ザ・キラーのレビュー・感想・評価
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静謐さの中に流儀と陶酔がみなぎる
どこかアラン・ドロン主演『サムライ』を思わせる色味とストイックさと殺し屋の流儀を漂わせながら、フィンチャー最新作は細部まで精密に計算され尽くした構造物たる映像世界をファスベンダーのモノローグがゆったりと浸していく。彼に名はない。表情もない。この男の顔や体つきはうちなる感情をストレートに映し出すことなく、飄々とした掴み所のなさを印象付ける。いつものフィンチャー作品と同じく、矢継ぎ早に何かが起こったり、目くるめく展開で観る者を高揚感に巻き込んだりもしない。本作の大部分は静寂だ。しかしそれでも、この映画には切れ目なく電流が流れていて、我々の身と心は気づかぬうちにすっかり感電して、それが心地よいとさえ感じている。この不思議。陶酔。「対価に見合わないことはやらない」と彼は言う。だがそもそも復讐とは最も感情的な行為であり、金銭的な対価を伴わない。これは彼が彼なりの作法で、感情を激烈に燃やす物語なのだ。
Killah Pomp
Fincher crafts a lone dark oddysey in The Killer. A stone cold Fassbender presides as the freelance hitman on an international sleuthing rampage to find who brought personal indemnity to his execution slipup. The grisly spirit of Se7en and Mindhunter toll in this determined parallel to Michael Mann's Thief. Exquisitely filmed and stylishly paced, it's a bonafide portrayal of capitalistic evil.
自称・成功率10割の殺し屋は意外とドジ。
デヴィッド・フィンチャーの真意は知らないが、これは『ゲーム』以来のコメディ作品と見た。ただ深刻そうな空気とクールな劇伴のせいで、日本ではなかなかコメディと認識してもらえないタイプだと思うけれど。
とにかく主人公がモノローグで喋っている。おそらく自ら編み出した、もしくは誰かの受け売りなのかも知れないが、殺し屋としての仕事の心得を心のなかで繰り返し唱え、身体を鍛えたり瞑想したりすることで、集中力を高めている。にもかかわらず、このひとすごい失敗をするのだ。
それも、予期せぬ事態が発生して、とかでもない。われわれ殺しの素人でも、いや、そこは慎重にやったほうがいいんではないかい?と問いたくなるような失態を晒し、それでも自分を必死に落ち着かせ、自分が突き詰めてきたお仕事哲学から逸れないように、ひとつひとつ手を打っていく……はずが、やっぱりこの人、ドジだ。ドジだからこそ、自分に完璧を求め、必死でお題目のように自分に課したルールを唱え続けているのかも知れない。
決して無能でもないけど、伝説の殺し屋でもない。ある意味、失敗もするけどマジメな仕事人間が、自業自得で自分が敷いたはずの道から外れていく。スリリングだけどどこか間抜けな、そして、似たもの同士の同業者に出会ったりもして、殺し屋界隈も大変だなとちょっと同情までしてしまう。決してひとつのジャンルで括れるものではないが、自分的には100%いい意味でヘンテコなブラックコメディでしたよ。
最初にボタンを掛け違えた殺し屋の辿る皮肉な運命
パリにある工事中の部屋に商売道具を持ち込み、向かいにある豪華ホテルの一室に出入りするターゲットを狙う1匹狼の殺し屋。彼には独自の哲学とルーティンがあって、それに従えば目的は達成できる、はずだったが・・・
デヴィッド・フィンチャーの最新作は、かつて観てきたジャンル映画のパターンからはそれ程は逸脱せず、最初にボタンを掛け違えたヒットマンが負のスパイラルに巻き込まれていくプロセスを、ハイスピードで描いていく。意外な展開がないわけではないが、それも観客はほぼ織り込み済み。殺戮シーンの残虐さはコードぎりぎりと言ったところだろうか。
何しろ、マイケル・ファスビンダー演じる主人公、ザ・キラーの、仕事の流儀に関するモノローグが延々と続く。台詞そのものは少ないのに、字幕を追うのが忙しいというトラップだ。
しかし、洗練されたタッチはやはりフィンチャーならでは。終始ダークな色調、やるだろうと思うコンマ数秒前に実行される殺人、殺し屋という職業に纏わりつく皮肉な運命にはピッタリな、イギリスのロックバンド、ザ・スミスの乾いたサウンドetc。
以上の見どころを考慮すると、やっぱりこれは劇場向け。そこにフィンチャーの真意があるのかもしれない。
2度見たら、1度目よりも面白かった
暗殺者モノとして、かなり特徴的だったことは覚えている。よくある凄まじい戦い続きというアクションではなく、正義感の強い主人公でもなく。
クスリと笑う瞬間もなくて、主人公に感情移入することなく、主人公を淡々と観察している気分になる映画。
日本語訳だと「準備しろ、予測しろ、即興はするな」と暗殺するタイミングで唱える。
「即興はするな」が心に残る。
アクシデントが生じた時に普段と違うことをして、力が出ること(火事場の馬鹿力のような)もあれば、本来の力すらも出せないで失敗することもある。
この言葉は主人公が鍛錬して自分の型に自信がもてるから唱えられる言葉なのだと思う。
神頼みをする私からすると、かっこいい生き様にも映った。
私には冗長で退屈でした
スタイリッシュというより無味乾燥。
ダークというより殺伐。
主人公の冷徹で哲学的なモノローグで始まるが、実際にはいきなり凡ミスをかます。その後の行動もバタバタしてばかりで、いまひとつ「プロ中のプロ」に見えない。なんと言っても、敵の存在感が薄くて盛り上がらない。
制作陣は「これが殺し屋のリアルだよ」という意図かもしれないが、それを知って何になるのか。主人公は独白で「この稼業は(待ち時間が多く)退屈だ」と語っていたが、私には作品自体が退屈だった。
オープニングだけ面白い
オープニングが良い。語りだけで日常や殺しに対する心構えや、ストイックな一面が分かる。標的を仕留めるまでの時間をじっくり描写するのは珍しい。他の殺し屋映画だと見たことないかも。
始まりが良かっただけに、中盤以降はただ主人公が無双するよくある復讐者になって残念。どんな相手にも情けをかけず、徹底して殺しをする姿勢はやりすぎで怖い。
全編通して台詞少なめ、主人公の語りメインで進める手法は斬新だった。ストーリーを楽しむというより雰囲気を楽しむような映画かな。
足跡を残さないための細かい配慮が秀逸!
デビッド・フィンチャー監督といえば、
私はブラピ&ケイト・ブランシェットの『ベンジャミン・バトン 数奇な運命』
がめっちゃ好きで、2020年の『Mank マンク』も観て、
で、本作。
暗殺者が暗殺者を追いつめていくストーリーですが、
これがめちゃめちゃ面白い!
すごくスリリングですし、どういう追いつめ方をしていき、
どう暗殺するのか、ドキドキの展開です。
ある暗殺の失敗により、主人公の大切な人を傷つけられてから
主人公に火がつきまして、そこから怒涛の展開で
追いつめていくのですが、足跡を残さないための細かい配慮が
実に唸るような仕掛けだったりして、
最後まで集中力が途切れず鑑賞することができました。
主人公の心の声が雑学を結構な割合で話していて、
ウケました。
Netflixを観ることができる環境にある方は、
是非ともご覧いただきたい作品です。
超オススメ!!
あれっ、こんな展開なの…とても評価の難しい作品
鬼才デヴィット・フィンチャー監督作品ということで鑑賞。
実は個人的には本監督作品で特別に好きな作品は今のところないのだが、非常に評価の高い監督にて毎回期待してしまう。しかしというかやっぱりというか、本作も個人的にはやはりいまひとつ。特段複雑なストーリーでもないはずなのに、なぜか複雑に撮られている感じがするのが鼻についてしまう。
そして、オープニングからの「心の声」設定が、まさかラストまでそのままの調子で続くとは。この繰り返される自問自答は、なんとなく観ていて疲れてしまう。キラー業界ではとても大切な教訓だとは思うのだが…一般人にはちょっと共感しにくい。
こういう作品をしっかりと評価できれば自身としてもひと皮剥けると思うのだが、飾らずレビューするとなるとどうしても高評価しかねる。
暗めの映像が大半の中、時たま映し出されるきれいな映像や、場に削ぐわぬほどのポップな音楽を内外で絶妙に出し入れする技術はとても印象的だったが、それにしてもこのまったりとしたハラハラ感の連続には緊張感を保てない。
本監督作品がとても評価されていることは重々承知しているのだが、それをうまく享受できないのはとても残念だ。
面白かっ…た?
途中から単調に思えてくる?!
殺し屋作品にしては地味
コメディ?
失敗しないんです?
新宿ヨドバシカメラで競馬の写真をプリントしていたら映画に遅れる所だった。ヨドバシカメラからシネマート新宿まで走る。年寄りにはしんどい。そんな状態でシネマート新宿で「ザ・キラー」を。
Netflixの配信前劇場公開、最近はアカデミー賞でも候補になったりもするから油断ならない。監督はデビット・フィンチャー。
自称成功率10割の殺し屋がフランスでの狙撃に失敗して追われる身に。ドミニカの豪邸にいた妻は襲われて病院送りにされ、殺し屋の反撃が始まる。
成功率10割で高報酬を得ているからか、結婚して豪邸を持ち、複数のアジトや多数の名義のパスポート、クレジットカードを所有していてそれを使って反撃する。
用意周到の割にドジな所があり、ちょっと微妙な殺し屋だ。
「ジャッカルの日」みたいにその狙撃がクライマックスならともかく、狙撃に失敗して物語が動くのに、映画的には、周到な準備をして機会を待つ最初の狙撃までが長過ぎる(上映時間1時間58分)。おまけに「私は失敗しない」と言いながらドジって失敗してるし。
妻を襲撃した犯人を追い詰める後半は見事な所もあるだけに、ちょっと冗長に感じる導入部がマイナスだな。
ゴルゴ13なら、あんな狙撃の失敗はしないと思った。
ザ・キラーって殺し屋も愛の無いAIですむ♥
『東京の朝はハム音』って、『日本は電線の国だから』と今はなき親父が良く言っていた。昔は日本へ戻ると煙草臭かった。
どこかの国のアナウンサーだって、最近はAIに移行していると聞く。
ザ・キラーって殺し屋も愛の無いAIですむ♥
究極の肉体労働だからね。
戦争もバーチャルな世界使ってAIでやればいいのにね。
しかし、ここまで電脳(僕の時代はそう言っていた)で縛られているのに、殺し屋は生き延びられる。それでいて、個人情報の露営にすったもんだする。
PLAN75の対象者や僕みたいなク◯ジジイにはそれだけでも殺されそうだ。
女性ならば、かっこよかったが。また、『裏窓』の様な話だと思ったら、予想外のロード・ムービーだったりして、がっかりって所かなぁ。
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