「期待度○鑑賞後の満足度○ 問題提起型娯楽映画。どうしてもスケール感では見劣りのする日本映画において久々にスケールの大きい作品になっていて嬉しいが限界も感じた。現代の国際情勢の中で日本の国防どうする?」沈黙の艦隊 もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
期待度○鑑賞後の満足度○ 問題提起型娯楽映画。どうしてもスケール感では見劣りのする日本映画において久々にスケールの大きい作品になっていて嬉しいが限界も感じた。現代の国際情勢の中で日本の国防どうする?
①原作コミックは未読なので偉そうなことは言えないけれども、連載当時とは国際情勢や軍事バランスはかなり変わっているので、そのズレを考えながら観ると結構面白かった。
惜しむらくは、連載当時に比べ中国が軍事大国化し海洋進出に躍起となり、北朝鮮が核抑止力を楯に実験用弾道ミサイルをポンポン撃つようになり、米国もオバマ大統領の時に世界の警察たることを止めてから以降軍事大国としての国際的地位が低下している現代においては、「平和とは何か」「人類はどうすれば世界の平和を達成できるのか」「なぜ人類は戦争を止められないのか」「核抑止力の功罪」「自国防衛」といった普遍的な問題に対して何らかの問いかけ或いは答え(万人に受け入れられる形ではないにしても)を映画として出すには深掘りが足りないし、またウクライナへのロシア侵攻やハマスによるイスラエル攻撃など、正に現代進行形の国際的軍事緊張状態を目の当たりにしている我々にとってはジャーナリスティックな魅力に欠けるという点で、中途半端で食い足りない。
原作コミックをどれ程忠実に映画化しているか分からないけれども、もう少し現代の国際情勢やその中での日本の立ち位置を織り込んでも良かったのではないだろうか。
②このような終わり方になるのもある程度予想できた。原作コミックが話の最後をどのような着地点に持って行ったかは知らないけれども、2時間内で全てを終わらせようとするならもっとエンタメ性を全面に押し出した形にしただろうし、「平和」「戦争」「自国防衛」「核保有」等といったテーマをそれなりに真面目に扱うのであれば2時間では収まりきらないか、又は収められないだろうと思ったから。続編ありきで作ったかどうかはともかく。
③印象的なセリフ(台詞):
A. 「自分の国は自分で守る」
まあ、よく使われる言い回しであるし、その意味を肌感覚で理解する為に「自分の家は自分で守る」というのがよく引き合いに出されるけれども、「国」と「家」とを同レベルで比べるのは少し違うのではないかと思う。
「自分の家族や愛する人々が安寧・安全に毎日を普通に過ごせる様に、自分が守る」という方がより肌感覚で近いのではないか。
しかし、「自分の会社は自分で守る」「自分の地域は自分で守る」とか色々と変えてみると「自分の」に続く組織単位とかカバーするエリアとかによって「自分」の意味が少しずつ違ってくるのが面白い。組織が大きくなったりカバーするエリアが広くなると「自分(一人)」で守るのは無理になるんだよなぁ。
「自分で」と「自分が」とテニオハを変えるだけでも言い回しの意味が微妙に変わってくるし。
海江田(とそのクルー達)はこういう形でそれを実行したけれど、さあ、“貴方”ならどうする?
B. 「自分達の知らないところで此のような事が行われてることなど、一般の国民は何も知らずに毎日を送っているのだよ」(…だったかな?)
本作の中で最もリアルなセリフだったかも知れない。
私達の知らないところで国家間の水面下の駆け引きとか、極秘プロジェクトとか、情報合戦とか(特にスパイがウヨウヨの日本ではそうでしょう)、もう少し今までも行われて来ただろうし、これからも行われるだろう。
それで世界の均衡が何とか保たれているのかも知れないし(但し皺寄せや解決又は抑えきれない問題は世界のあちこちで噴出しているけれどま)、でもウクライナ・ロシアやハマス・イスラエルの問題みたいに、いずれ私達の目に見える形で爆発するかもしれない。
そんなリアルさをこのセリフは語っている。