「このクーデターは正義か?それともテロか?」沈黙の艦隊 bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
このクーデターは正義か?それともテロか?
『モーニング』に掲載された名作コミックの実写映画化。防衛省・自衛隊の全面協力の下での作品であるだけに、これまでの邦画では、あまり観たことのないようなアングルの潜水艦シーンも盛り込まれ、それなりの迫力となって伝わってきた。
アメリカの原子力潜水艦・シーバットを秘密裏に奪って、核を背景にして『独立国・やまと』を宣言するという、日米安保においてはかなり際どい、クーデターをモチーフにした内容。これがロシアや北朝鮮、中国相手なら、それなりに納得して鑑賞できただろう。しかし、アメリカ相手となると、同じ同盟国としては、複雑なシチューションであったことは間違いない。
潜水艦映画は、『Uボート』を代表に、最近では『ハンターキラー』等、密閉された狭い潜水艦内で繰り広げられる、死と隣り合わせの戦闘アクションが見どころ。本作でも、そうしたアクション・シーンは、確かに盛り込まれていたが、どちらかとい言えば、タイトル通り、静けさを纏った水中での各々の思惑の攻防戦が全面に映し出されている。その為、手に汗握るスリルやハラハラする緊迫感という点では、物足りなさは感じた。
また、優柔不断で操り人形の内閣総理大臣を筆頭に、こんな有事の際にも日本政府の馬鹿さ加減を面白おかしく描いていた。実際、今の日本、強いリーダーシップの元、判断力のある政治家はいないのだろう。
海江田役を務めた大沢たかおは、常に冷静沈着で、その志に部下までも慕い、巻き込むことのできる艦長を演じていた。これには『キングダム』の王騎に通じるような、カリスマ的な存在感を感じた。それに対峙する深町役の玉木宏は、海江田とは対照的な、人間味あふれた艦長として描かれており、この2人の配は、とてもよかった。
他にも、江口洋介、中村倫也、上戸彩、ユースケ・サンタマリア等が脇を固め、多くの外国人も出演していた。せっかく、こうした日米軍事関係の作品なのだから、ハリウッドの有名俳優の起用があれば、より話題性も高まったと思うのだが、なかなか難しい邦画の課題かもしれない。