パリタクシーのレビュー・感想・評価
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遅刻厳禁(自分にね)
引っ越して遠くなった有楽町、移動時間を読み違えて多分数分遅れで入場。エレベーターのタイミングも悪くイライラして入場したら買ってた席に荷物が置かれていて、仕方なく前方横の空いてたところに着席。タイトルが出る前だったからまだいいかな~。
全体に流れるムードは評判通りでいいお話だったが、あの事件はちょっと…。たしかに酷い旦那だとは思うが、連れ子第一の奥さんに苛立つ気持ちもちょっとは分かり、あんなに本格的に焼こうとしては流石にアカンという気持ちが強く、も少しマシな手段にしてほしかった。
実年齢の役柄を演じたリーヌ・ルノーに脱帽
ダニー・ブーン演じるシャルルは、低賃金・長時間労働で家族と過ごす時間も取れないタクシードライバー。この辺りの事情は、フランスも日本とも変わらないようで、彼はかなりやさぐれていている。そんなシャルルが乗せたのは、リーヌ・ルノー演じる御年92歳のマドレーヌ。彼女は身体の自由が利かなくなってきたことから、自宅の一軒家を引き払ってパリの反対側に位置する老人ホームに入るためにタクシーに乗る。そんなシャルルとマドレーヌのお話でした。
シーンの多くはタクシー車内での2人の会話と、マドレーヌの回想シーンで構成されていました。彼女の驚くべき体験は、子供時代から順を追って語られていき、所縁のある場所にタクシーが立ち寄ることで、過去と現代が立体的に繋がるように仕上がっていたのは見事でした。
戦争でナチに父を殺されたこと、解放軍たるアメリカ軍の軍人とひと時の恋に落ちたこと、アメリカ軍人との間に出来た子供を連れてDV男と結婚してしまったこと、その男のシンボルをバーナーで焼いたこと、そしてその罪で禁固25年に処されたこと(模範囚だったことで13年で釈放)など、まさに激動の人生を語るマドレーヌの話を聞き、やさぐれていたシャルルも我々観客も彼女に魅せられていく。そしてドライブの最後は高級レストランでのディナー。ここまで来ると2人はもはや恋人同士以上の関係になっているようでした。そしてラストは突然のマドレーヌの死とともに、シャルルはプレゼントを受け取るというもの。この辺りはお話の途中から薄々予想出来る展開でしたが、それですら久々に号泣してしまいました。それくらい、わずか1日のドライブで出来た2人の絆に感情移入できる作品でした。
ストーリーの本筋と離れて強調されていたことは、マドレーヌが夫からDVを受けていた1950年代は、女性の権利が大幅に制限されていたということ。一例として挙げられていたのは、銀行預金を作るのですら、夫の許可が必要だったというのだから、いくら何でもという感じでした。そういえば昨年上映された同じフランス映画「あのこと」でも、1960年代になってすら人工妊娠中絶が認められていなかったことが描かれていました。戦後を回想する現代フランス映画において、かつて女性の権利が大幅に制限されていたことがいろいろな角度から描かれてるところを観ると、実は現代においてもそうした問題が残っているんじゃないかと想像を巡らせたところでした。(G7参加国で唯一夫婦別姓を認めていない日本も他人事ではないでしょうが。。。)
あと驚いたのが、マドレーヌを演じたリーヌ・ルノーの年齢。劇中92歳という設定でしたが、調べてみると1928年生まれなので、当年取って94歳。つまり劇中の年齢は実年齢だったという訳です。いや~、あの貫禄ある演技は、本物の年輪から来るものだったのかと、舌を巻きました。
そんな訳で、涙を誘うお決まりのストーリーというベタな展開ではありましたが、それをフランスらしい軽妙洒脱なユーモアを交え、そして何よりリーヌ・ルノーの愛すべき演技にやられてしまったので、評価は文句なしの★5とします!
個人的なことは政治的なこと
と、何度も反芻。
二つの世紀を生きるということは、その間の政治的社会的文化的背景と併走してきたということ。もちろん若さゆえの軽卒とか思い違いや暴走もあって自分で受け止めてきた結果の人生ではある。けれども、戦前・戦中・戦後を生き抜いた、例えば進駐軍との間にできた子どもを一人で育てることになった日本の女性たちの語れなかった半生を想像してみたりも。
ともあれ、彼女は生き延びた。しかし、この映画の白眉はお涙頂戴の悲劇を描くことでも、長く続いたマッチョな男社会への怒りに燃料を注ぐことでもない。
エスプリの効いた会話・タクシードライバー目線のパリ観光・キレのあるストーリー展開、そして人と人がしっくりくるのは過ごした時間の長さではなくて共感しあえる体験やセンスを見出せた際に生じるケミストリーだと教えてくれた。(これから先、何度見知らぬ人との出会いがあるのかわからないけれど一期一会を大切にしよう!)
それにしても。流れるスタンダードジャズソング(パリだけど、ね)・焼け落ちたノートルダム聖堂・92歳のファッションアイコン・現代フランス社会の労働者の経済事情、、、反芻したくなる要素はたくさんあった!
やさしく人間が生きることの素晴らしさを感じられた
誰だろうと回顧したくなる
ジェノサイド
箱のなかの話し
パリタクシー追憶巡りコースおひとり様
疲れた中年タクシードライバーと92歳の老女の1日だけの寄り道の旅と言う設定だけで、『いい映画』確定なんだけど、そこはフランス映画,一筋縄ではいかない人情劇でした。パリのあちこちを廻りながら、老女の追憶を辿るのは定石的だけど、彼女の辛い人生が戦後フランスの女性人権史のようなのが面白い所です。彼女のDV夫への反撃はドン引きしそうになるけど、サッと現在の彼女に場面転換するのが上手い所で、監督のクリスチャン・カリオンの阿吽の呼吸はなかなかです。エンドロールも、彼女の最も愛した思い出のシーンで、涙腺崩壊です。役者では、主演のお二人がキャラにピッタリの名演でした。ダニー・ブーンのしかめっつらから笑顔になるあたりは、本当に味があっていい感じだし、リーヌ・ルノーは、貫禄がありながらも辛い過去でもサラッと流すお茶目振りが魅力的です。彼女の若き日を演じたアリス・イザーズも、キュートで、若い時のエマニュエル・べアールを思い出しました。
ベッソンじゃないやつ
パリの素敵な街並みを舞台に人生いまいちうまくいってないタクドラとやたらと饒舌な客の老婆が昔を振り返りながら紡ぎ出す心温まるストーリー…と、予告編からラストのオチまで含めて想像されるまんまの展開なのだが、婆さんの過去バナには意外性があり、今の時代性が盛り込まれていた。人権に関してはどこよりも進んでると思われるフランスでさえ、前世紀の半ばはまだ女性の権利もへったくれもない国だったとは。世の中動かすにはガスバーナー持ち出すぐらいの強さが必要ということか(違うか)。
最近のフランス映画はこんな人生イイ話みたいなのが多い気がするが、全体にあっさり目というか、もう少し展開や演出に工夫のしようがあるように思う。たとえばシャルルがカメラで妻の気を引いて、マドレーヌの息子がカメラマンになったつーんなら、写真を使った二人に通ずるエピソード作るとか…。90分でサクッと観られて、これはこれでいいのかもしらんけど、設定の割にあまり感動のない話だったエール!がコーダあいのうたにリメイクされてアカデミー賞を獲ったように、盛り上げようはあるかと。
低予算だし脚本に気を遣えば、日本でも各地の観光案内を兼ねたご当地映画としてもリメイクできそう?
最強のふたり
90分と短い映画なのでさくっと見ることができ、いい感じのタクシー運転手とマダムのコンビを味わうことができる映画です。
ふたりが同世代で出会っていたら恋人同士になってたんだろうなと想像してしまいました。
俳優さんのふたりは、役とマッチしていて超適任でした。
グランドホテル形式類似の設定が醸し出す雰囲気の味わい
本作にはタクシー運転手のシャルルと、乗客のマドレーヌという明確な主役が設定されているので、正確に言えば当たらないのですが。しかし、ごく限られた場面の設定(タクシーの車内)で展開されるドラマということでは、これも一種の「グランドホテル形式の映画」と言えるのではないかと思いますし、その広くはない舞台設定が、シャルルとマドレーヌとの関係性に、一種独特な雰囲気を醸し出していたことも、間違いはないと思いました。評論子は。
シャルルが運転するタクシーの車窓に流れるパリの街の風景が、あたかも「走馬灯」のように、マドレーヌが語る彼女の人生の思い出をリアルに紡いていたと思われます。
その雰囲気が存分に味わえるという意味では、佳作であったと思います。評論子は。
凄絶な人生も平穏な人生も束の間の夢みたいなものなのかも
独り暮らしの92歳の老婦人マドレーヌが介護老人施設に引っ越す。そのためにタクシーが呼ばれる。やって来たのは風采の上がらない中年男シャルル。移る施設は同じパリ市内、おそらく数十分で着ける距離なのかもしれないが、老婦人マドレーヌの願いで想い出の場所に寄り道を繰り返す。そして思い出話が語られる。途中、マドレーヌの突然の自然現象(尿意?)やら、信号無視で警察に止められたり(過去の違反の累積でシャルルは免停か?)、こうしたエピソードでの二人の対応がくすっと笑える。始めは無愛想だった運転手シャルルも次第に心を開き、マドレーヌの話に熱心に耳を傾けるようになる。二人はまるで祖母と孫?親子?友達?気が付けば夜になり、二人はレストランでディナーを共にする。食事の後にセーヌ川沿いの街灯に照らされた夜の道を二人は腕を組んで歩く。まるで恋人みたいに。
マドレーヌの口から語られる過去は驚くほどに壮絶なもの。なのに幸福そうに語られる。シャルルはいつの間にか、自分の不遇な今も何とかできる、何とかしてみせると考えるようになっている。
予定よりも何時間も遅れてマドレーヌは介護老人施設に送り届けられる。そして最後にサプライズが。それはとても悲しい結末だけれど、とても幸せなサプライズでもあった。
92歳のパリジェンヌ
高齢マダムが主人公のフランス作品はハズレがない!(ねもちゃん調べ)
主人公マドレーヌを演じるはシャンソン歌手としても有名なマダム・リーヌ・ルノー
マドレーヌが歩んできた
波乱万丈な数奇な人生の悲壮感を感じさせないのは彼女の抜群のオーラとチャーミングで凛とした演技力のせいかもしれない
崖っぷちのタクシードライバー、シャルルが乗せた老婦人マドレーヌ…彼女の秘密が寄り道の度に明かされて行くうちシャルルも徐々に心を開き自身事を語り出したった1日の交流の中で
いつしか熱く深い友情が芽生える
シャルルはマドレーヌが目指した目的地…
悔いなき終活経由〜愛する人達が待つ天国へ
キチンと送り届けたからこそ彼の妻曰く「こ、こんなに…」な感謝と愛を込めた料金を
マドレーヌもキチンと支払ったのでしょう
時間と共に変わりゆくパリの風景を私もタクシーに乗って旅している気分にもなれ
91分という決して長くは無い尺の中で見心地良き時間を過ごせました
「語る」事の大切さ深さを改めて感じましたね
泣けて笑えて心から幸せな気持ちになれました
いやぁ忘れられないフランス作品がまた一つ増えましたね!
GW、誰にでもおすすめしたい作品です!
が…上映館が少ないのが唯一の不満です💧
ひとつの怒りでひとつ老い、ひとつの笑顔で ひとつ若返る
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