「道徳心の欠片もない金持ちたちの道楽」インフィニティ・プール ひでちゃぴんさんの映画レビュー(感想・評価)
道徳心の欠片もない金持ちたちの道楽
ブランドン・クローネンバーグ監督の作品は初挑戦です。
今作は、アレクサンダー・スカルスガルド(ジェームズ)とミア・ゴス(ガビ)の出演が
鑑賞したいと思ったきっかけです。
リゾートエリアから主人公ジェームズが出てしまったことから、
彼の転落が加速していく話なのですが、
インパクトがあったのは最初のクローンがつくられるエピソードですね。
クローンを死刑の身代わりになってもらうことを目的にクローンをつくるわけですが、
この国ではどうもそれが当たり前になっていて、警察?の収入源にもなっているという
なんかとんでもない話です。
そして処刑シーンは緊迫感があって見応えあり、非常に痛々しい表現で
クローンの切なさをも感じてしまいました。
その後、ジェームズのクローンを勝手につくって、ジェームズのクローンで遊ぶ鼻持ちならない金持ちたち。
他人の家に押し入りそこの主人に頭から袋をかぶせ、文字通り袋叩きにしたはいいが、実はジェームズのクローンだったり、
ジェームズのクローンを犬に見立てて、ジェームズを襲わせたりと、まあ、とんでもない奴らなわけです。
その中でもミア・ゴスの演技の狂いっぷりは凄まじく、さすがホラー女王とも言える吹っ切れ方の演技でした。
もう圧巻でしたね。ミア・ゴスが一番恐ろしかったです(笑)
これだけでも見応えがある作品ですね。
それからラストのジェームズ。金持ちたちは自分の国に帰国するわけですが、
ジェームズだけは残って、プールサイドで雨に打たれるシーンで映画は終了です。
結局、彼は小説も書けないし(才能がないというのは本人も言っていて、おそらく他人にも言われて初めて自覚したのでしょう)
何も残っておらず、お金持ちの彼女エム(クレオパトラ・コールマン)のすねをかじり倒して生活していたわけですから
エムにも頼らずに生きていこう的な境地の終わり方なのかな?と何となく前向きに捉えました。
あとはやっぱりビジュアルのエッジが効いていて、圧倒されましたね。
気持ち悪い仮面とか、ドラッグ後のエロ・グロ表現とか、クローネンバーグ監督ならではなのでしょう。
これは好き嫌いがはっきりするところだと思います。
映画的深みは感じられませんでしたが、娯楽映画としてはなかなか楽しめる作品でした。
※クローンネタはもっと国家の陰謀とかに繋げられると思うのですが、まあ、そういう監督じゃないんでしょうね(笑)