アンダーカレントのレビュー・感想・評価
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ミステリーかと思いきや
黙って消えるな
過去に自分でもわからない怖い過去を持つ
かなえ。
大学時代の同級生だった夫悟は一年前から失踪。
父のあとを継ぎしばらく休業していたが、
やっと再開し始めた銭湯を切り盛りするかなえの元に堀という謎の男が雇ってくれ、と来る。
結局、自分でも認める虚言癖の悟に上手く利用されつつあったのが、良心の呵責でかなえを騙しきれずに出たのだろう。 唯一の誠意だ。
かなえが将来の生活設計を語っても心ここに在らずな悟。もうかなえを騙し続けるには無理があると感じたのだろう。
堀は、かなえの子供の頃の友達さなえの兄だった。かなえは、そのさなえにまつわることで
幼い頃から自責の念に苛まれ怖い夢を見るのだ。
自分であれば良かった、と。
堀は事件後、両親と共にこの地を去るが、両親共にショックから抜け出せず、悲惨な生活だったようだ。その中で育って来た堀の心の変容は‥。
故意に避けて来た土地だったがかなえを見かけたことをきっかけに、近づくことになる。
かなえに妹の成長した姿を重ねつつ、楽しかった子供の頃の生活に触れるように住み着くのは、それまでの人生が耐えがたかったからだろう、もうホッとしたい気持ちがあったのではないか。
悟には見切りをつけて新しい生活をスタートさせるかなえと堀の姿に希望を感じる。
蛇足❓
•じいさんの髭が湯に浸かっている。髭がきれいか凄く気になった。
•作業終わったからと従業員が一番風呂に入る?
•バスからかなえとわかるかなぁ?
•嘘つき悟は本当のことを言えない。
•悟がかなえにひっぱたかせてと言われて、うん、と言ったけど、ごっついオッサンやったら、うん、て言うたかなぁ?
終わり方が絶妙
原作は未読で鑑賞。
人はどう見せたいか意識して動く部分と見せないように隠す部分、相手の望む姿になったり、自分でも気が付かないままに持っている部分が,混ざり合っている。同じ人を見てもみる人によってどう見えるか違うこともある。だから、人をわかるというのは難しいのだろう。この映画はそれをいろんな方法で表現していて興味深い。
最後に井浦が早苗の妹だと告白した後画面が切り替わり、真木が1人で犬の散歩の場面になる。ちょっと残念な気持ちになったところで井浦が後を歩いて行く。そこにちょっと暖かさがあって,今泉監督らしいなぁと思った。
心の底流とは
原作は月刊アフタヌーン誌で2004年に掲載された豊田徹也氏の漫画だそうです。
『ほんとうはすべて知っていた。心の底流(undercurrent)が導く結末を。
夫が失踪し、家業の銭湯も手につかず、途方に暮れる女。
やがて銭湯を再開した女を、目立たず語らずひっそりと支える男。
穏やかな日々の底で悲劇と喜劇が交差し、出会って離れる人間の、充実感と喪失感が深く流れる。
映画一本よりなお深い、至福の漫画体験を約束します。
「今、最も読まれるべき漫画はこれだ! すでに四季賞受賞作で確信していたその物語性と演出力に驚く。豊田徹也は心の底流に潜む、なにかの正体を求めるように静かに語る。」──(谷口ジロー)』
(アフタヌーン公式アンダーカレントより)
もともと映画のようだと評された漫画で、BookliveにもAmazonにも、雰囲気で乗り切ることなく、リリシズムを支える芯のような何かがある──といったレビューが並んでいました。
逆に映画は雰囲気で乗り切っていました。
雰囲気で乗り切ったように見えるのは「人をわかるってどういうことですか?」という命題に、話も気分も達していないからです。とうていそんな哲学を掲げる映画にはなっていません。
かなえは銭湯を経営するただのおばさんですし、探偵はたんに怪しいだけで、堀さんは何を哀しがっているのか解らず、失踪したかなえ旦那はたんなる統失にしか見えません。
もしそう見えないのであれば、よく見る俳優たちなので、善意でイメージ補完したのだと思います。ただしさいきん(2024年)かなえ役女優に炎上さわぎがあり、併せてアンダーカレントの評価点も下がった気がします。イメージだけの映画なのでイメージが大事なわけです。
映画のようだ──と評された漫画を映画化するのは、果敢でもありますが、絵コンテが出来上がっているようなものですから手っ取り早いとも言えるはずです。原作漫画の完成度に依存した映画だと思いました。でも魂はありません。
韓国映画のはちどり(2018)で14歳のウニは中国語塾に通っています。あるとき塾で大慧語録の相識満天下/知心能幾人を習いました。『この世に知っている人は大勢います。だけどほんとに理解しあっている人はいますか』という意味だそうです。そのくだりは切実で心にしみました。が、この映画の命題「人をわかるってどういうことですか?」は愚かなポエムにしか聞こえません。
漫画の世界観を映像化したことで、ごっそり魂が抜け落ちたという感じでした。
朝食が旅館のような焼き鮭と卵焼きがきれいに並んで正座してご飯味噌汁おかずを三角食べしていました。傍らに炊飯器があっておかわりはどうですかとかぬかしてました。揃いの食器で箸置きを使うようなごく丁寧な食事風景を日本映画でひんぱんに見かけますが、個人的には不自然だと思います。
そこにテーマがあるんじゃない
黄色い風船
悟。お前のウソはどう考えてもダメだろ。
最近派手な映画やドラマばかり観て少しお疲れというか、飽きたからあまり体温の上がらない映画をチョイス。ミステリー要素もあり、登場人物たちへの感情移入もあり、お兄さんの告白シーンは普通に泣きました。飽きずに淡々とみられました。井浦新さんが俺的にはツボでした。良い人過ぎ。あと、あの誘拐された女の子が無事で本当に良かった。子供連れ去りの件は本当にしんどかった。無事だと分かり心底ホッとした。それだけ映画に乗せられているという事で役者さん達の凄みを体感した。ってかほんと連れ去りとかする奴ら許せん。取っ捕まえて拷問して殺してやりたい。土に埋めてアソコに木を植えてやりたい。あれ?何の映画観たんだっけか?笑 脳がマッドマックスになってる。フュリオサ!
人間再生の素晴らしさ
演者がみんないい
他の作品で見たことないような演者さんたち
本当に良かった!!
オーディションかな。
犬が芸達者、めちゃめちゃかわいかった。
ドローンカメラからのアングルでポーズ変えたのとかすごすぎる。
小さいカエルも良かった。
カエルをかわいいと思ったの初めてかも。
いつも側にいる人が急にいなくなるのは、
悲しいよね、本当に。とても
最後、堀さんもいなくなろうとして
たばこ屋のおじさんがきっかけでやめて戻ったラストは
光があってとてもいいなと思った
相手や自分自身の“アンダーカレント”を知った時…
人が分かるって、どういう事ですか…?
劇中の印象的な台詞。
家族や友人、恋人など親しく一緒にいたり、長く共に暮らしているが…、本当に相手の事を分かっているのか…?
たまに俺は相手の事をよく知っている。人を見る目がある。…なんて抜かす輩がいるが、人の心読めるのかよ? どんだけ傲慢なんだよ?
人は友情や絆や愛で結ばれるが、結局は赤の他人。血が繋がっている家族でさえも。
長く付き合っているのに相手の事を真に知らない。初めて知る事も。
その為人は、何かしらの嘘を付く。が、それは決して相手を欺こうとしたり、貶めようとしたりではない。相手の為に。
まさに本作はそれを象徴。
あなたは人を分かっていますか…?
この問いは同時にこうも聞こえた。
あなたは自分を分かっていますか…?
かなえ。
父亡き後休業していた家業の銭湯を継ぎ、再開。夫の悟と共同経営で、これからや子供の事も考えていたが…、突然夫が失踪。
心当たりナシ。…いや、夫が何か話したげだったのを私が気付けなかった…?
そんなかなえが時折見る夢。水の中に没していく。
ある朧気な記憶も思い出す。何者かに首を絞められ…。
子供時代、かなえには仲良しのさなえがいた。背格好も似てて、唯一違うのは髪の長さくらい。
ある日さなえは不審者に首を絞められ殺され、沼に沈められた。
ショックと自責から記憶が曖昧。
首を絞められるイメージは私が殺されば良かった…? それを望んでいる…?
親友を亡くし、夫がいなくなり、私は何を望んでいる…?
堀。
銭湯組合の紹介でやって来た男。住み込みで働く事に。
口数少ないが、真面目。謎めいているが、男手失ったかなえにとって、少しずつ心開ける存在。
黙っていなくならないで下さい、とまで。
そんなかなえに対し堀は、何処か微妙な距離感。
組合の紹介ではなく、本当は自分から働きを申し出たという。
何故、この銭湯を…?
この町やかなえとは全くの無関係ではなかった。
かつてこの町に住んでいた。妹がいた。妹は殺された。
堀は、さなえの兄だった。
以来この町を避けていたが、ある時たまたま通り掛かり、かなえを見かけ…。
妹と双子のようだったかなえに亡き妹の面影を見たのか…?
自分は何を求めていたのか…?
悟。
かなえの失踪した夫。
かなえが友人の紹介で雇った探偵の調査で、驚きの事実を知る。
出身地は別。幼い頃に交通事故死と聞かされていた両親は最近まで存命だった。
嘘を付いていた…?
探偵が居所を見つける。会いに行く。
再会。
夫の口から話される失踪の理由、自分の人生。
ずっと嘘を付いて生きてきた。その嘘を隠す為に、また嘘を。
それがバレそうになると姿を消し、また別の地で嘘を。
そんな時出会ったかなえ。彼女にだけは本当の自分を明かそうとしたが…、結局出来なかった。
かなえとの将来に口をつぐんだのもそれ。
嘘で塗り固め、嘘から逃げ、また嘘で塗り固め、また嘘から逃げ…。
自分は何者…?
自分自身に彷徨うかのような3人。
その孤独な心、本心を知られたくないが為に、自分の心を偽る。
脆く、今にも壊れてしまいそうな心を守る為に。
相手に合わせ、相手を思いやる為に。
それは優しさなのか、哀しみなのか…?
真木よう子、井浦新、永山瑛太が複雑な役所を、繊細かつ巧みに熱演。
胡散臭そうながらも有能な探偵でリリー・フランキーが好助演。カラオケでの選曲が秀逸!
美しい映像や音楽。
海外でも高い評価の原作コミック。
スローテンポながらもじっくりと、今泉力哉が手腕を存分に。
タイトルの“アンダーカレント”とは、発言の根底にある抑えられた感情。つまり、心の奥底。
また潜流とも呼ばれ、表層部の海流と独立して流れる海面下の海流をも指す。
全く相反する意味や流れだが、不思議と何故かそれらが相乗するような心と思いやりをも感じた。
心の奥底や海面下なんて見えやしないが、相手の為に付いた嘘、本心を知った時…
人が分かるって、どういう事ですか…?
あなたは自分自身を分かっていますか…?
水面を漂い、彷徨うかのように。
不安定に流れ揺らめきながらも、“アンダーカレント”に身を委ねる自分がいた。
どじょうの話
悟は今を
堀は過去を
かなえは傷ついた記憶を
封印する。
銭湯の客がする噂話を
遠くの雑音にすることで
普段通りの時間が流れるように
彼らはそうやって調節して生きる。
そして私やそれ以外の誰かも。
〝ずっと一緒にいた〟悟の、
そのままにしてある部屋だけが
わかっていたようでわかっていなかった夫を
責めるつもりもないかなえの気持ちに
リンクするように佇む。
それは優しさなんかではなく
弱さでもない。
抗えないことがあるのをわかっているから。
探偵を頼んでみたけれど
本当はその〝こたえ〟も
とうに心の奥にある。
ただそうするしかないのを
誰よりも知っている彼女だから。
程なく夫が見つかった知らせを受けた時
安堵と不安をうわまわり
堀を大切に感じる気持ちが
水面に向かう空気の玉のように
彼女の心に浮かびあがったのを
見たように感じた。
知っていた〝こたえ〟のありかを
ひとかきされて
水底が動きをみせた瞬間。
悟に再会し対峙した彼女は
新たな流れのなかで凛としていた。
だからあのマフラーには
これで最後と決めたひとかけらの愛情と
精一杯の赦しのサインを込めることが
できたのだと思う。
under currentー
蒼白い水の中で揺れてさまよう心。
そこに
かたちを変えながらようやく差して込んできた光は
すこし離れて歩くふたりに届くだろうか。
これからの
二人の時間に思いを馳せる静かな余白を
膝のうえの両手でそっと包みたくなった。
修正済み
行間を味わう文学的な作品。人をわかるってどういうこと?
原作漫画は読んでいて、映画向きの話、と思っていましたが、原作と同様に行間から滲み出るものを掬うように味わう文学的な作品。個人的にはとても好みでした。
どういう話?と聞かれて、あらすじを説明しても主題が伝わる類の映画ではないのは確か。
人をわかるってどういうことですか?
これはとても深い問いで、私もすぐには答えられません。
また、わからないことはわからないし、わかることはそのうちわかる、それでいいんだと思います。
それにしてもリリーフランキーが最高です。カラオケのシーンはいま思い出しても笑えてきます。
井浦新もこういう役がハマりますね。
ちょっとひなびた銭湯や常連客の雰囲気がたまらなく懐かしく、どこかへ帰りたい気持ちになりました。
夫・・・わたしの知らない他人
原作もいいのでしょうが、
監督が好きなのことも重なり、上手いなぁ、流石だなぁと
思いました。
父親から譲り受けた銭湯「月乃湯」を夫の悟(永山瑛太)と
経営していたかなえ(真木よう子)。
悟が突然、蒸発した。
かなえにはまったく心当たりがない。
父親が一年前に亡くなり閉めていた「月乃湯」を再開したばかり。
そこへ謎の男・堀(井浦新)が現れる。
①夫の失踪の原因
②謎の男・堀は何者か?
次々と興味を惹かれてわくわくして観ました。
かなえの大学の友達・菅野ようこ(江口のりこ)と再会した所から、
物語りが動き出します。
格安料金で探偵の山崎(リリー・フランキー)を紹介されます。
有能な山崎から知らされる夫・悟の数々の嘘。
本籍地が違うに始まって、小さい時に両親を交通事故で亡くして、
養護施設で育ったとは真っ赤な嘘。
高校まで親元で育ち、
正しかったのは大学の4年間位で、
ようこもかなえも悟との接点は大学でした。
③かなえの心でトラウマとなっている小学校の親友のさなえが
………誘拐されて絞殺されて池に沈められた事件。
映画では何度も何度も何度もかなえの回想として大人のかなえが、
水に溺れたり、首を絞められたりするシーンが再現されます。
ラストのあたりで「月乃湯」の常連のシングルマザー美奈
(内田理央)の娘・みゆが突然連れ去られます。
この事件が無事に解決したのを聞いたかなえは、
突然失神してしまうのです。
子供心に親友が殺された事件がいかに大きな心の傷となっていたか・・・
真木よう子のかなえも、深刻には描かれません。
水の心象風景を多用して、銭湯の湯に浸るシーンも、
沈むシーンも恍惚としたような柔らかな表情です。
井浦新も謎の男・堀の寡黙で誠実で傷ついた心を訥々と演じて、
ラストの慟哭へと繋がる難しい役を、身体全体で表出しました。
後半あと37分でやっと現れる永山瑛太、
(リリー探偵の手腕で発見される)
悟の告白にはかなえも凡人の私も、
驚くばかりですが、
広い世間に犯罪者スレスレ、戸籍なしでも生きていける種類の
人間がいるのですね。
(日本の行方不明者・年間8万5000人との情報)
永山瑛太のカメレオン俳優にも、
そしてリリーさんの役割は大きかったです。
「アナログ」の寡黙な喫茶店主から180度変わって、
ラストでコーヒーを出す演技も同じコーヒーの置き方でも、
何と違うものかとびっくり。
役者たちのほとんどが本気でその役になりきり、
映画のイチピースとして光輝き動いている。
江口のりこも、中村久美も、そして
堀の秘密を誰よりも知る煙草屋の店主・田島役の康すおん。
康さんの働きは大きかった。
一見、講談師のような口調で、重い話を温かくしてくれた。
この「アンダーカレント」は人間の、面の顔と裏の顔。
《あなたの見ている、
《見えている彼は?彼女は?
《そして自分は?》
ホントは、何が見えているのだろう?
見たいものを見ているだけなのではないだろうか?
と問いかけています。
そして描きすぎない手法。
答えを聞こうとする瞬間に画面が暗転。
次には違う場面に切り替わっている。
そしてYMOの細野晴臣さん作曲のピアノ旋律や楽曲が重なる。
重すぎないのに深い映画で、とても好き。
そして、最後のシーン、
かなえのクラと散歩する、
5メートル後ろの人物!!
尾行しているみたいで、ちょっと怪しい距離!
「でも、何で?」と理由を聞きたくなるような感覚
劇場鑑賞するかどうかの判断基準について、最も重要な要素と言って過言でないのが「監督」です。これは通を気取っているわけでなく、自分にとっての作品に対する好き嫌いが予想しやすく、特にご自身で脚本を書かれる監督ならなおさらです。そんな「見過ごすことができない」監督の一人が今泉力哉監督です。
ただ、候補にまで上がっていても、最終的に無視できないのが作品が掛かっている劇場と、その上映時間によっては気にはなっても諦めることがあります。また、年間100作品以上は劇場鑑賞する私にとって、やはりコストは無視できません。例えば、新宿バルト9は自宅からも職場からも距離があり、さらに安く鑑賞できる方法が基本平日のサービスデイとなると、結果的に「配信待ち」してしまう作品も少なくありません。そしてこの『アンダーカレント』もバルトか、、と思っていたら、今回角川シネマ有楽町で掛かると知り、喜び勇んで参戦です。
で、感想なのですが、、、正直まとまらないんですけど、うなりましたね。当然良い意味で。「なんか、すげーな」の一言です。
後半に明かされていく登場人物たちにまつわる謎は、観ている段階で「ひょっとしたら」と想像ができて特に意外性はありません。それはミステリーでありながら、流行りの「伏線回収」を狙ったようなものでなく、登場人物に自分を重ねつつ「でも、何で?」と理由を聞きたくなるような感覚。
人は他人のことを解らないばかりか、自分のとった言動に戸惑ったり、説明がつかなかったりすることがあるように、自分自身のことだって解ってはいないと気づくことがあります。今作『アンダーカレント』はまさにそういう部分の興味深さに、ついつい「あの場面って」と他の人の意見を聞いてでも、理由を確かめ合いたくなる作品な気がします。何なら正解なんて一択な結論はなく、観る人によって作品や登場人物に自分を重ねるからこそ、それぞれ解釈が異なるような複雑で面白いと思える構造に思わず感嘆するのです。
そして、そのストーリーをいつしか「リアリティー」と錯覚して見えてくる演出と、役者たちの演技がまた素晴らしいですね。それぞれのキャラクター性に明確な役割を感じ、この人しかありえないと思えるキャスティングの気持ちよさがあります。中でも、キーマンは「サブ爺(じい)」こと田島三郎を演じる康すおんさんですね。なお、私は今回も原作未読なので、もし原作ファンに異論があればご容赦いただきたいのですが、少なくとも、この映画の中ではいろんなものが「見えている」老人であり、若者たちの拠り所ととして聖職者のような存在感に観ているこちらも救われます。
さて、今まで敢えて聴かずにとっておいた某ラジオ番組の映画評論と、ネタバレありの番外編を楽しもうかな。そして、時間をおいてもう一度観て、その時々の見え方や想い方を比べて楽しむような「しゃぶりつくせる」旨味を感じる一作です。感嘆。
全153件中、21~40件目を表示












