスト・テン第1位)・日本映画監督賞・主演男優賞・読者選出日本映画ベスト・テン第1位・読者選出日本映画監督賞5部門受賞
1/21「第48回日本アカデミー賞」優秀作品賞・優秀監督賞・優秀主演女優賞3部門受賞
1/17「第79回毎日映画コンクール」日本映画大賞・監督賞・TSUTAYA DISCAS映画ファン賞3冠受賞
2025/1/3「第67回ブルーリボン賞」1部門ノミネート
12/26「第37回日刊スポーツ映画大賞」ファンが選ぶ最高作品賞・ファンが選ぶ最高演技賞2冠受賞
12/19「第79回毎日映画コンクール」最多7賞ノミネート
12/1「第46回ヨコハマ映画祭」作品賞受賞・2024年日本映画ベストテン1位
11/12「第49回報知映画賞」最多6部門ノミネート
2024/10/3「第16回TAMA映画賞」最優秀作品賞・最優秀主演女優賞・最優秀新進男優賞3部門受賞
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今年は邦画の当たり年で豊作だった、という声をよく聞きます。
初日に鑑賞して、映画館でリピートした作品が何作もありました。
私の2024年ベスト3候補は、この映画です。
今まで映画.comはほぼ見る専門でしたが、★★★★★の作品には評価とレビューの投稿を最近始めました。
他の方のレビューを読むと自分の語彙力と文才の無さで、好きな映画ほど言葉が見つからなくなります。
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2024年11月1日映画館/11月30日映画祭
+11月27日配信で鑑賞
11月1日★★★★★評価
12月2日レビュー投稿
12月16日レビュー追記
2025年2月5日レビューP.S.映画賞追記
勉強になりました
今回この作品を小説を読んでから映画を観ました。
私自身、パニック障害ともPMS (月経前症候群)とも
無縁で詳しく症状を知ったのはこの作品と出会ってからでした。
それぞれが悩みを抱えて、
悩んでいる人が同じ会社や電車の中など
意外と身近にいるのではないかと
考えさせられるような内容でした。
もしかしたら今までの生活の中で出会っているかもしれないしこれからも出会うかもしれないと思うと
知ることができて勉強になりました。
パニック障害は男女年齢問わず誰にでもなり得ることだろうし、PMSも症状に個人差はあってもきっとたくさんの女性が抱えている悩みなんだろうと思うと考え深いものでした。
どちらも人に話して理解してもらうまでに
少し難しいことだと思うともっと話しやすくなるような環境になれば良いのになと思います。
そしてこういった作品がもっと世に出れば、
理解してくれる人もそして新しいことを知ることのきっかけにもなると思いました。
こんな素敵な作品に出会えて良かったです。
いい会社だなぁ
最も印象に残ったことは、光石さんの会社のことです。こんな組織をわたしも作りたかったです。誰にでも寛容な組織、みんなで助け合う組織、今の時代難しいのかもしれません。わたしは完成させられませんでした。
多分、わたしはこの監督と合わないんだと思います。前作もそうでした。説明くさいというか、よくわからんのですが、面白くないです。長いし。
こうした障害がある方々、わたしの身近にもたくさんいました。苦しいのは本人です。
大好きな作品に「ぐるりのこと。」があります。あの作品は、精神的な障害がある方を本当にリアルに描いてました。でもでも、随所でクスッと笑えました。今作も、もう少しそうした要素があったらと思いました。
上白石さんは良い女優だと思いますが、個人的には妹さんの方が上手いと思います。
あったけえ会社
普段は穏やかだが、月に一度PMS(月経前症候群)によりイライラがひどい藤沢さん。転職し、同僚がとても理解ある栗田科学で働く。そこに転職してきた無気力な山添君に、強く怒ってしまう。しかし彼はパニック障害だった。
PMSはなんとなく分かるけど、パニック障害は有名人がなったのを聞くだけで、実際は知りませんでした。二人とも、土日休むときつくなるというのも意外、確かに休みに会社へ来ていた。山添君は、ラーメン食べてて発症し電車に乗れなくなってしまうが、自宅にいるときだけ自分らしく全く普通。人それぞれ症状は違うだろうけど、山添君が会社でも普通にふるまえるようになっていくのが良かった。藤沢さんも、前向きになっていくし。栗田科学が、二人に対する理解がなんともあったかくて、スゴイ会社です。栗田社長や山添君の元上司も、自死家族会の会員で二人の良き理解者であったのも良いです。
静かな日常の中で感じること
途方もなく優しい映画
何故か序盤からずっと泣きそうになっていた。PMSがテーマになってる映画って初めて見たかも。
私自身も藤沢さんほどではないが生理前後の感情の起伏が大きくなることはあったため、気持ちはよく理解できた。
松村北斗くんも役柄とすごく合っていた。徐々に生き生きしていって魅力が増していって。
脇を固める役者さんたちも素晴らしかった。
自分の弱さも他人の弱さも認めよう、と言う話なのかな、と。
劇的に変わることはないけど、夜明け前の空と同じで少しずつ明るくなっていくから。
押し付けがましい希望の話は好きじゃない。
でも絶望ばかりしていても仕方ない。
少しだけ、前を向く。そんな気持ちに自然とさせてくれた。
こんな映画が日本にある、それこそが大きな希望。
やさしい映画
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