劇場公開日 2023年4月28日

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「モンゴル版「プラダを着た悪魔」」セールス・ガールの考現学 えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5モンゴル版「プラダを着た悪魔」

2023年5月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

原子力工学を学ぶ大学生のサロールは、怪我をしたクラスメイトから、彼女が働けない間の代理としてアダルトグッズ・ショップのアルバイトの話を持ち掛けられる。とくべつ仲の良い友だちではなかったが、高給なうえに簡単な仕事だと説かれ、一ヶ月だけ働くことに。そこは、大人のオモチャが所狭しと並ぶ、街角のビルの半地下にある怪しげなショップ(公式サイトより一部抜粋)。

なんとなく生きている主人公のサロールと、享楽的に生きるアダルトショップオーナーのカティアとの交流を、「性」「生」「男女」「愛」「人生」などをテーマに、穏やかな時間の流れ、妙にすんなり溶け込むモンゴルロック、時折挟み込まれるシュールなコメディで描く。

外面も内面も着飾らない、いわゆるリケジョなサロールが、カティアとの関係やアダルトグッズ・ショップでの仕事を通じて徐々にきれいになっていく様は「プラダを着た悪魔」のアン・ハサウェイを彷彿とさせる。そして、それと並行して、実は放埓に見えたカティアがサロールとの交歓で、囚われていた過去から緩やかに解放されていく様も美しい。

周りの大人たちから見聞きしたことを、サロールがひとりでホテルを借りて、見よう見まねでやってみたが結局うまくいかなった場面と、早い流れの川を前に、カティアが呟く「幸せとはそれだけでは存在できない」ということばが静かに符合する。自立した人間が、だれかと生きていくことで幸せを得るという、愛おしい矛盾が印象的。

モンゴルって都会なんだな、モンゴルの家ってドアチャイムがないんだな、てか、中国ではなくロシアの影響を色濃く受けているんだな、などなど、あまり馴染みのないモンゴルという国に思いを馳せられるのもおもしろい。サロールを演じた女優さんの名前はたぶん永遠に覚えられない(バヤルツェツェグ・バヤルジャルガルさんというそうです)。

えすけん
Mさんのコメント
2023年6月6日

穏やかな時が流れる映画でした。

M