夜明けのすべてのレビュー・感想・評価
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支え合って生きることの美しさ
例えば、ふつうの健常な人でも、日によって気分の浮き沈みは必ずあるもの。
その浮き沈みの振幅が異常に大きく、それ故。日常生活に支障を来す場合には、疾患として投薬などの治療をしなければならないので、その前提として、具体的な診断名(病名)をつけて診断をしなければならないと聞いたことがあります。
病気を持っている人や、いわゆる障害を抱えているという人たちを、決して特別視する(ましてや差別視などする)理由は何もないことも、また当然かとも思います。
それにつけても、病気をお持ちの方(と言ってしまって良いのか、もっと別の言い方で、少しだけ他の人と比べて個性が目立つとでも言うべきなのか)に対しての「周囲の受け止め」の大切さ、そういう周囲の受け止めの美しさに、改めて気づかさせてもらえた一本になりました。
本作は。
その点でも、十分に佳作としての評価に値する一本と思います。
評論子は。
時々メンタルの制御がきかなくなる人々、疾患は人それぞれ。 処方薬を...
時々メンタルの制御がきかなくなる人々、疾患は人それぞれ。
処方薬を服用しないと生活がおぼつかないとか、かつて心当たりがある、身につまされるお話でした。
教科書的には、傾聴 受容 共感 とか、焦らずじっくり付き合う、いうところですね。
物語の中の演者さん、知ってか知らずか、疾患患者さんとの接し方が、丁寧にできているように見えました。
こちら、いち鑑賞者にすぎませんが、この映画を見させていただいて、
心が軽くなる、荒れたものが解けてゆく感覚を抱きました。
心が軽くなった後、題目の夜明けってなんだ? と気になりだした頃、
ラストのプラネタリウムのお話が。
純朴にあこがれを抱いて聞けました。
丁寧に描かれた、すてきなお話でした。
栗田工業が潰れませんように、ずっと存続してくれますように
上白石萌音と松村北斗の自然なところが良い。
特に、大企業(多分)勤務から町工場勤務になって腐っていた山添くん=松村北斗が少しづつ変化を見せていくところが嫌味なく自然で良かった
ふたりの掛け合いが結構笑える
山添くんはかなりユーモアのセンスがあるヒトだと思う
ふたりとも自分を悲劇の主人公にしないところが好感が持てる
淡々と自分たちができる対策を出し合い協力し、困った症状に向き合う
「言いたいこと言って、PMSのせいにすれば良いからいいじゃん」とか冗談交じりに言っていたりする
世の中には「自分は〇〇なので配慮してほしい」と職場で協力を求める、それは当然だがすぎて振り回す人がいる。
配慮は当然だが度を越した我慢を周囲が強いられることがある
いくら病気でも、藤沢さんのような暴言吐かれたら私なら傷つく
こちらのメンタルがオカシクなりそうなことがある
それでも当人には感謝も謝罪もない。職場的に「配慮」は当然なので。
藤沢さんも山添くんも、そうなりたくなくて職場で自分たちの「病気」を黙っているのだろうと思った。
藤沢さんがPMSで荒れまくった後に職場の皆さんにお菓子を配って謝って回り、周囲もはいはい、とお菓子を当たり前のように受け取って終わり。月に一度の荒ぶる神への儀式のよう。彼女は「自分は〇〇なので周囲に迷惑をかけて当然」のようにはしないのだ。
周囲が配慮するのは当然だが、病気を抱えた当人が周囲に気遣いすることがあっても良いと思う。
お互い様とはそういうことではないか。
みんな問題を抱えて生きている。
悩みのない人はいないのだ。
栗田社長、山添くんの元上司、多分外国人と結婚していたシングルマザーの久保田磨希と、周囲の人達も公言しないが生きていくうえでの問題を抱えている。それ故に他人への思いやりがある人達なのだろう。重荷にならないようにそっと二人を支えてくれる良い人たちだ。
久保田磨希さんの息子を含む中学生の放送部のドキュメンタリーのシーンがちょっと多すぎる気がする。
プラネタリウムでの解説に、社長の弟が遺したものが云々が少々過剰気味だったかも。
ふたりが恋愛関係にならず、ずっと良い友達、同志、親友なのがとても良い。
藤沢さんは転職先で周囲とうまく折り合いがつけられますように
栗田社長の優しさと器の大きさが心に染みた。
さりげなく相手の重荷にならないように気遣いしてくれ、従業員の皆さんも、それに応えて真面目に一生懸命働いているという、しんどいところを持つ人達には理想的な職場。
栗田工業が潰れませんように、ずっと存続してくれますようにと祈ってしまった。
藤沢さんが思い出せなかった「おじいちゃんたちが宇宙に行く映画」は、
「スペース・カウボーイ」では?
啓発映画かも
出てくる人が全員優しい稀有な作品です。
またPMSやパニック障害についての啓発映画でもあります。
パニック障害に関しては有名人などの告白もあり、比較的よく知られてはいますが、実際自分の周りにそういうつらい思いをしている人がどれくらいいるでしょう。PMSに関しては、昔なら「ヒステリー」で片付けられてたかもしれませんが、生理のある女性なら大なり小なりこういう症状があって当然のようで、この映画のヒロインはとても極端なのかもしれませんが。それこそ人格が変わるくらいの変貌ぶりでした。
原作とはちょっと違う職場のようですが、子どもたちに科学を楽しんでもらうキット制作販売会社というのがとても良かったです。また、光石研演じる社長を始め社員のみんなが心の問題を抱える主人公二人にとても優しいのが良かったです。もっとも社長が、一緒に仕事を頑張ってきた弟が自死を選んだことが原因で、社長自らが大切な人を自死で失った人達が集まるサークルで長年の活動をしていることも、心の病に関してとても理解されていたようです。
松村北斗演じるパニック障害を持つ男の子の前の会社の上司役である渋川清彦も、こんなに優しい彼はなかなか珍しいです。「ゴールデンスランバー」でのトラック運転手以来かな?(笑)
で、正直言うと一番ショックだったのは5年間で母親があんなふうになってしまったこと・・・
何が彼女を襲ったのか?
優しくなりたい
受け止めれる人になりたい。
ストレスが蔓延してる昨今で擦り潰されていく人達。様々な理由から"普通"が出来なくなる。
生き辛いのだと思われる。
彼の台詞が印象的だった。
「自分の体はどうにもならないけれど、あなたの体の事はどうにか出来るような気がする」
ほんの少しの思いやり。
その人の全てを背負う事は出来なくても、近くで見守る事は出来る。
人と人との関わり合い方の定義みたいだ。
ずっと同じな訳はない。急激な変化はなくとも、ゆっくりゆっくり変わっていける。
自分の手が伸ばせる範囲が穏やかになっていくのであれば、それを平和と呼ぶ日も来るかもしれない。
愛を説くこともなく、代償を求められるわけでもない。ほんの少しだけ、寄り添ってあげるだけでいい。それが増えていけばいい。
抗えない人は一定数いる。
向き合うにあたり何も背負わなくていい。
ただ、ほんの少し歩み寄る。それだけでいい。
そんな事を、気づかせてくれた作品。
本作が優れている点は、好意は描くけども恋愛を描かない点だと思われる。
処方箋が恋愛に由来される事はないのだ。
それにより人物を特定する事なく、広い範囲に発信できる。誰にでも出来る事なんだと教えてくれる。
抑揚のない退屈なドラマ
各々精神疾患(PMS(月経前症候群)・パニック障害)を抱えて、人付き合いが下手でぎこちない日々を送る会社の同僚の二人、上白石萌音扮する藤沢さんと松村北斗扮する山添くんを主役に据え、その窮屈でもどかしい互いの日常を粛々と追った作品です。
カメラは彼らに同情的でもなく、フィックスの長回しを多用し、寄せアップも殆どなく、ゆったりとした緩いテンポで淡々と、まるでドキュメンタリーのように映していきます。しかし彼らが抱える、病気による苦悩や悲哀は描かれないので、鋭く問題提起するわけでもなく、終始メリハリのない滔々とした映像が延々と続きます。ラブロマンスはなく、謎解きミステリー要素もなく、サスペンス性もありません。つまり起承転結のない2時間のドラマが本作といえます。
それでも前半は、藤沢さん視点で映されていきます。そこでは山添くんも藤沢視点で胡散臭い客体の一つとして描かれますが、中盤藤沢さんが山添くんの整髪をする長回しカットから山添視点にカメラが移り、藤沢さんも面倒くさい人として映されつつも、暖かく見つめられていることが感じられます。
そして徐々に二人の視点が重なり合っていきますが、決して恋愛関係には至らない淡泊な関係のままエンディングを迎えます。
斯様に抑揚のない退屈なドラマで、その上、登場人物が悉く善人ばかりなので、事件もなくハラハラドキドキすることもなく、ただただ安心して観ていられたに過ぎないのですが、不思議に飽きることなく観賞できたのは、リアルな生活感を実演した役者たちの演技力によるのでしょう。
ただ、つい近所でもありそうな、あまりにも身近な話であり、夢やロマンといった快感は得られず映画的なスケール感は全くありません。巷間、非常に高評価なのが、率直に言って私にはよく理解できません。
一服の清涼感は得られた気はしますが、非日常空間である映画館で観客に披露する作品とは言い難いと思います。
映像作品としては悪くはありませんが、BSでのドキュメンタリー風ドラマが向いているのではないかと思ったしだいです。
温かい世界観
原作者である瀬尾まいこさん特有のあの温かな世界観がそのまま映像化されていて本当に嬉しかった。
瀬尾まいこさんの作品に触れると陽だまりの中にいるかのような気持ちになり読み終わると心にじんわりと温かなものが残る。映画では陽の光をとても繊細に映していて、作品を読んだときのようなぽかぽかした気持ちをそのまま視覚化してくれたかのような新鮮な気持ちになった。
原作とは随分と話の展開が異なっていたけれど、この物語の芯となる部分はぶれずにちゃんと伝わったし映像だからこそ感動できる素敵な演出も沢山あってよかった
自分の気づかないところでみんないろんなものを抱え込んで生きていると思うし自分自身もまた、他人には言えずに抱えているものは確かにある。
自分で自分を助けられなくても、自分が助けられる人たちは周りにいるはずだ。
この作品の温かさをちゃんと心に温存して今日から自分が生きる世界に持っていきたい。
ADHDとPSMを持つ私より。
あの世界は理想郷だけど、この映画と出会えたことは理想郷への入り口だった気がする
生きづらさを描く作品が増えてきて、天邪鬼もあり観るのを先送り。
その人の苦しみに共感でも、受け入れるでもなく「寄り添う」。静かに、誠実に、温かく物語が描かれているからこそ、胸の奥にストンと登場人物の言葉が落ちてくる。
PMSしんどいよ、どうしても強く当たってしまう。
ADHDしんどいよ、どうしても集中できない。
強く当たってはいけないことを覚えておけない。
今にも崩れそうななかで、どうにか踏ん張ってる。
そんな私に、そんな誰かに、この映画自体が寄り添ってくれる。本当にありがとう。周りが敵に見えても、きっとこの映画だけは味方でいてくれる。
太陽と星と差し入れ
上白石萌音さんを初めて見たのは、映画「舞妓はレディ」でした。その頃から演技も歌もダンスも上手だった。今回のこの映画でさらに素敵に深く大人になったなあと思いました。
ストーリーとしては恋愛系にならなかったことが良かったし現実的だったし、主役の二人だけでなく登場人物のそれぞれが痛みや悲しみを抱えていることにとても共感できた。
上白石萌音さん演じる藤沢さんのような、自分自身お菓子が大好きで差し入れもマメで上手な人は凄いなあと尊敬します。方向音痴でも空を見上げて、昼間は太陽の位置で、夜は星を見て自分がいる場所、向かう場所がわかる・・・はずなのにできない自分に少しがっかりします。
日常を重視した新たなリアリズム
こんな映画を私は待っていた。
先日、職場の同僚(群発頭痛持ち)からこの作品を勧められ、私(腸過敏性症候群持ち)は久しぶりに映画館へ出かけてこれを観た。鑑賞後、とても心地良い感動を得ることができた。さらに、いろんなことを考えるきっかけにもなった。その同僚に感謝したい。
私はこの映画を観ている途中から《小津安二郎》《定点観測》そして《ネオ・レアリズモ》というキーワードが頭の中に次々と浮かんできた。
まず、三宅監督と撮影の月永氏による《やや低めで近めの画角》と《ごく自然な感じの構図》のカメラワークに注目した。その技法は、観る者がまるで登場人物とその場に一緒にいるかのような感覚にさせてくれて、人の心の機微を映し出すためにとても効果的だった。さらに、16mmフィルムによって温かみのある映像に仕上げたこともその効果をより一層高めた。小津安二郎に勝るとも劣らない絶妙なカメラワークであると思うのは、私だけだろうか。
また、栗田科学という会社を一つの定点にして、登場人物たちの交流が《定点観測》によって柔らかな雰囲気の中で見事に描かれていた。その描き方は、NHK 『ドキュメント72時間』を彷彿させる。特別な人々ではなく、ごく普通の市井の人々の心の中にこそ、それぞれの様々な人生の物語があるということに改めて気付かせてくれた。
さらにこの物語は、市井の人々の日常で始まり、劇的な展開もなく、モンタージュ技法等を用いた過激な演出もないまま、日常で終わる。そのような穏やかなストーリーにも関わらず、観終えると思わず涙が出る。私は、ネオ・レアリズモの代表作であるヴィットリオ・デ・シーカ監督『自転車泥棒』を思い出した。市井の人々の日常を重視した新たなリアリズム“Neo-Daily Realism”をこの作品によって三宅監督は生み出したのではないだろうか。藤沢さんが山添くんに譲った白い自転車を思い浮かべながら、この作品は新しい映画の夜明けだと私は確信した。
鑑賞後に同映画のパンフレットを購入した。そのインタビュー記事の中で、私が強く共感した次の言葉を引用したい。
「大げさなことじゃなくても日常にも素晴らしい瞬間がある」(三宅監督)
「外に出た時、見える風景がすべて、自分にとって出会えてよかったと思う風景に変わっていく」(松村北斗)
とても充実した内容のパンフなので、是非購入をお勧めしたい。
最後に、藤沢さんが山添くんの髪を切るシーンなど、絶妙な距離感でさりげなく助け合っていくという、難易度の高い役柄を見事に演じた上白石萌音と松村北斗の演技力に心から拍手を送りたい。
私にとっては大切になった時間
誰もが同じ気持ちになる、そんな映画ではないように思えて。
逆にこの映画でしか受け取れない独自性は、その芯に確固たるものとしてある。
そんな印象を受けました。
淡々とした生活の中でも、それぞれに生きづらさを感じる所はきっとあるけれど、
それを他人と共有する場合もそうではない場合も、何か生きづらさを感じていることを
分かってもらえたら嬉しい。
社会の一員として存在するからには、さすがに個人的な事情や感情ばかりを
表に出すことはもちろんできないのだけれど、
それでもお互いに補い合うことが出来る。
理想論かもしれないけれど、それでもそういう世界が、存在していたなら。
物としての豊かさよりも、心の豊かさや人との繋がりを改めて温かく感じることが出来た
素敵な映画でした。
暗くなるテーマなのに全く暗くない
でも松村北斗がプラネタリウムに元上司を誘う場面の顔、あれどういう顔なの。
悔しいのか悲しいのか、嬉しいのか全くわからなかった。なんで泣いてるの?とか言われてね。むかついてるのかと感じたよ上司が。
そこだけ理解できなかったな。
まあ悲しい顔だったのかな、、。
松村の再就職先を嘘で繋いでたけど、そんなの用意できるわけねーのに口先だけで言っていたわけだしね。
全般的にかなり面白かったし、物語全般で選択のミスをしている藤沢が最後の最後もミスしたっぽいのが皮肉くさい。
私なら藤沢の転職を確実に止める失敗しか見えないから。でも個人の選択としてはこれでいいのだろう。
優しい映画
監督の人を見る目の優しさが映画全編に流れてる。ただ私は、世の中ここまで人に優しい人間ばかりではないと、少しおとぎ話的に観ていたのでリアリティはそれほど感じなかった。
自分は汚れてしまった人間なんだなぁ、と。
純粋な人たちが観る為のいい映画だと思った。
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