「混沌とした世界で日本の平和をどう守るのか」沈黙の艦隊 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
混沌とした世界で日本の平和をどう守るのか
日本の平和をどう守るのか考えさせられる作品だった。昨年、ロシアのウクライナ侵攻が始まって以来、今まで絵空事と考えていた第三次世界大戦、核兵器使用という言葉が飛び交うようになり、世界情勢は混沌としている。そんな時、本作のような軍事サスペンス作品が公開される意義は大きい。本作は、平和日本の根幹である、憲法第9条、非核三原則、日米安保条約について、真正面から迫っている。今まで当たり前だったことを根底から揺さ振っている。
本作の舞台は、現代の日本。日本近海で、海上自衛隊の潜水艦がアメリカの原子力潜水艦と衝突し、乗組員76名全員が死亡するという衝撃的な事故が起きる。実は、この事故は偽装工作であり、日米が秘かに建造した原子力潜水艦・シーバットに彼らを乗務させるためだった。しかし、艦長・海江田四郎(大沢たかお)は、原子力潜水艦に核ミサイルを搭載し、アメリカの指揮下から勝手に外れ、深海に消えてしまう。アメリカは海江田をテロリストと断定しシーバット撃沈を狙う。一方、日本はアメリカより早くシーバットを発見し、捕獲を目指す。日本側の潜水艦たつなみの艦長・深町洋(玉木宏)は海江田に特別な想いを抱いていた・・・。
本作は、潜水艦をメインとした軍事サスペンスである。潜水艦シーンには独特な緊迫感がある。閉鎖された艦内で事故や魚雷攻撃があれば、逃げ場はない。死に直結するからである。
何と言っても、海江田艦長役の大沢たかおの圧倒的な存在感が際立つ。特に、アメリカの指揮下を外れた後の、威風堂々とした風格。何が起きても、予測していたかのように動ずることなく指示を出す姿に、強い覚悟を感じる。それに比べ、日本政府の対応は百家争鳴状態でなかなか結論がまとまらない。シンゴジラ鑑賞時に観たシーンと同様である。未曽有の危機に対する脆弱性が露呈している。
原作は長編なので、予想通り本作は掴み=問題提起&プロローグで終わる。続編での迫力ある展開に期待したい。