「頭の中では、口数の多い殺し屋」ザ・キラー 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
頭の中では、口数の多い殺し屋
何よりも《プライド》を傷つけられて、
自分の【実力】を見せつける殺し屋を描く。
上級顧客から依頼された暗殺に失敗した殺し屋
(マイケル・ファスベンダー)が、その結果として命の危険が及ぶ。
その相手を先回りして殺して行くストーリーです。
ファスベンダーは一匹狼の孤高の殺し屋。
過去に失敗は殆どなかった。
その自分がしくじった。
男にとって非常にプライドの傷付いた案件で、
そのプライドを取り戻すためにも、
また自分の身の安全のためにも、男は命懸けの戦いに挑む。
映画は殺し屋のモノローグをナレーションのようにして進みます。
殺し屋は哲学的な思考の持ち主。
第1章【暗殺】
《パリの高級アパルトマン》
ターゲットは年寄りの金持ち。
かなりの距離からスコープ付きライフルで照準を合わせる。
部屋には娼婦が呼ばれていて、引き金を弾いたその時、
女が動く・・・そして失敗。
第2章【隠れ家=ドミニカ共和国】
殺し屋が隠れ家に近付くとただならぬ様子。
鏡は割られ家が荒らされている。
男は病院へ向かう。
男の恋人が瀕死の重症で横たわる。
《命懸けで秘密を守った》
《クチを割らなかった》
恋人は告げる。
犯人を乗せたタクシーを見つけて、
殺し屋が男女2人組で、
女は金髪の綿棒のようなスタイル・・・と聞き出して、
罪もないタクシー・ドライバーを殺す。
第3章【ニューオリンズ】=元締めのホッジス弁護士。
この場面の殺しは熾烈で残酷。
ドミニカで恋人を酷い目に合わせた実行犯2名と、
パリの暗殺を依頼したクライアントの身元を知るため。
ホッジスの秘書の家に資料はあった。
またしても罪もない秘書が殺される。
《彼女の名言》
「身元不明の死体はイヤ・・・生命保険が家族に下りないから》
第4章【フロリダ】=実行犯1の男
この章は過激な殺しとアクションシーン。
第5章【ニューヨークの①】実行犯2=綿棒の女
綿棒の女を演じるのはティルダ・スウィントン。
高級バー&レストランで飲食中。
殺し屋のファスベンダーの殺意に気付いた
《綿棒の女の名言》
「こんなことなら毎食ハーゲンダッツを食べとくんだったわ」
第6章【ニューヨークの②】クライアント
いよいよ最終章
パリの殺人を依頼したクライアントはかなりのVIP
この映画最大のセキュリティ。
このクライアントの部屋にファスベンダーは侵入に成功。
顔を晒す危険を承知で会話する。
それは脅すため。
どんなに厳重なセキュリティでも
「俺は殺せるのだ!!」と見せつける為だった。
男の名言。
「金持ちを殺すと警察が騒ぐ」
モノローグの多い映画でした。
孤高の殺し屋のルーティンや、自分に暗示をかける数々の言葉。
スタイリッシュな映像と音楽。
ファスベンダーも渋くて良かったです。
ほんと、かつての“世界を股にかけた殺し屋”ならば巨悪を倒してくれたでしょうね。本作は、世界を股にかけた殺し屋=グローバルが当たり前の現代人。頭の中はカッコいい言葉でいっぱいなんどけど、無意識のうちに均一化されているから薄っぺらい。根っこの強さよりビジネス的な思考が正解だと思っているダサさ。クライアントを殺さなかったシーンによく表れていて、さすがフィンチャーと思いました。