「凄絶な人生も平穏な人生も束の間の夢みたいなものなのかも」パリタクシー ゆみありさんの映画レビュー(感想・評価)
凄絶な人生も平穏な人生も束の間の夢みたいなものなのかも
クリックして本文を読む
独り暮らしの92歳の老婦人マドレーヌが介護老人施設に引っ越す。そのためにタクシーが呼ばれる。やって来たのは風采の上がらない中年男シャルル。移る施設は同じパリ市内、おそらく数十分で着ける距離なのかもしれないが、老婦人マドレーヌの願いで想い出の場所に寄り道を繰り返す。そして思い出話が語られる。途中、マドレーヌの突然の自然現象(尿意?)やら、信号無視で警察に止められたり(過去の違反の累積でシャルルは免停か?)、こうしたエピソードでの二人の対応がくすっと笑える。始めは無愛想だった運転手シャルルも次第に心を開き、マドレーヌの話に熱心に耳を傾けるようになる。二人はまるで祖母と孫?親子?友達?気が付けば夜になり、二人はレストランでディナーを共にする。食事の後にセーヌ川沿いの街灯に照らされた夜の道を二人は腕を組んで歩く。まるで恋人みたいに。
マドレーヌの口から語られる過去は驚くほどに壮絶なもの。なのに幸福そうに語られる。シャルルはいつの間にか、自分の不遇な今も何とかできる、何とかしてみせると考えるようになっている。
予定よりも何時間も遅れてマドレーヌは介護老人施設に送り届けられる。そして最後にサプライズが。それはとても悲しい結末だけれど、とても幸せなサプライズでもあった。
コメントする