「【”美しき人生の最期の旅路。”人生に疲れた巴里のタクシー運転手と92歳の波乱万丈の人生を歩んだ女性との1日の交流を描いた作品。今作は人間の尊厳を尊重する事の大切さを描いた作品でもある。】」パリタクシー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”美しき人生の最期の旅路。”人生に疲れた巴里のタクシー運転手と92歳の波乱万丈の人生を歩んだ女性との1日の交流を描いた作品。今作は人間の尊厳を尊重する事の大切さを描いた作品でもある。】
■巴里でタクシー運転手として働くシャルル(ダニー・ブーン)は、借金が嵩み免停寸前。浮かない顔でタクシーを運転している不愛想な男である。
ある日、92歳のマドレーヌ(リーヌ・ルノー:今年、95歳である。)を介護施設に送るために迎えに行くが、彼女は思い出の地を回って・・、と依頼する。
◆感想
・当初は不愛想だったシャルルが、マドレーヌの若き日の初キスから、米兵マットとの恋と出産、その後DV男との出会いとマットとの間に出来た愛する息子マチューへの仕打ちに対して、彼女が決然と行った事に聞き惚れ、自分の妻との出会いなどのプライベートを話し始め、打ち解けて行く様が極、自然に描かれている。
ー 愚かしきDV男は最初は優しいが、そのうちに彼女を頻繁に殴り、マチューを”私生児”と呼び殴る。マドレーヌがそんな男に行った強烈な事。
で、女性達の抗議の声が響く中、懲役25年を言い渡されるが、老いたマドレーヌは”それが1950年代の巴里なのよ・・。”と呟くのである。-
・シャルルはマドレーヌのためにトイレを借りたり(で、道は大渋滞・・。)、話し込んでいる際に赤信号を無視してしまい、警官に捕まり大ピンチ。
ー だが、マドレーヌは婦人警官を車内に入れ、ひそひそ話。すると、ナント信号無視は見逃される。場内からクスクス笑いが起こったシーンである。マドレーヌ、名演技である。ついでに言えば、婦人警官も粋である。-
・シャルルはマドレーヌにアイスを買ってあげたり、果てはディナーを一緒に摂る提案をする。
ー マドレーヌは、嬉しそうにその申し出を受ける。支払いもシャルルがする。男である。-
・そして、漸く到着した夜中の介護施設。シャルルは”支払いは後で良いよ”。”と言ってマドレーヌを見送る。
ー 家に戻ったシャルルは愛する妻にマドレーヌに会いに行こうと誘う。妻が調べると、出所したマドレーヌは写真家になったマチューをベトナムで失うも、女性の権利を獲得するリーダーとして活躍していた事を知る。-
<だが、妻と娘と介護施設に行くとマドレーヌは亡くなったと告げられる。愕然とするシャルル。
そんな彼の所に、見知らぬ男が現れ”私は彼女の財産を管理しているモノです。貴方への手紙を託されています。”と言い手紙を渡す。
手紙に書かれていたシャルルに対する感謝の言葉と、101万ユーロの小切手。
マドレーヌは、シャルルがお金に困っている事を知りつつ、彼女にディナーを振舞ってくれた事に対し、キチンと感謝の念を言葉と形で応えたのである。
今作は、人間の尊厳を尊重する事の大切さを描いた作品なのである。>