「思わず涙が込み上げましたが、しかし?」パスト ライブス 再会 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
思わず涙が込み上げましたが、しかし?
映画の初々しさ、みずみずしさに、思いがけず涙する。
鬼の目にも涙・・・でしょうか?
最後まで観たら後半はじわじわと感動の涙が込み上げてきました。
正直、世界中が絶賛とか、大げさだな・・・と思ってました。
(今も、そこまでの評価はありません)
成り行きで涙しましたが、よく考えると一筋縄では行かない映画。
(表と裏では見え方が真逆)
有名スターのいない良さ・・・とか。
長編映画初監督作で、それも自分の経験から生まれたという
セリーヌ・ソングさん。
大袈裟な表現もない、
泣かせの演出もない、
そんな清々しさ。
やはりヘソンを演じたユ・テオ。
一途で素朴に初恋の女性を思い続けた24年間、
とても共感出来る人だったんです。
ヘソンは韓国社会や自分の両親(家)そして仕事に
がんじがらめに縛られた生活を今も送っています。
憧れて大好きなナヨン(今はノラ)は、韓国から飛び立って移民した
勇敢な女性。
(親が新天地を求めたのですが、韓国人はかなり勇敢に世界に
進出しているようです)
ナヨンは12歳の時には成績をヘソンにたった一度抜かれただけで、
悔し泣きするほど強い性格。
そういう所もヘソンは好きだった。
その彼女が突然、視界から消えた、
移民して行ってしまった。
「突然・・・過ぎた・・・」と、つぶやく。
「韓国にいたらノーベル賞が取れない」
「だから外国に行く」
12年後(24歳)にオンラインで再会して、トロントと韓国で
オンライン・チャット。
懐かしさや思い出話で切なさも気持ちも盛り上がるものの、
お互いのキャリアを優先して会わずに、自然解消してしまう。
ここでもヘソンはナヨンにまた尋ねる。
「ナヨン、今の夢はなに?」
「ノーベル賞より、ビューリツァー賞かな?」
そして24年後にもヘソンはまた聞く。
「今の夢はなに?」
「トニー賞かな?」
(この野心こそがノラの本質なのだと思います)
この映画は韓国から実際に12歳でカナダを経てニューヨークに移民した
セリーヌ監督の実話に基づくから、なんと夫のアーサーと3人で食事したのも
事実とか。
そして今の夫で作家のアーサー(ジョン・マガロ)は、心の隅に、ある不安を
抱えているのです。
ノラ(ナヨン)はもしかしたら結婚はグリーンカード(永住権)を得るため?
それをちょっとだけ心配しています。
本当に彼女は愛してくれて結婚したのだろうか?
ノラが夫アーサーにヘソンを紹介する所はとでも良かった。
アーサーと自分の初恋の人との再会をオープンにすることにより、
再会はとても清潔なものになったから。
(でも自分の気持ちにブレーキをかける、そしてヘソンにも、
やんわりと牽制する効果も計算してます)
そしてアーサーが本当に優しい妻思いのいい人なので・・・
さすがに作家です(こんな経験は作品の素材になるもの)
この映画はサラリと淡く描いてるのが魅力なのだと思いますが、
よおく考えるとなかなかどうして、したたかな作品です。
ヘソンには捨てられない祖国、
捨てられない親や、しがらみ、
それを捨ててニューヨークという世界一の都市で劇作家として
多分戦場にいる初恋の人ナヨンが余計に輝いて見える・・
そんな気がして仕方ないのです。
初恋と24年後の再会を描いて、
「自由を求める」
「夢に向かって努力する」
そんなテーマを感じてしまうのでした。
たしかに韓国は日本と同じかそれ以上に女性の地位が低い。
ナヨン(ノラ)を演じたグレタ・リーさん。
勝ち気のかたまりに見えるお顔立ちです。
最後の別れで心残りのノラは、玄関階段で待ってる優しいアーサーに
泣きじゃくって慰めてもらう。
ヘソンはちょっとおひとよしでで都合良く描かれ過ぎかも。
ヘソンの言い分や本音も聞いてみたいです。
女目線の映画だと、公平に考えると私には思えてしまうんです。
確かに、確かに。ノラはヘソンや夫に対して決して冷たくはなかったけれど、感情に流された揺れる眼差しを向けることがなかったように見えました。つまり彼女は頑張る女性の「女目線」でしっかり世界を捉えていたのですね。とにかくノーベル賞でもピューリッツァー賞でもトニー賞でも、遥か高みを目指す女性であり続けたい。
言葉が押し寄せてくる琥珀糖さんのレビューと、素敵なコメントバックをいつも本当に有り難うございます。
そう。あの「四月になれば彼女は」の長澤まさみさんは、はっきり浮いてましたね。獣医の服(作業衣)を着て彼女が登場した時は、あっ、これは違うとはっきり思いましたものね。
共感ありがとうございました。
おっしゃるように気が強く野心家のノラ。ぴったりな配役でしたね。
その彼女よりひとつ上手のアーサーの包容力と作家ならではの冷静さ。当時のような幼さが残っているヘソンの違いはバーでの様子にも顕著に。環境と歳月と経験が個性に足されたノラとヘソンの成長の差も感じました。現在の再会だからこそはっきりした、これも〝イニョン〟だと。ラストに夫への誠意を感じなんだか私もほっとしました。
コメントありがとうございました。
あの時こっちの道に進んでいたら、今の自分はどうなっていたんだろう、なんてことを改めて考えさせてくれるいい映画でしたね。
そしてゲームと違ってリセットすることが出来ない寂しさが、本作のエンディングだったんじゃないかと思ったところです。
琥珀糖さん こんばんは。
共感コメントありがとうございます(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”
なるほど、ラブストーリーとして観るのではなく、運命とか東洋的な観点で観るのですね!そう言われると、私の感じ方も変わります。ナヨンはヘソンを韓国的で男らしいと言ってましたが、ナヨンも韓国的でしっかり運命を重んじていたのですね。
共感とコメント、ありがとうございます。
同じところで同じような感じを抱いているのに、私の方は大分辛辣に見ているなと思いました。刺々しい自分をちょっと反省しました。
いつもながら、素晴らしいレビューですね!
ゆ~きちさん、
とんでもないです。
ネット情報を駆使してない知恵絞って、変なこと書いてる
オバさんです。
北海道が好きで好きで、お金もないので、
北海道に骨を埋めます。
琥珀糖さんほどの知性と芸術鑑賞力、異文化理解力があれば、私より海外に適応するのは容易いと思いますよ。
健康である時間、やりたいことやって有意義なものにしましょう✊バンクーバーは北海道のように涼しいんですが、雪はあまり降らなくて住みやすいです♪
琥珀糖さんのレビューこそ、改めて作品を見返したような気になれるほど、感動を反芻することができます。
やっぱり日本にしろ、韓国にしろ、アジアってなかなか特殊な国だと実感します。先日の一時帰国でつくづく実感できましたwww
さすが琥珀糖さん、まさにおっしゃる通りなレビュー。登場人物の心情がよく伝わりました。
ノラを演じた女優さん、典型的な、北米在住アジア人女性の顔立ちw めちゃめちゃ野心が滲み出てましたw
共感ありがとうございました。
ぶっちゃけストレートに書くとヒロインの強かさに腹が立った?ので、これは恋愛モノじゃないじゃんと思ってしまった私なのでした。(笑)