「銀河の七人」REBEL MOON パート1 炎の子 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
銀河の七人
映画監督も人の子。幼少時見て憧れ、こんな映画が作りたい、と実現させた監督たちも。
往年の冒険活劇や海賊映画、黒澤映画に憧れ、『スター・ウォーズ』を作ったジョージ・ルーカス。
日本の怪獣映画、ロボットアニメの熱狂的マニアで、『パシフィック・リム』を作ったギレルモ・デル・トロ。
クリストファー・ノーランは『007』風のスパイ映画要素を度々自身の作品に。
マシュー・ヴォーンはもろ『007』オマージュで『キングスメン』を。
そしてこの監督も。
ザック・スナイダー。
構想20年。監督キャリアとほぼ同等。一番作りたかった作品かもしれない。
数々の大作を手掛けてきた彼が放つ、2部作からなるスペースオペラ・スペクタクル!
…と言うと仰々しいが、何て事はない。
もう笑っちゃうくらいの、“アレ”דアレ”。
『スター・ウォーズ』を見て、こんな映画が作りたいと思ったザック少年。『七人の侍』からもインスパイア。
そう、本作は、ザック版『スター・ウォーズ』×『七人の侍』なのだ!
話の立ち上がり、設定、展開まで、何もかも。
巨悪帝国“マザーワールド”が支配する宇宙。
辺境の惑星にある小さな村。生活の糧は農業。
一人の若い女性、コラも黙々と農業に精を出していた。
ある時、マザーワールドの宇宙船が飛来。
作物の供給を巡り、冷酷なノーブル提督が村長を殺害。10ヶ月後、作物の徴収に再び戻るという。
何か過去を持つコラ。逃げようとするが、監視役の兵士を倒した事から、マザーワールドと闘う決意をする。
その為に、共に闘う仲間を集める事に…。
遥か彼方の銀河を支配する巨悪帝国。
やるべし! 抗い、集い、闘う仲間たち。
まんまやん!パクりやん!あの宇宙港やバーなんて!
既視感だらけ。劣化版やん!
相変わらず批評は悪い。Rotten Tomatoes支持率現24%で、ラジー賞警戒の酷評レベル。
まあ確かに、『スター・ウォーズ』や『七人の侍』を下敷きにしていながら、話的には薄い。比べるのも酷だが、遥か彼方の銀河級に遠く及ばず。
この前編のメインは仲間集め。個性的な仲間は集まるが、展開的に淡々とし、カタルシスに欠け、尚且つキャラ描写も薄い。何故彼らは仲間に加わったのか、決定打に欠ける。
コラはかつてマザーワールドの兵士。悪の帝国から逃げ、身を隠すようにして生きてきたが、再び闘いに身を投じる。
重要な主人公の動機もイマイチ弱い。一応決意するが、序盤であっさりと。こちらも何が決定打になった…?
設定やキャラの説明や紹介に過ぎず、配置された駒がただ動かされているかのよう。
ソフィア・ブテラ、チャーリー・ハナム、ジャイモン・フンスー、ペ・ドゥナらバラエティーに富んだ面々。さらにはアンソニー・ホプキンス(!)が声で参加していながら、実力や本領発揮とは言えず。
では、本作は何を見るか。
言わずもながな、“スナイダー節”。
本人はストーリーの深みやキャラの心情・描写と言いそうだが、我々見る側は知っている。
ケレン味たっぷりのアクションとインパクト充分のビジュアル。
舞台となる惑星、雄大な荒野、空や宇宙空間に浮かぶ巨大宇宙船…。それらは美しくもあり、画になる。うっすら『DUNE/デューン』をも彷彿。
スナイダーの十八番、スローモーションを多用したアクションも健在。ここぞという時にスローとなり、何だかんだ決めてくれる。
クライマックスの闘いは迫力満点。
ソフィア・ブテラも『キングスメン』に続きキレのあるアクションを魅せてくれる。
ビジュアル、アクション、スケール、迫力、VFXに関しては文句ナシ。
スナイダー印の大作SFアクションをNetflix配信で気軽に見れるのは有難い。いやそれとも、劇場大スクリーンで見れなくて残念…?
強敵になるかと思われたノーブル提督が倒されて、アレ…? まあ確かに、ちょっと小物感は否めなかったが。
しかし、ラストに蘇生。次回こそ、コラたちを脅かす強敵となるか…? バックには、支配者バリサリウスが…。
コラたち戦士の動向。『七人の侍』で言うとちょうど村にやって来た所で、今回は終幕。
『七人の侍』はクライマックスの合戦が映画史上に残る。
後編では更なる圧巻の闘いを見せてくれるか…?
グンナーやタイタス将軍ら仲間となった戦士たちのドラマをより見せてくれるか…? 気になるロボット騎士のジミーは…?
コラの運命は…?
銀河の命運は…?
つまらなくはなかったけど、この前編だけじゃあ今一つ乗り切れなかった。やはり2部作総じての評価になるかな…?
勿論来年4月配信の後編も見るけど、この前編うっすら忘れてそうだから、併せてもう一度見ないと。