劇場公開日 2024年2月9日

「それでも夜明けはやってくる」夜明けのすべて サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5それでも夜明けはやってくる

2024年2月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

難しい

幸せ

大好きな映画「ケイコ 目を澄ませて」の三宅唱監督の最新作。またもやあんな優しい映画が見れるだなんて。予告の段階で期待値爆上がりです。主演の上白石萌音は、映画出演が実に4年以上ぶり。久々にスクリーンでお目にかかりました。松村北斗は言わずもがな。今や日本映画を牽引する、実力派俳優となりました。

作風的にそれほどヒットするような映画では無いように思いましたが、初日動員はまさかの2位。公開3日目の本日も60%以上の動員でした。やっぱり、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を岸井ゆきのが手にした効果が大きかったのでしょうか。感想としては、良くも悪くも三宅監督らしい作品であるということ。期待していた通りのものが見れたという点に置いては満足度が高いですが、色々と気になる点があるのも事実。よくよく考えると...とどうしてもなってしまいます。

あの作品は耳の聞こえないボクサーを主人公にしているため、〈静〉の描写がすごく美しく感じたけど、この作品ではどうももどかしい。正直、パニック障害やPMSについてあまり理解出来なかった気がしました。タケシ映画のような、言葉数の少ない作品は個人的にかなり好みで、本作もかなり愛おしくはあったんですが、テーマとしてはそれが仇になっているかなと。恐らく、監督がこの映画で目指したところは理解されにくい病気を少しでも多くの人に知ってもらいたい、ではなく、この映画が彼らにとっての居場所となってもらいたい、では無いかなと思いました。

現実はそう甘くないだろうけど、この映画の中ではホッと安心して息がつける。きっと誰かの拠り所になるんじゃないかな。自分の考えが正しければ、満点の映画に仕上がったと思います。周りが優しすぎるところに違和感はあるけど、居心地はものすごく良かった。16mmフィルムとオレンジがかった映像の言葉では表せない魅力。それでいて、上白石萌音と松村北斗の最高の雰囲気。光石研や渋川清彦のような現実にいて欲しい上司、そばにいる人間の在り方が示されているような人物。こんな世界を見て、心から救われた人は多くいるはずです。

点数低めにしたけど、映像作品としては4.5。気になるところはあれど、いい作品であることには違いないです。夜についてのメモ。社長の弟さんの話がとても胸に刺さりました。ドラマで見たかったなぁ。

サプライズ