「そりゃ一本には収まるわけがない」沈黙の艦隊 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
そりゃ一本には収まるわけがない
原作は途中まで読んだことがある(というより途中までは大好きだった)。でも最後どう終わったか覚えていない。忘れっぽくなったということでなく、たぶん読んでいない。ただ、かなりの量があるのに、一本の映画に収まるわけがないと思っていた。案の定丁寧に物語るペースで話は進む。重厚な感じでいい。序盤でこりゃ次に続くなと思っていた。そりゃそうだ。
実は潜水艦の戦闘シーンはどんなレベルになるんだろうと不安に感じていた。いやー、舐めてた自分を怒りたい。いいじゃないか、これ。艦長と乗組員たちのやり取りと海中海上での駆け引き。緊迫感のある映像は、原作序盤の潜水艦バトルの魅力を十二分に表現してくれていたと思う。潜水艦の船首から船上を映し出す手法が、「トップガン・マーヴェリック」を連想する作りだったのも面白い。まったく影響を受けていないのであればごめんなさい。あの揺れが演出するリアリティは本作でも感じられた。潜水艦のシーンだけでも観る価値がある。
ただ、微妙なところもいくつか。原作での海江田もクールでつかみどころない人間だったが、大沢たかおが演じてしまうとどうしても王騎を思い出してしまう。悪くはないんだけど。あと、やはり気になるのは時代の違い。原作連載当時はまだ冷戦終結前後で東西対立が激しかったから、マンガとはいえあんな絵空事でもそれなりに楽しめていたんだと思う。でも、今の世界にあの設定をそのまま持ち込んでしまうと彼らのテロリスト感が強くなってしまう。ここらへんは続編でどう語るかにかかっているのだが、そもそも続編アピールもしないのはどういうことなんだ?ヒットしないと続編作らないぞという脅し?
おぼろげに覚えている、国会での海江田の討論場面をぜひ映画で観てみたい。