パリタクシーのレビュー・感想・評価
全242件中、61~80件目を表示
流れゆく景色の全てが美しく、ひとときの夢を共有した様な気持ちになる佳作。
「一年に地球3周も走るのに、楽しい思い出は、娘にせがまれて走ったイルミネーション輝くクリスマスのドライブの一回だけ」
タクシー運転手のシャルルの語る言葉のなんと重いことか。「タクシー運転手は自分に合っている」ともいうが、それはもちろん、周囲の人とうまく付き合うことができない自分を嘲る呪いの言葉。
成功している兄とはソリが合わない。娘が愛してやまない妻の実家を売却しなければならないほど金に困り、休みもろくに取れない。運転免許もあと2点で免停…。日常生活がうまくいってない彼の苛立ちは、観ている自分にもどこかしら響き合う。
そんな時に乗せた老婦人。
出会いは、クラクションを鳴らしたことへの叱責というマイナスからのスタート。早く距離を稼ぎたいシャルルなのに、この老婦人は急ぐことを目的とせず、遠回りになる寄り道を指示してくる。しかも、できればしゃべらずにいたいのに「幾つに見える?」と言ってめがねまで外す。
「歳をとった今も色気を忘れていないのか?面倒くさそう…。」そうなのだ。冒頭のわずかな時間で、気がつくと自分はすっかりシャルルになったつもりで老婦人を見ていた。
だから、その後、老婦人が92歳と聞くと、シャルル同様、素直にびっくりするし、面倒な寄り道にもキチンと意味があることがわかってくると、我々も、だんだん老婦人の人生の歩みに耳を傾けたくなっていく。
彼女は、自分が行動したことの責任は、全て自分自身で背負う。あんなに大切にしたいと願い、守ろうとしていた息子も、実は、彼女自身の行動が原因で、別の面から傷を負っていたことを知らされる。現代の眼差しで観ているこちらは、やるせなさがつのるのだが、彼女は決して「時代」そのものを否定しない。それどころか、時代を変えたきっかけの一つが彼女だったのにも関わらず、そのことを全くひけらかさない。
肉体的には、歩みがおぼつかず、トイレも近くて紛れもない老人である彼女なのだが、語られる言葉や行動は若き頃のままチャーミングで、シャルル同様、我々もどんどん彼女に惹かれていくのだ。
2人のパリの端から端まで、昼から夜までの小旅行は、それぞれの人間性回復の旅でもあった。
流れゆく景色の全てが美しく、ひとときの夢を共有した様な気持ちになる佳作。
記念すべき500レビュー。
92歳のかわいいおばあちゃんをタクシーに乗せて、パリ市内のおばちゃんの思い出の地を巡りながら、壮絶な人生を振り返るという話。
一人息子をベトナムの戦争に巻き込まれて亡くし、
DVの夫に悩まされて、
その夫を懲らしめたら懲役刑になり、
いろいろあったでは語りつくせないマドレーヌ。
それを問題を抱えたタクシー運転手が大きな心で受け止め、その心でマドレーヌの半生を引き出していく。
口数が多くないドライバーがこれまたいい味を出している。
旅路の果てにながめる人生はどんな色をみせるだろうか。
人生の窮地にいてイライラが隠せない中年タクシードライバー・シャルルがのせた客・老婦人マドレーヌ。
はじめはなんだか面倒くさそうな様子でマドレーヌの話かけに応じるシャルルなのだが、激動の時代をたくましく歩んだ彼女が語る生き様は説得力をもってシャルルの心を揺すりだす。
人生の緩急、複雑な重なりだからこその味わいを感じたシャルルはついには祖母をみるようなまなざしに。
マドレーヌも後部座席から助手席へ移り孫に乗せてもらっているような嬉しい顔をみせる。
そのころには自分も後ろの席に乗車していた錯覚が不思議である。
それはウィットに富んだ経験豊かなマドレーヌが、シャルルの不機嫌や短気で否定的な考え方を察知し、さりげなく明るくやわらげるのを目撃し、だんだん変わっていく空気を肌で感じとりながらいるせいだろう。
さて、二人の様子に安心しはじめると横を流れるパリの街並みはそれまでよりぐっと魅力的だ。
細い枝の先でおどるような緑も、流れる川のフォルムも、洗練された塔がなじむ石の道も、行き交う人々も、そばにある不安をとりのぞいた状態で眺めると、そこに受け入れられて立つ自分のありがたい命に触れるような感覚が際立つ。
やはり気分は捉え方を変え、捉え方は気分を変えるのだとつくづく思う。
そんなふうにして観客達はこの出会いが自分を含めて必要なものだったことを知っていく。
いいときもある。
わるいときもある。
でも
あなたはいつもまっすぐに顔をあげて進んでいけばいい。
タクシーに乗る前、わが家をじっとみつめたマドレーヌ。
今思えば、そんなふうに生きてきたことへの信念を住処を去るあのとき固く結んだのかもしれない。
そんなマドレーヌに会えたシャルルはラッキーだ。
他でもない自分自身がつくるたった一度きりの色。
マドレーヌのように塗り重ねて、あんなふうに豊かな色をおおらかに纏い去っていけたならそれは本望だろう。
邦題「パリタクシー」原題は「Une belle course」「美...
邦題「パリタクシー」原題は「Une belle course」「美しい、道のり」という感じでしょうか?英語版は「Madeleines Paris」マドレーヌ(老婆の名前)のパリ。
こじんまりとしてますが・・いい映画でした。小説もそうですが、人の置かれた環境、心理状態から生まれる、渇き、渇望、それを満たしてくれる潤いが、小説であり、映画なのかもしれません。ですから、それぞれの人にとっての良い映画、小説は、百人百様なのでしょうね。
という感じで、私にはこういう物語が必要なのかもしれません♪
物語は、パリのタクシー運転手が、介護施設へ入所する老婆を乗せて、パリの市内のおばあちゃんの思い出の場所を回るお話。
刺々しいタクシー運転手の態度、表情が徐々に緩んできて、素敵な笑顔を見せるようになり・・最後には・・・・。
今の世の中、こういう僥倖は、現実には・・などと思ってしまいますが・・・。今、目の前に生きている老人達にも、その人たちの数だけの、たった一つの恋があって、たった一つ人生の物語があった訳で・・。そういうお話を聞いてみたいし、大切にしたい・・・。
美しい心
ドライビング・マダム・マドレーヌ
パリでタクシー運転手をしているシャルル。
一日12時間働きっ放し、休みは週一。おまけに免停寸前。家族にもろくに会えない。人生どん詰まり、世の中に対してイライライライライライラ…。
とある客を乗せる事に。パリの外れまでの長距離だが、その分報酬はいい。引き受ける。
マドレーヌという老女。長年住んでいた家を出て、介護施設へ。彼女をそこまで送る。
それはいいのだが…、この老女、お喋り好き。
私、何歳に見える? さあね、80歳くらい? 92歳なの。あっそう。
まだ10代だった頃の甘酸っぱいファーストキスの思い出話を語る。ババァの初キスの話なんか聞きたかねぇよ!
すんなり目的地には向かわず、あそこに寄って、ここに寄って。あんたのお抱え運転手じゃねぇよ!
そんな感じ。面倒、うんざり。最初の内は。
しかし次第に彼女の話に耳を傾けるようになる。シャルルの心境にも変化が。不思議と交流を深めていく。
お喋り好きの老女と無愛想なタクシー運転手の珍道中。もっとユーモアあってお洒落なロードムービーと思っていた。
マドレーヌの語る過去に聞く耳立てずにいられなくなる…。
16歳の時にアメリカの軍人と出会い、恋に落ちる。ロマンチックな恋は束の間、ほどなくして別れ男は別の女性と結婚。マドレーヌは彼の子を身籠っていた。
出産し、マチューと名付け、時に母の協力を乞いながら、新たなスタートを。そんな時、レイという男と出会う。
結婚するも、レイはマチューに愛情を示さず。それどころか暴力を振るう。マドレーヌにも暴力を振るい、時に強/姦さながらに…。
このままでは自分も息子も…。身を守る為マドレーヌは、レイの股間をバーナーで焼く!
レイは命は助かったが、裁判に。DV夫からの正当防衛…世の女性たちから同情の声もあったが、その当時1950年代は法律は女性にあまりにも不利だった。
実刑。禁錮25年…。
模範囚であったマドレーヌは半分ほどに減刑される。
保釈され、息子と再会。が、息子とは大きな溝が。大学生になっていたマチューは学校を辞め、戦場カメラマンとしてベトナムへ。
もうすぐ察しは付いた。男に捨てられ、別の男からは暴力を振るわれ、罪に問われ…。そこに、追い討ちをかけるかのように息子の死…。
マドレーヌの壮絶な人生に言葉を失う。
チャーミングで朗らかな人柄からは想像出来ない。
怒らないで。笑って。落ち着いて。
怒ると一つ年を取り、笑うと一つ若くなる。
マドレーヌはよくそう言う。
それに対しシャルルは、世の中ムカつく事やクソみたいな事ばかり。
マドレーヌとて世の中に怒りを覚えた事はある。どうしようもないほどの…。
それは本当だ。マドレーヌが経験してきた怒りや世の不条理は、シャルルの比ではない。
そんな怒り、悲しみ、後悔の数々を乗り越え、笑顔で生きる事を選んだ。
悲しい事、辛い事いっぱいあったけど、それと同じくらい美しい事、幸せな事もいっぱいあった。
全てを人生の思い出に。
酸いも甘いも経験してきた人生の大先輩にこんな事言われちゃあ…。
マドレーヌと接する内に、シャルルの心もほぐれていく。
マドレーヌの話が鬱陶しそうだったのに、気付けば聞く耳立てるように。
彼女の境遇に同情したり、胸痛めたり、時に憤り感じたり、一緒になって笑い合ったり。
無愛想から笑顔を見せるようになる。丸くなっていく。
心には余裕も必要。
ちょいちょいツッコミ所やオイオイ…な点も。
マドレーヌ、かなりマイペースで身勝手。
正当防衛は同情するが、家族への影響や迷惑は考えなかったのか…?
トイレへ。レストランのトイレを拝借。その際店の真ん前にタクシーを停めた為、渋滞。クラクション鳴らす後続車を挑発。
ついつい赤信号無視。窮地のシャルルを老人の知恵で切り抜ける。茶目っ気たっぷりではあるが、嘘も方便…?
まあそれも許しちゃう気になってくる。
シャルル役のダニー・ブーンの好演。
何よりマドレーヌ役のリーヌ・ルノー。本業はフランスのレジェンド歌手だが、彼女の存在感、ナチュラルさ、愛らしさに魅せられる。
到着の予定時間も大幅に過ぎ。
最後にディナーもして、腕を組んで夜の街を歩いて、ようやく施設へ。
お金の支払いを忘れた。シャルルも貰うのを忘れた。
また必ず会いに来る。その時に。
そう約束した。
早速翌週、会いに。妻も連れて。
そんなまさか…。
マドレーヌはその日の朝、急死した。
心臓に重い病を抱え、もう限界だったという…。
それを感じさせないほど魅せてくれた笑顔と人柄…。
彼女を思うだけで目頭が熱くなってくる。
マドレーヌから手紙。それと、思いがけないプレゼント。
どうして、こんな俺に…?
たった一度、ほんの数時間乗せただけ。
それなのに、ここまで人によくする事が出来るものか…?
それなのに、こんなにも死を悲しむ事が出来るのか…?
他人も同然なのに。
それが、一期一会。
それが、美しき旅路。
それが、人。
シャルルが振り返った時、後部座席にはマドレーヌが居るだろう。微笑みを浮かべて。
これから先の人生という道を。
見終わって何の躊躇もなく思える。
いい映画だった。
さながらタクシーでパリ探訪。街並みの美しさと言ったら…!
ミニシアター系作品では今年のベスト候補。
フランス映画の良作。
見ながら、日本でリメイクするのも良さそうと思った。
その時は、誰がいいかなぁ…?
静かな余韻に浸る愛おしい映画
なのですが、しかし・・・
マダムの思いも寄らない身の上話に
跳び上がるほどびっくりでした。
パリの街をタクシーで一日観光して老婦人とお喋りして・・
人懐っこい笑顔のタクシードライバーと老婦人のハートウォーミングな
洒落た会話と美しいパリの風景を楽しむ。
そんな予想は、柔道の背負い投げ、みたいに
投げ飛ばされて一本負け・・・そんな映画でした。
上品な老婦人(リーヌ・ルノー)をお客として乗せたドライバーの
シャルル(ダニー・ブーン)。
マダムの名前はマドレーヌ、92歳です。
今日、住み慣れたパリ郊外の家から、パリの反対側にある
老人ホームに入居するために、シャルルのタクシーを呼んだのでした。
マドレーヌはパリを横断して思い出の地や変わってしまった
街並みを走らせてと頼みます。
あちこち寄り道をする度に、身の上話が驚くように展開する。
私が想像していたようなストーリーとは、かけ離れていました。
老婦人はある意味で特異な経験をした女性でした。
92歳の老婦人の初恋・・・、
パリを解放に来たアメリカ兵と目眩く恋をして息子を授かる。
アメリカ兵は“帰ってくる“
その約束は守られることなく、
私生児の母となったマドレーヌ・テレーズ。
次に付き合った男はDV夫だった。
事件を起こしたのはマドレーヌ。
1950代半ばの事です。
女性は銀行口座を開く自由もなかった時代。
離婚を申し出ることも成らず、DVに耐えるしかない時代だったと話す。
この映画を彩る歌声は黒人歌手・ダイナ・ウィンストンや
黒人と白人の混血のエタ・ジェイムズのソウルフルなR&B。
(シャンソンでないのです)
黒人の歌手は力強い歌声で人生の悲哀をパワフルに歌う。
マドレーヌの起こした事件は《虐げられていた女性の事件》で、
時代を映す鏡だったのでしょうか、
映画は声高く言わないけれど、女性を応援している。
女性解放のアイコンだったマドレーヌ。
(シャルルの妻がググるとデモ行進をするマドレーヌの写真が)
(かなりの有名人だったのだ)
それにしても息子のマチューの人生は辛く過酷なものだった思う。
受難のような短い生涯。
父親の祖国、父親も戦った《戦争》をカメラに刻みたかった
のかも知れない。
ここでも戦争が母と息子を引き裂く。
シャルルもまた長時間労働に休み少なさと収入の少なさに
押し潰されている。
パリの放射状の車線にイラついた乱暴運転の車。
ストレスで押し潰されそうなシャルル。
借金に免停スレスレの免許証・・・もうギリギリだ。
妻のカリーヌの《美しい瞳》を愛した素朴な男の
人生は甘くて苦い。
パリの昼と夜。
エッフェル塔に始まり夜の凱旋門で終わる長い一日。
ほんの一日の邂逅、巡り合い、偶然の出会いが、
人生に潤いの水を注ぐ。
シャルルとマドレーヌ。
奇跡の巡り会いに乾杯‼️
孤独だったパリジェンヌが最期に2人で過ごした幸せな時間
波乱万丈の人生を生き抜いてきたマドレーヌが
仕事にも生活にも行き詰まった状況の
タクシー運転手シャルルと出逢った!
タクシーを走らせながら、マドレーヌの古い時代の悲しい過去と想い出が徐々に明かされていくストーリーでした。
タクシーが目的地に向かう途中、アクシデントがあってまさかの演技で切り抜ける
マドレーヌは歳を重ねてもチャーミングな
パリジェンヌそのものでした。
寄り道をした時間も無駄に思えないマドレーヌの生き方が表現されていました。
マドレーヌとシャルルが2人で食事した
ディナーは至福の時間だと思いました。
フランスの夜景、光るネオンのなかに消え逝く儚さを感じました。
マドレーヌがシャルルに出逢えたことは
偶然ではなく、必然的だったと思いました。
マドレーヌが残した「手紙」には
人生の再出発を願う気持ちが込められていました。
カメラで家族の写真をたくさん撮って。
人生の最期に幸せなひととき
喜びを分かち合うことが出来たロード・ムービーでした。
老婦人の壮絶な人生を通し、タクシードライバーの心の成長が見られた
無愛想なタクシー運転手シャルルは、金も休みもなく免停寸前で、イライラの毎日だった。そんな時、パリを端から端まで送る仕事が入り、92歳の女性マドレーヌを乗せて走ることになった。終活に向かっているマドレーヌは、シャルルに生まれた場所、彼と出会った場所、など次々と寄り道を依頼した。寄り道をするたびに、マドレーヌの壮絶な人生が明らかになっていった。赤信号を無視して警官に切符を切られそうになった時にシャルルを助けたりし、そのドライブは2人にとって大切な時間となっていった、という話。
老婦人の壮絶な人生をタクシー運転手との会話や寄り道の中で体験していくストーリーが面白かった。
最初はイライラしてて、さっさと送り届けてしまおうとしていたタクシードライバーのシャルルが老婦人の終活に付き合っていく中で、人生の大切なものを掴み穏やかになっていく過程が素晴らしかった。
タクシー代もらえずにマドレーヌは亡くなってしまったのかと思ったら、101万ユーロ=1億7千万円くらいかな?、シャルルはものすごいタスシー代を回収しちゃったね。
マドレーヌ役のリーヌ・ルノーが品があって良かった。
波瀾万丈な人生、幸せな幕引き
想像通りの作品
老婆の過酷な人生については想定外でしたが、それ以外の部分についてはほぼ想像通りの内容でした。恐らくこの作品をご覧になった多くの方々もそうだろうと思います。その、あまりにも想像通りなところが、期待通りとも言えるし、物足りないとも言えて、観る側の期待値によって評価が分かれる作品だと思います。私はそれほど期待はしていなかった分、意外と良かったので星4.0にしましたが、期待していたら星3.5、想像を超える良さがあれば星4.5だったと思います。
あと、内容について少し引っ掛かることがあり、夫を溶接用のバーナーで焼いてしまう部分については、過激過ぎて作品全体の雰囲気に合っていない気がしました。
タクシードライバーと乗客の老婦人(92歳)のお話。 老婦人さんの思...
全242件中、61~80件目を表示