「期待以上ではあるけれど」アイドルマスター ミリオンライブ! 第1幕 I.Kirinoさんの映画レビュー(感想・評価)
期待以上ではあるけれど
結論から先に言うと、ファンとしては非常に満足している。
昨今アイマス界隈で巻き起こっているカルト的盛り上がりに私も混じっているくらいだし、上映前に感じていた懸念が杞憂に終わり、安心すら感じているというのも事実だ。
ただ、期待ゆえに残念だった部分が存在し、そして何よりミリマスを知らない友人に積極的に勧められる作品ではないというのが私の感想だ。
この先話がとっ散らかっているので、読みたい人は読んでほしい。
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まず、映画というよりは1クールのアニメとしてみたときの感想(というよりは印象)になるが、少なくともキャラクターの描写についてはそこまで心配することもないのかなと感じた。
過去に放送されたソシャゲ原作のアニメでは、そのキャラクターの多さを持て余し、キャラクターの掘り下げが不十分に終わりなおかつ本筋も描ききれないという、ファン目線で見ても「何だこれは」と言わざるを得ない作品が多いように思えた。
映画館に向かう前、もっと言うと映画館に着いてからもその不安は拭えなかった。しかしながら、1クールのアニメの1/3でこれだけ描けているのであればまあ悲観しなくても良いように感じた。
一番の懸念点として、初めてミリオンライブという作品に触れる人にとってはキャラクターが多くてわかりにくく、各キャラクターの印象を深められないまま1クールが終わってしまうのではないかという点がある。また、4話で何となく悪者のような、小学生に立たせるには酷な立ち位置となった桃子のフォローやバックボーンの掘り下げがこの先しっかりと行われるかというのも少し気になる点ではある(劇中で瑞希が手品を失敗することで諭すシーンはあったが)。
ただ、少なくともファン目線で観ればモブキャラで終わったようなキャラが割合として少なく、残り8話もあればそれなりの掘り下げもできるのではないだろうか、と比較的楽観視している。ファンが観て「何だこれは」となっていない時点で現段階では最大の難所は越えられているのではなかろうか。
アニメーション表現については非常に素晴らしいと思う。
確かに3Dモデリングで描かれたキャラクターたちは、静止画として見ると若干腕が長いような、アンバランスな感じがする。一方で、アニメーションとしてガシガシ動かしている分にはあまり気にならなかった。
特に素晴らしいと感じた点としては、キャラクターがとにかく動く点だ。
作中では茜が最たる例だろう。上手い表現が思い浮かばず歯がゆいが、とにかく動く。くるくる回るし、どこからともなく飛び出してくる。そのうち足をぐるぐるの渦巻きにして走るんじゃないかと思うくらいには動く。
アニメーションを魅力的に見せるための、描写上のある種の「嘘」というのが、3Dモデルという媒体に非常にうまく落とし込まれていたように感じる。
ただ棒立ちにするのではなく、ちょっとした揺れのような細かな表現が入っていたのも大きいだろう。同じ3Dモデルでも、ゲームのミリシタから見ると非常に大きな進化であるように感じた。
全体的なストーリーとしては、まあいつものアイマスのアニメだな、という印象である。
描きたいテーマも分かるし、それを扱う上での舞台装置も納得がいく。目標に向かう途中で直面する困難や仲間との軋轢、和解___ここまでいつも通りというか、良い点も悪い点もしっかり引き継がれており、既視感が拭えなかったというのが正直な感想である。
ここで言う悪い点というのが、「はたして和解という大事なシーンがこんなにふんわりした感じで良いのか?」という点である。
前回の劇場版アイマス「輝きの向こう側へ!」で言うなら志保、今作で言うなら桃子や紗代子、可憐はそれで本当に納得がいっているのか?と気になってしまう。正直渦中の人の気持ちが吐露されても、じゃあみんなで、できるところまで頑張ってみようか?までは行っても、予算が増えるわけでも、レッスンをもっとこなしてからステージに立てるだけの時間的余裕ができるわけでもない。根本的な解決がなされていないのに不満を出した本人たちはそれで良いのか?と感じてしまう。
私個人としてはオーディション最中、オーディエンスが未来、静香、翼の3人が中心となってステージに立っているような集団幻覚を見るシーンはまあ一種の表現として納得行く。しかし、重要な和解シーンの雑さ、粗さというのは少し気になる。
また、プロデューサーと未来がぶつかるシーンも少し冗長に感じる。3回繰り返すことで運命のような、そういうものを描きたいのは分かるが、ただぶつかるだけのシーンが1回あたり20秒近く流れることでリズムがだれてしまっている印象がある。
楽曲は文句なしの100万点だ。
そもそも私がミリオンライブというコンテンツに触れているのが楽曲目当てなので最初から非常に期待してたが、この点については大変満足している。
主題歌の「Rat A Tat!!!」は、原作ゲームに触れ、これまでの楽曲に触れているからこそ感じる「良さ」があるように感じた。
また、要所要所で過去にリリースされた楽曲やそのアレンジ版がBGMとして使われている点についても、ファンとして「おっ」となり嬉しくなる点だった。
総合的な評価としては、未来、静香、翼の3人に焦点を絞って観るのであれば現段階では非常にまとまった良い作品だと感じた。1ファンとしては正直期待以上だ。
映画館を出てから、帰りの電車でも熱い余韻を感じていたし、大変満足している。
しかし鑑賞から日をおいて冷静になり、他のキャラクターにも視野を広げてみると少し残念な点が見えてくる。
今回は話の粗などが気になりだす前に続きを観ることができたが、はたして週1のアニメになったとき、昨今のストーリーが凝ったアニメに慣れた新規層に受け入れられるか?というのは少し疑問である。
1クールのアニメとして観た時の懸念はさておき、少なくとも、ミリマスのミの字も知らない友人に、劇場での鑑賞を手放しで勧めることはできないと私は感じている。