「最初にボタンを掛け違えた殺し屋の辿る皮肉な運命」ザ・キラー 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
最初にボタンを掛け違えた殺し屋の辿る皮肉な運命
パリにある工事中の部屋に商売道具を持ち込み、向かいにある豪華ホテルの一室に出入りするターゲットを狙う1匹狼の殺し屋。彼には独自の哲学とルーティンがあって、それに従えば目的は達成できる、はずだったが・・・
デヴィッド・フィンチャーの最新作は、かつて観てきたジャンル映画のパターンからはそれ程は逸脱せず、最初にボタンを掛け違えたヒットマンが負のスパイラルに巻き込まれていくプロセスを、ハイスピードで描いていく。意外な展開がないわけではないが、それも観客はほぼ織り込み済み。殺戮シーンの残虐さはコードぎりぎりと言ったところだろうか。
何しろ、マイケル・ファスビンダー演じる主人公、ザ・キラーの、仕事の流儀に関するモノローグが延々と続く。台詞そのものは少ないのに、字幕を追うのが忙しいというトラップだ。
しかし、洗練されたタッチはやはりフィンチャーならでは。終始ダークな色調、やるだろうと思うコンマ数秒前に実行される殺人、殺し屋という職業に纏わりつく皮肉な運命にはピッタリな、イギリスのロックバンド、ザ・スミスの乾いたサウンドetc。
以上の見どころを考慮すると、やっぱりこれは劇場向け。そこにフィンチャーの真意があるのかもしれない。
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