War Bride 91歳の戦争花嫁のレビュー・感想・評価
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テレビ局の取材力の高さを再認識
終戦後にアメリカ軍人と結婚した女性たちは「戦争花嫁」と呼ばれた。なぜ彼女たちは「敵国」の軍人と結婚する決断をしたのか、この作品は存命の戦争花嫁を叔母に持つTBSジャーナリストが監督となって、その半生に迫る作品だ。
英語ができたので戦後に基地関係の仕事をしたら、日本では娼婦と呼ばれ差別され、アメリカに渡っても差別があったという。
この方の父上は非常に進歩的な考えの持ち主で、ご本人も探求心の旺盛な人だったようだ。結婚の背景には、軍人とか日本人とかアメリカ人とかではなくて、一人の人として誰かを愛する気持ちしかなかったのだと、この作品は語っている。それはごく当たり前のことかもしれないが、その当たり前が簡単には成立しない時代でもあっただろう。
身内が監督をしているということもあってか、カメラがよそよそしくない。親密な映像が撮れているのがいい。主人公の圭子さんと妹(監督の実母)が二人でアメリカのスーパーに行くシーンは大変に印象的。短いし、何でもない光景だけど、もしかしたら会える最後の機会となるかもしれないその時間を大切にしていることが伝わってくるシーンだった。
こういうまとまった尺のドキュメンタリー映像を観ると、テレビ局の取材力はやはり高いなと再認識させられる。
テレビドキュメンタリー様式
TBSで2022年に放送されたドキュメンタリー番組「War Bride 91歳の戦争花嫁」に34分の未公開シーンを追加し「完全版」としての劇場公開。
よって基本的にテレビ放送向けの映像処理なので、テロップやカット割りに違和感が拭えないものの、当時のビデオや写真を多く使用し、歴史を深く掘り下げていきたい監督の想いは伝わってくる。
ただ差別やいじめが子供たちやお孫さんにまで影響を与え、母親が戦争花嫁であるが故の・・・というそれぞれの思いが深く根底にありそうなのが辛い。
あと91歳とはテレビ放映された時点での桂子さんの年齢であって、特に91歳にあまり意味はなく、あくまで監督自身の伯母という個人的な関係者の生きる姿を追う映画であり、4万人の戦争花嫁たちが、どのような生涯を送っているのかは語られない。
実際に起こったことだと実感することが重要
半年ぐらい前からラジオで舞台公演の告知が流れ、どうやら私の親世代の人の実話だということを知り、その舞台の元となったドキュメンタリー映画が公開されるということで見てみました。
私の世代だと、親の戦争体験があったり、子どもの頃に繁華街の道端で傷痍軍人と言われる人がハーモニカを吹いていたりしたので、直接の経験がなくても、まだ戦争を感じて育ってきていますが、ちょっと下の世代だと、実感がないでしょう。そんな状況でやたらと美化したものや、逆に悲惨な部分だけを強調したものと接することで、本当の当時の状況が歪んで伝わってしまっているように思います。
今回の話は、一部の特殊なケースではあるものの、ストレートに当時のことを知れる機会ではないかと感じました。中途半端な知識で、当時はこういう状況だったはずだから、こんなことがある訳がない、なんていう決めつけは危険ですね。今は政治家を始め、経験もしていないのに決めつけをする人が増えているので、先の大戦に関して、いろいろな角度から見て、認識を深めることが必要でしょう。経験している人が減ってきているので、今がそういうことができる最後のタイミングなのかも。
今見るべき作品
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