ザ・キラーのレビュー・感想・評価
全131件中、101~120件目を表示
一歩間違えばシュールコメディだが、ギリギリのところでスリラーになっていた
2023.10.31 字幕 イオンシネマ京都桂川
2023年のアメリカ映画(113分、PG12)
原作はアレクシス・ノレントの『Le tueur(1998年)』
ある殺し屋のミッションとその顛末を描くスリラー映画
監督はデヴィッド・フィンチャー
脚本はアンドリュー・ケビン・ウォーカー
物語の舞台は、フランスのパリ
THE KILLER(以下「殺し屋」、演:マイケル・ファスベンダー)は、依頼人のホッジス弁護士(チャールズ・パーネル)からある殺人を請け負っていた
パリのホテルに現れるはずの標的(Endre Hules)を待つこと5日目、殺し屋は準備を淡々とこなし、脈拍計にて日々の緊張を計測していた
5日目の朝、「今日現れなければ中止だ」と言われた殺し屋だったが、その目論見通りに標的は現れた
彼は娼婦(モニーク・ガンダートン)を部屋に招き入れ、女はSMのコスプレをして、標的の前に立ち塞がった
殺し屋は冷静に状況を分析し、標的に狙いを定めて発砲するものの、娼婦が予測外の行動を起こしたために失敗してしまう
慌てて手荷物をまとめた殺し屋は、用意してあったカブにて逃走し、ホッジズに失敗を告げてパリを去った
殺し屋は隠れ家であるドミニカ共和国に向かうものの、そこは荒らされていて、恋人マグダラ(ソフィー・シャーロット)の姿はなかった
慌ててマグダラの兄マーカス(エミリアーノ・ペルニア)に連絡を入れ、彼女が運ばれた病室で再会を果たす殺し屋
殺し屋はミッション失敗の報復と考え、ホッジズを含めた関係者の抹殺を考え始めるのである
映画は、緻密な計算と準備をする殺し屋が「ものすごく些細なことで失敗する様子」を描き、そこから「冷静になれ」を自問自答する「普通の人間であること」を描いていく
マグダラ襲撃の「The Brute(サラ・ベイカー)」とそのお友達をやっつけたあとは、「The Expert(ティルダ・スウィントン)」まで始末していく
そんな中で無関係だったタクシーの配車係(アルツゥーロ・ドゥバージェ)と運転手レオ(ガブリエル・ポランコ)はとばっちりも良いところだった
このあたりのシークエンスは完璧主義者の動揺で起こり得ることとして描かれていて、徐々に冷静になっていく殺し屋はクライアントのクレイボーン(アーリス・ハワード)は殺さずに立ち去っていく
一連の危機が去ったことを確認して通常に戻るのだが、冷酷に見える殺し屋にも人間性があると描いていくのは斬新だったように思えた
いずれにせよ、Netflixの先行公開なのであまり観客がおらず、この内容なら配信でも良い気はする
集中して観る方が良いとは思うが、空いた時間の有効活用の方が意味は大きいだろう
先行公開も一週間ほどなので、興味のある人はチェックリストに入れておくでOKではないだろうか
プロフェッショナルっぽいけど中途半端
2023年劇場鑑賞261本目。
ネトフリ作品で当然パンフレットないのでマイナス0.5。
仕事をしくじってペナルティを受けたので仕返しする話。
まずしくじり方がひどい。そりゃそうなりますって。その後仕返しを受けたので倍返ししにいくのですが、プロなんだからそこは受け入れましょうよ。百歩譲って二度と危害を加えられないよう反撃するにしても、明らかに巻き込まれただけの人にも容赦ないので、プロは無関係の人は巻き込まないイメージからかけ離れた器の小さい人だなぁと思いました。後お前ぜんぶ燃えるゴミになんでも捨てるな!(笑)待つ時間やたら長いけど、トイレどうしてるんだろう。
ある殺し屋‼️
デヴィッド・フィンチャー監督が殺し屋が淡々と仕事をこなす様子をスタイリッシュに描いてくれた作品‼️名もなき殺し屋が仕事でミスしたことで同居の女性が襲われ、その襲撃に関わった人間たちを冷徹に仕留めていく‼️全体を6章に分け、その前後にプロローグとエピローグを配し、各章ごとに異なるターゲットを狙う殺し屋の姿が描かれています‼️主人公のマイケル・ファスベンダーがハマり役で好演‼️クールに無表情に仕事をこなす彼の姿は観る者を凍りつかせてくれますよね‼️そして殺し屋自身によるナレーションやモノローグによる物語の進行というのも斬新だし、抑えた色調の画面も作品の雰囲気作りに一役買っていると思います‼️そしてデヴィッド・フィンチャー監督にとっても「Mank」以来の作品ですので、「セブン」「ゾディアック」「ゴーンガール」に連なる、得意とする作風に戻ってきてくれて大変うれしいです‼️
メンボーの女
完璧主義の殺し屋(マイケル・ファスベンダー)が暗殺に失敗、雇い主から受けた報復への仕返しを殺し屋が実行していく、という非常に単純(シンプル)なストーリーだ。『ファイトクラブ』のようなオチを期待していた観客の皆さんは肩透かしを食らったように感じるだろうが、元々ストーリーテラーではない映像作家デヴィッド・フィンチャーの作風を知る者はほぼ納得の1本だ。
撮りたいシーンを撮るために何十回とテイクを重ねるフィンチャーは完璧主義の映画監督として知られているが、それゆえコスパが何よりも重視されているハリウッドで煙たがられているのも事実なのである。フィンチャーを崇める人々からすれば、拘りに拘った彼の撮ったスタイリッシュな映像を鑑賞することにこそ意義があったのだが、モノクロで撮った前作『Mank』(未見)あたりからどうもその作風にも変化が現れ始めているようなのである。
殺しを実行する前に「計画通りに動け。即興はやめろ。未来の動きを予測しろ。相手に感情移入はするな。報酬に見合った以上のことはするな....」と、自分(フィンチャー?)自身に呪文をかけるように自主ルールを心の中で繰り返す殺し屋だが、フィンチャー曰く、殺しを失敗して自らのゲシュタルトが崩壊していく様を本作で描いたそうなのである。私のようないい加減な輩が見ると、何て用意周到な殺しのプロなのだろうとつい感心してしまうのだが、不測の事態が起きて次々とルールを破っていくあたふたぶりが見所だという。
感情を全く表に出さないファスベンダーの鉄仮面ぶりが、内面の動揺をわかりにくくしているとフィンチャーが思ったのかどうかは分からないが、おそらくそれを補充する意味でザ・スミスの楽曲を(後付けで)劇伴に使ったのではないだろうか。孤独を愛しながら退屈するのが滅法苦手で、心の片隅では誰かと繋がりたいと願っている寂しがりや。映画館のJBLスピーカーから流れてきたブーストサウンドは、けっしてクリアではなく、むしろ音割れしてくぐもったような音に聴こえてきたのである。
ザ・スミスを劇伴に使った理由をフィンチャーはこう説明している。「“How Soon Is Now?”を使いたい自分がいて、特に不安を和らげるツールとして曲を使うというアイディアを気に入ったんだ.....瞑想の音楽として気に入ったんだよ。面白いと思ったんだ.....ザ・スミスほど皮肉とウィットが同居する音楽のライブラリーを抱えるアーティストはいないと思う。そして、この人物がどんな人なのか、あんまりよく分からないだろ。このミックステープを通して面白いと思ってもらって、彼への入り口となればと思う」
誰にも知られずにこっそり殺すことができたにも関わらず、わざわざ大衆の面前に姿を現して、屈折した自己顕示欲を誇示するがのごとく仕事を実行する殺し屋の姿には、その実力は万人に認められているものの、(完璧主義が災いして)配信専門の映画監督に落ち着きつつあるフィンチャーのどこか鬱屈した想いが反映されていたのではないだろうか。「殺ろう(大作を撮ろうと)と思えば、いつだって殺れる(撮れる)んだぜ」ってことを周囲(特にハリウッドメジャー)に知らしめておきたかったのではないだろうか。それは映画監督としての“自負”であり、ある意味“悟り”に近い想いだったのかもしれない。
When you say "it's gonna happen now"
When exactly do you mean?
See I've already waited too long
And all my hope is gone
You shut your mouth
How can you say I go about things the wrong way?
I am human and I need to be loved
Just like everybody else does
『How Soon Is Now? 』
The Smiths より
サスペンス映画ではありません
謎の映画でした。
暗殺に失敗した男が関係者を次々に狙う、という内容のようですが、場面が代わる度に新しい人物が唐突に出てきては禅問答のような会話を交わしていきなり殺されたりします。
伏線や背景の説明が全くないので、どういう人物でどんな関係性なのか戸惑っているうちに次の場面に移ります。あとから明らかになる部分もありますが、最後まで謎のママで何とも消化不良です。
要するに物語としての流れが無視されているので当然ながらサスペンスもスリラーも感じることはできません。ただ唐突に場面が展開することがあるのでショッカーを感じると言えなくもありません。
更に、禅問答が長くてテンポが遅いですね。
妙に評価が高いようですが、まとまった物語を期待する人にはストレス過大は保証します。
一方、物語性を無視して映像として評価すれば、確かにこの監督独特の細かいカット割り、センスを感じさせるカメラワークが全編を支配しています。
一言で表現すれば物語としては破綻しているが、独特の映像センスを感じる作品、というところです。
完璧主義からは程遠い
デヴィッド・フィンチャーの映画を観る上で最初に楽しみなのは期待を裏切らないオープニング映像で冒頭からテンションも上がりながら肝心の中身には裏切られてしまった感が拭えない、娯楽性を排除しながらも所々に雑な演出が見え隠れ、全編で流れる意表を突いたようなThe Smithsの楽曲群が心地良くも断片的で気持ち悪くなる感覚、家路に着いたら真っ先にフルで聴いてストレス解消!!
入念に用意周到な序盤、哲学のように語り始める主人公が物静かな雰囲気の中で言い訳じみた単におしゃべりな男にも、ソコで失敗する!?
まるで終盤の『ジャッカルの日』から始まる本作のようで?ジャームッシュの『リミッツ・オブ・コントロール』をフィンチャーが撮ったらこうなりました?的な??
暗殺者は名ばかりで依頼主不在の復讐による殺しが大雑把に、全ては自分の失敗が招いた、劇中でこなした仕事はゼロ、何をするにしろ器用でスムーズな展開に序盤の失敗が信じられない訳で、フィンチャーの作品群の中では一番シンプルで気の抜けた、後々にカルトな作品と受け止められるかも、しれない気もするが。
殺し屋の日々がリアル
失敗も含めて殺し屋の日々がリアルでユニーク。
派手な場面はないが、淡々と緻密に描いてて面白かった。オチもいい。
フィンチャーは緊迫感ある場面を撮るのがうまい。単純なカットバックにも緊張感を漂わせるのはさすがだ。
殺し屋のモノローグが大半を占める異色作
デヴィッド・フィンチャーの新作は前作の『Mank マンク』 に続きNetflixから。
マイケル・ファスベンダーがプロの殺し屋を演じた。彼のモノローグが大半を占める異色の作品。
そう、出ずっぱりのファスベンダー‼︎
心情を語り続けるファスベンダー‼︎
彼のファンにはたまらん作品だろう。
特筆すべきは同業者を演じたティルダ・スウィントン。死を覚悟する潔さと未練の絶妙なブレンド。短い登場時間とはいえ強烈な印象を残した。
トレント・レズナー&アティカス・ロスの音楽、そして「Mank マンク」でオスカーを取ったエリック・メッサーシュミットの映像は圧倒的。
ただしフィンチャーの作品群に並べてみると一段落ちる気がする。世界を股にかけるも、主人公の目を通した閉塞した世界。自分的には面白みに欠けた。
ハロウィンの日に観る
最近あまり行かない映画館のサイトで見つけた今作。Netflixの劇場公開作品。ネトフリは登録した事ないけど、過去の劇場公開作良いものが多い。大画面良いよね。観ようかな?キラーといえば、今日はハロウィンだしマイケルやジェイソンしか思い浮かばない。
序盤向かいの部屋から誰かを狙っているが、主人公はナレーションベースで喋らない。主人公は「退屈は嫌い」的な事を言っていたと思うが、映画を観ている自分も、ほとんど変化の無い画面をずっと見せられて退屈。それもハラハラすればいいが、誰を狙っているのか分からないので、「プロなら早く撃て!」とイライラ。結局失敗。
殺し屋にモラルもないが、スマホや銃をそこらにポイポイ。素手で扱っていたのにまずいだろ。スマホのガラスだけ割れても中身どうなの? パリ警察はアホなのか? それでも主人公はプロなので偽造パスポートを沢山持っていて逃亡する。そしてロードムービーとなる。
でもターゲットを次から次へと倒すが、どうしてそこに辿り着いたのかよく分からない。殺された方もそれなりの殺される理由があったのだろうがよく分からない。
Amazonでキーの複製を難なく購入。本当のAmazonでこんな事出来るのか分からないけど、ネトフリ映画だからね。
主人公はあまり喋らない。ナレーションベース。黙々と敵を倒す。この作風を理解できたなら充分楽しめる。でも自分、この映画、元々がマイケル・マイヤーズだから😭
つぶやきヒットマンの憂鬱
主人公の一匹狼のヒットマンはドミニカの奥地に豪邸を持っていて、そこに妹と二人暮らし。ハッタリでなければ、ニューヨークには貸倉庫を5つも借りているらしい。武器や偽ナンバープレート、偽パスポートがぎっしり。今回の仕事はパリ。標的は古い立派なアパートメントの最上階にお住まいの初老の変態紳士。大柄の女王様とお泊まりだ。向かいのビルの貸オフォスには電動で上下する狙撃用のテーブルが設置されている。ぶつぶついろいろ能書き垂れながら、集中して無心になろうとしているらしいが、明らかに注意散漫なタイミングで引き金を引いて、標的の男ではなく、女王様をヒットしてしまう。集中すると視野が狭くなるなんて言ってた。言い訳にしか聞こえませんでした。ライフルをばらして、ベスパで急いで逃げる。ありふれた展開でこちらも集中が切れました。スマホ4台壊してました。最初はボスにキレて?GPS対策?って思いましたが、壊しても壊しても手品のようにまたでてくるのでした。どんぶり勘定の殺し屋。採算取れるわけありません。殺し屋向いてないです。殺しを依頼したほうも痩せこけた老紳士でした。単なる内輪揉めだったみたいです。バカみたい。
洗練されているのか間抜けなのかがよく分からない
同じ「殺し屋」の映画と言っても、「ジョン・ウィック」の対極を行くようなリアルな殺し屋の生態が描かれる。
もし、殺し屋という職業が実際にあるのなら、こんな感じなんだろうなと納得してしまうような「プロフェッショナルとしての仕事の流儀」が丹念に描かれ、興味が尽きることはない。モノローグで語られる主人公の信条や哲学にも共感できるところが多く、それを冷徹に実践していく所作やテクニックも魅力的である。
ただ、その一方で、そんな洗練された殺し屋の物語の割には、どこか間の抜けたような展開に違和感を覚えるところも多い。
まず、冒頭の暗殺の失敗が、とてもプロの所業とは思えない。素人目に見ても、あのタイミングで引き金を引くなんてあり得ないのではないか?
暗殺の元締めが、失敗した主人公を抹殺しようとする理由もよく分からない。証拠を消すためであるならば、暗殺に成功しても同じことをしたのだろうか?あるいは、あんなふうに失敗する度に暗殺者を殺していたら、優秀な暗殺者がいなくなってしまうのではないか?
主人公が、人目につかないようにひっそりと暮らしているのならいざ知らず、誰にでも分かるような豪邸に堂々と暮らしているところも不自然だし、主人公を殺しに来たはずの暗殺者たちが、主人公の恋人を痛めつけただけで、とっとと帰ってしまうところにも疑問が残る。それが、単なる警告だったのだとしても、主人公に復讐される危険性があるとは思い至らなかったのだろうか?
主人公が、レストランで暗殺のターゲットに同席するという行為も、目撃者や監視カメラによるリスクを高めるだけの暴挙だし、結局、クライアントの命を助けてしまうのも、将来に禍根を残す判断ミスとしか考えられない。
もし、クライアントの富豪が強い自尊心や猜疑心の持ち主ならば、どんな大金を払ってでも、自分を殺す可能性がある者をこの世から排除しようとするのではないか?この後、世界中の腕利きの殺し屋が主人公の命をつけ狙うようになるという、それこそ「ジョン・ウィック」のような展開が容易に想像できるのである。
それとも、このエンディングも、そんな続編を作るための伏線なのだろうか?
どこまでが本気で、どこまでが冗談なのかが分からない、そんな観客を幻惑させるような作りが、まさにデビット・フィンチャー的であるとも言えるのだが・・・
素晴らしかった
これまでの実績は暮らしぶりや各地の基地でうかがえるのだけど、いきなり暗殺に失敗して成功しているところを見ていない。描かれるのは内ゲバだ。犯人や実行犯を探り当てる展開がミステリーの構成ですごく面白い。各地の基地にある銃器や札束、何枚もあるパスポートを見るとワクワクする。
殺し屋たちが個性的だ。またそれぞれの殺害方法も違っていて面白い。あんな連中から奥さんはよく逃げ延びたものだ。主人公は殺し屋なのに結婚しているのも個性的だ。
今一つ評判がよくなかったので見るかどうか迷ったけど、間違いなく今年のベスト級だ。
プロフェッショナル仕事の流儀(殺し屋編)
「サスペンススリラー」と聞いて、多くの人が想像する内容とは違う。
ストーリー上の盛り上がり、クライマックス、主人公の葛藤らしきものはほとんどない。
そういう前提で見れば、殺し屋が淡々と仕事の準備をして、終わらせる姿は、新鮮で楽しめると思う。
本人語りのセリフを、別のナレーションに変えれば、「プロフェッショナル仕事の流儀」にも「情熱大陸」にもなりそうな映画。
ただ、序盤の退屈さだけは納得できない。
仕事に失敗する瞬間から始まっても良かったのでは?
ストーリーの始まりはそこなんだし。
ザ・キラー
2023年間違いなくぶっちぎりのベスト映画。
スタンディングオベーションも全く疑わない。
フィンチャーは一体いつまでこんな映画に挑戦的な姿勢でいるのだろうか。いつも新しい表現を模索し、切り拓き、それでいて古典的で美しい。
フィンチャーの映画としてやはり大きいのは完璧で洗練され尽くしたカット割とカメラの動かし方だろう。徹底した人物追従主義。寄るところは寄って、引くところは引く。常に全体を見せて全知的な目線ながら、アングルと光を使って感情を見せていく。とんでもないぞ本当にこれは。今のこの地球上にここまで洗練された映像と人間ドラマを描ける監督がいるだろうか。最近の流行りの監督兼脚本のような監督たちにはできない芸当だろう。
さらによかったのは終わり方。しっかりしたオチや感動物語を押し付けるようなものではなく、やはりお客さんに考えさせるような、提示だけをする清々しさ。そこに作為は全く見えない。だからかフィンチャーの映画はどんなにあり得ないテーマでものめり込める。
・『生の感情』はあったか
感情の分かりやすい爆発というと少なかったように感じた。しかし、表情が陰で曇っている分、どんな感情なのか、何を考えているのか考察しようとする感覚が生まれていた。
・『緊張感』はあったか
この映画はほとんどのシーンをこれに費やしていると言っても過言ではないだろう。完璧なサスペンス。常に緊張感に追われ、最後のエンディングまで緊張感は続く。
・『謎』があったか
主人公が狙う人物や、どこにどの人物がいるのか、すべて主人公しか知らない。それを順を追うごとに明かされていく。きっとフィンチャーの映画にどんでん返しや伏線回収を求めている人たちは落胆したんだろう。そんなクールじゃないもの、この映画にいらない。フィンチャーの映画の肝はそこではなく、社会的に悪い立場の人間が日の目を見ようと努力する人間ドラマなのだ。そこをわかっていない人たちが批判するのはわかるが、実はちゃんとエンタメとして楽しんでいる自分がいることを知っているだろう。
総じて、フィンチャーの映画を劇場で生きているうちに見れていることだけをとってもこの命を授かった価値があるというものだ。
こんな映画が作りたいなぁ。僕も頑張ろう。
職業に貴賎はない
この理念を貫き通したお仕事映画。
ちょっとした仕事上のミスを延々なじる上司にうんざりした主人公、彼独自の誠意ある対応で関係者各位に挨拶回りする話です。殺し屋でなくとも、セールスマンや料理人とかにも照応できそうなのがミソ。
果たして意識しているのかいないのか、自分にはどうしても主人公がフィンチャーをモデルにした完璧主義者にしか見えなくて困りました。そうすると終盤に出てくる依頼主はNetflix?こういう雑な見立ては作品を矮小化してつまらなくしてしまう大変駄目な見方です。しかしファスベンダーのモノローグは、フィンチャーが(自宅で奥さん相手とかに)いかにも喋っていそうな、奇妙なリアリティを感じたりもしました。
なんだろう、高級版ジョン・ウィックみたいな感じね。原作読みたいけど...
なんだろう、高級版ジョン・ウィックみたいな感じね。原作読みたいけど、原作は薄っぺらいという噂も…。
それにしても「待つ」のは大変だ。
ティルダねえさんはシルエットだけですぐ分かるな。
【今作は、自分自身を様々なルールで律しながら、”THE SMITHS”の数々の名曲を聞きながら冷酷に仕事をこなす殺人者の姿を、ヒリつく緊張感を漂わせながら、スタイリッシュに描いた作品である。】
ー 冒頭から、”THE SMITHS”のヒット曲を聴きながら、殺人者(マイケル・ファスペンダー)は、孤独感を漂わせつつ、仕事を熟そうとする。
仏蘭西で、ターゲットの帰宅を対面の無人の事務所の中で只管に待つ殺人者の姿。モノローグで彼が自身に律している事が語られる。
そして、漸くターゲットが帰宅した時に、彼は落ち着いた素振りでライフルを組み立て、”THE SMITHS”の”How Soon Is Now?"をチョイスし、ターゲットを撃つがターゲットの前に現れたレザー服に身を固めた娼婦に当たってしまう・・。-
◆感想
・殺人者は仕事にしくじった後に、ドミニカの隠れ家に戻るが、異変を察知し室内に入ると割れたガラスが散乱している。
ー 殺人者は同居の女性が収容された病院に行き、彼女を見舞う。
”THE SMITHS”の”Girlfriend In A Coma"が流れる・・。ー
・その後、彼は隠れ家を襲った男女を乗せたタクシー運転手を突き止め、情報を聞き出し躊躇なく、射殺。
・そして、飛行機に乗り”仕事”の斡旋人”のホッジス弁護士の事務所に清掃員に紛争し、入り込み、ホッジス弁護士から男女の情報を得ようとするが拒否され、殺害。秘書の中年女性が情報を知っていると言い出し、彼女から情報を仕入れコレマタ、殺害。
ー ホッジス弁護士の事務所に入り込むときの、運送屋の後について行き事務所の扉が閉まる時間を数え、運送屋が帰る際にカウントしながら、ドアが閉まる直前に足を入れ込むシーン等は、ナカナカである。
そして、彼が律している事の一つ”情に流されるな・・。”を忠実に実行する姿。-
・得た情報を基にコレマタ飛行機で男が住む国に飛び、壮絶な格闘で倒し、更に飛行機でエキスパートの女(ティルダ・スィントン)が住む寒き国に行き、彼女がレストランに入った際に、彼女の前の席に座る殺人者。
エキスパートの女は、複数のウイスキーをテイスティングしながら、落ち着き払い、男に対し”熊と猟師”の話をする。
ー 緊迫感が凄いシーンである。ティルダ・スィントンの存在感も抜群である。そして、二人は外に出て、殺人者は彼女を躊躇なく射殺する。-
・そして、彼は再びいつものように全く違う名前とパスポートを飛行場のカウンターで提示し、殺害案件を出した顧客の男の家に、難なく忍び込む。
ー ココも、緊迫感が凄い。だが、殺人者は男に対し”簡単に入れる事を示したかった。次は・・。”と男を威嚇し、その場を去るのである。-
<ラスト、彼はドミニカの隠れ家に戻り、今までに見せた事のない柔和な表情で、デッキチェアで寛ぐ怪我を癒す同居の女に飲み物を作り、自身もデッキチェアに仰向けになりながら、陽光を浴びながら寛ぐのである。
今作は、”THE SMITHS”の”Shoplifters Of The Word Unite""This Charming Man"など多数の名曲を随所で流しながら、一人の殺人者の仕事のミスにより行われた事に対し、自身を律する多数の決め事に従い、多数の名前や幾つかの隠れ家、倉庫に隠してあった武器を駆使して報復する姿をヒリつく緊張感を漂わせながら、スタイリッシュに描いた作品である。>
ミニマル
なんともミニマルな物語。
暗殺に失敗する顛末から、逃亡、復讐まで丁寧に描写する。失敗した人の哲学を聞かされてどうするのかとは思うが…
いろいろな名前でいろいろな場所にいると、アイデンティティが揺らいでくる感じがする。それが狙いなのかもしれないが。
フィンチャー作品のご多分に漏れず画面が暗いので、やはり配信よりは劇場向き。
全131件中、101~120件目を表示