aftersun アフターサンのレビュー・感想・評価
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カットバックで時空を行き来する
とても悲しいと思うし、
愛にあふれた温もりも感じる。
誰かにおすすめしたい訳でもないけど、
映画として視覚的にも脚本としても
残る作品。
いつだったか
短編でオスカーを受賞したCURFEWが大好きで、
ちょっとシンクロするところがあるように感じた。
大人のソフィが思い出す記憶は鮮明で、
実際に残っている映像はザラザラで粗い。
この2つと、現在のソフィ、現在に存在する父の跡形を
カットバックをはさみながら重ねていく
父と娘の数日間。
家族を思うとき、
色々あったはずなのに、
思い出すのはいつも同じことだったりする。
何の遮りもなく互いだけに向き合った瞬間があれば
過去や未来のあれこれも全部包みこむ
引力となって、
ずっとつながっていけるのかもしれないと
2回鑑賞した後にはそんな希望が生まれていた。
記録と記憶と想像が織り込まれている、と理解して観るべし
娘が想像する父親の葛藤と、娘自身の葛藤
娘11歳と父31歳という年齢設定が、この映画の醸し出す不安定さを方向づけているような気がした。
娘のソフィは、聡明でビリヤードも上手いが、歌は上手くなく、水にも潜れない。年下とは交じろうとはせず、誘われた年上たちのグループの中では疎外感を覚える。そんなあやふやな思春期の入り口の年代として、11歳というのはピッタリくる。
対する父親のカラムは、ビリヤードで出会った若者にソフィの兄に見られる程若いが、自分が父親であることをソフィにも自分自身にも言い聞かせているかのように振る舞うあたり、若くして父になった寄るべなさが漂って、31歳というのが自然に収まる。
描き出される映像は明るく、美しい。また、バカンス期間でもあるので、出来事は日常を離れた優雅な特別感でいっぱいだ。それなのに、全編ずっとずっと不穏な空気に満ちている。
別れた妻との電話で「監視」などという言葉が出てくるわ、そもそも始めからギブスしてるわ、ベランダの柵の上に立つわ、一人で高い所へ行ってしまうわ、娘を置いて入水しようとするわ…等々、気持ちの不安定さを必死に隠そうとして、隠しきれていないカラムが、観客を落ち着かなくさせる。
でもこれは、あくまでも、20年の時が経ち、31歳になったソフィが、残されたビデオテープから想像するカラムなので、実際はどうだったのか本当の所はわからない。そもそも、20年経って、やっと当時のビデオテープを見られるようになったということかもしれない。はっきり描かれてはいないが、カラムはこの後すぐに亡くなったのだろう。娘との旅行の間は踏み止まれたことが、1人になった途端に…、そんな気持ちにさせられてしまうラストだった。
それに対して、ソフィは、カラムとの抱擁の後、彼をつき飛ばす(ように自分には見えたが…)ラスト前のダンスシーンの表現から観て、自分は生きるという決意をしたのではないかと想像する。
そう考えれば、希望が残る終わり方と言えないこともないが、自分にとっては、割り切れない思いが残った。(全然タイプは違うが、夜明けのすべてを観たばかりだからかもしれない)
すごい余韻
離れて暮らす父と娘。娘が11歳の時の最後の旅行。思春期を迎える娘、反抗期もあり、コレが最後の旅行だったのかな?と思っていたら、、、なんか違うぞ?
いくら宿泊先のホテルとはいえ、夜、娘を残して1人で部屋に戻ったらいけないよねパパ。でも、きっとパパはその時はもういっぱいいっぱいだったんだろう。1人で海に行き、肩に怪我をして、戻って、裸で寝てしまったんだろうね。
観終えた後で、パパの後ろ姿や影だったり、反射だったりの場面が多かった理由が、納得。はっきり言葉にも映像にもしないで、あの表現の仕方、すごい。すっごい余韻、いつまでも悲しさが残る映画。
もう一度観たら、もっと良さがわかるだろうな。必ずいつか観よう。
レビュー見てやっと分かる真意。
離婚して、母親と暮らす娘ソフィが父親とトルコにバカンスに思い出旅行をする。
その旅行をビデオに撮りながら楽しく過ごす・・・というもの。
単なる父娘のホームドラマだと思っていたら、父親は鬱系で不安定。
バルコニーに立っていたり、腕?を負傷したけど記憶が曖昧、最初からの腕のギブスも訳ありぽい。
そのことに当時の娘は気がついていただろうか。
ソフィが父親と同じ年齢になってビデオを見返しながら父親を回顧する。
ソフィも自分のジェンダーについて悩んだり、思うことがあるのかもしれない。
こんなに想像と考察が難しいのは久しぶり。
結論としては、あまりハマらなかった。
噂に違わぬ名作でした。
父親と娘のラストサマーバケーションをホームカメラアングルを多用して淡々と進んでいく。ある意味で本当に父と娘のラストバケーション。自分も重度の鬱経験者であり、同じ年頃になる娘を持つ身としてはエンディングのダンスシーンと最後の見事なカメラパンからの混沌のクラブへと吸い込まれて行く父親のラストシーンでは涙腺が崩壊しました。今の愛おしさを噛み締めて出来る限り大事にしようと考えさせられました。しかしA24の作品は独特だなぁ。大好きだけども。
大切な思い出
何故好きだよと
パパ、いつまでもいつまでも大好きだよ
31歳の若い父親と11歳の大人びた娘。
ひと夏をトルコのリゾートで過ごす。
それをあの時の父と同じ31歳になった娘が思い出す…。
それだけだったらとってもノスタルジー掻き立てられる。
が、製作はA24。なかなかにストレートではない。
まず、良かった点。
本作でアカデミー主演男優賞にサプライズノミネートされたポール・メスカル。
父カラム。娘とは友達のような優しい父親である一方、夜娘が寝て一人になると…。複雑な心情や役所を繊細に。『トップガン マーヴェリック』のトム・クルーズを押し退けてノミネートされたのも納得。
圧巻だったのは娘ソフィ役のフランキー・コリオ。
オーディションで選ばれ本作でデビュー。それもさることながら、本作はなかなかに難解。しかしそれを充分理解したように役になりきっている。ナチュラルな演技は言うまでもなく、末恐ろしい…。
本作で長編デビューのシャーロット・ウェルズ。詩的で叙情的な演出や映像の美しさは忘れ難い。
本当に本作は若い才能が集結した珠玉の秀作と言えよう。
作品のクオリティーには異論ナシ。
が、作品の中身自体については…。
先ほどもちらっと述べたが、本作、なかなか難解なのである。
ストーリーはあるが、あってないと言うか、感情移入や引き込まれるような万人受けするような話でも作風でもない。
断片的な描写、説明も皆無で描かれる。
まあ本作自体、大人になった娘が記憶を頼りに“あの時”思い出すという構成。
だから作りは作品を的確に表しているのかもしれないが、ストレートな話や感動を見たかった人には期待外れかも…。
なので、作品のほとんどを推測や憶測しなければならない。
まず考えられるのは…
何らかの理由でカラムは奥さんとすでに別れているであろう。
若くして父親となり、苦労も多いのであろう。
娘とはなかなか会えない。久し振りの父娘水入らず。
娘を喜ばそうとするが、失敗続く。それに対し、自責。
一人でいる時に見せる苦悩の姿。
おそらくソフィは、当時は分からなかったのだろう。パパ、何を悩んでいるの…?
父と同じ歳になって、少しは気付いたような気がする。
私はパパの父親としての顔は知ってるが、一人の人間としての内面は何も知らなかった。
自分はいい父親だったか…? いや、ダメな父親だった。娘に何もしてやれない。自分を責めるならまだしも、時々娘にも当たってしまう。本当にダメな父親だ…。
今なら、そんな事ないよ、と声を掛けてやりたいが…。
これも推測だが、おそらくカラムはすでに故人。
この旅行が父と会った最期だったのではなかろうか…?
あの時の父と同じ年齢になり、何かの拍子に父と最後に過ごしたあの旅行を思い出し、ビデオカメラを回す。
そこに映し出されていたのは…
楽しかった旅行の思い出。
無邪気な自分と優しいパパ。
時折時折、父親が見せる苦悩。
そして忘れはしない父親への愛。
パパ、いつまでもいつまでも大好きだよ、と。
家族のビデオ
納得して良作と唸らねばか。
貴方の気持ちに気づいたときには、貴方はもういない。
『aftersun/アフターサン』を劇場で3回鑑賞した。
本作が長編デビューの監督・脚本:シャーロット・ウェルズが
巧みすぎる紡ぎ上げ方をしている映画だと思う。
父と娘の最後の夏休み&トルコのリゾート旅行を
Panasonicのビデオカメラで撮影した映像と、
父(ポール・メスカル)視点と娘(フランキー・コリオ)視点に加え、
客観的視点で描かれていて、父親が自死に至る布石が多々見受けられる。
やっぱり強烈にグサっときたのは、
「ソフィへ 愛しているよ 忘れないで」のポストカードのメッセージ。
時制的には旅行中に書いたものだと思うのだけれど、
もう完全に死を意識していたに違いなく、確定要素のように見えた。
旅行中、ふたりがハッピーな雰囲気に見えても
音楽が不穏だし、徐々に父の不安定さが露呈されていくところが
なんともせつない。
実は冒頭からその示唆出しはされていて、
娘ソフィのビデオインタビューでの「変な動き」との発言に被せて
きつめに「変じゃない」と言うあたり、もうおかしな反応だったりする。
父の様子が変なのは、別れた元妻もわかっていて、
娘ソフィにある種、監視役を任せているわけだけど、
11歳のソフィは大人へ憧れる多感な少女なので、
父の様子の不穏さには当時気づかず、父と同じ年齢になった今、
ビデオを見ながら、
ようやく父の気持ちというか思いに気づいたのだと思う。
主演の父役、ポール・メスカルは背中で語る俳優だなと思う。
本作ではポール・メスカル演じる父の背中が雄弁だ。
この映画を観ると、身近にいる人を大切にしなきゃと思う。
失ってからだと遅く、後悔しか残らないよ・・・ということを
教えてくれている映画でもあると思った。
新年1本目に選んでみた。画、音がとにかく綺麗。解釈を鑑賞者に任せて...
今まで観た中で一番難解な映画です
そもそも映画を観る際に事前情報を全く入れない質ですので、本作品のように過去と今がフラッシュバックするような複雑な映画は難解でした。海外映画の良いところは、舞台が異郷(今回はトルコ)というだけで、新しい情報がスクリーンに溢れ、長い映画でも退屈することなく観れるところと思います。父娘のバカンスが少し昔風の映像っぽく流れます。父親が30歳、娘が11歳。パパは娘を楽しませようと少し空回り、娘は少しパパと距離を保ちつつ無理しても楽しもうと小さな気遣い。父娘ものなら定番の「ペーパームーン」バカンス映画で個人的に好きなのはジェニファー・グレイとパトリック・スウェイジの「ダーティーダンシング」ですが、両映画のようなドラマチックなエピソードはあまり無く、淡々と物語は進みます。終盤でのダンスシーンは1984年の「テスタメント」の同じく家族でのダンスシーンを思い出してしまいました。
ラスト近く、娘のひょこひょこバイバイ?は同じ娘を持つ身としては落涙ものです。ラストシーン、突然キューブリック映画を彷彿させる演出で、更に脳内で「???」が駆け巡りました。(その後、本作の背景を調べて再度落涙)
ただただリゾート地での懐かしくも美しい風景と父娘の楽しくも微妙な関係を楽しむだけでも価値ある映画ですし、父親役のポールメスカルは若くして貫禄の演技ですし、ソフィー役のフランキー・コリオもおとなになる前の儚い時期をすごく魅力的に演じていて将来が楽しみです。
事前情報無く観ても良い映画ですが、映画の背景を知って、「そうだったの!」と気付きがありもう一度観たくなる魅力があります。
何れにせよ私自身数多の映画を観てきましたが、また一つ宝物が増えたと満足できる作品でした。
良かったです。
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