アンダーカレントのレビュー・感想・評価
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井浦さんが印象深かったです
見逃していた『アンダーカレント』がレンタルになっていたので鑑賞しました。
大変良くて映画館で観ればよかったと思いました。近くでは私の苦手な新宿バルト9でしかやっていなかったので、次からは別の街にも足を伸ばします。
バルト9…行きつけの美容院の人も嫌いだと言っていたっけ…何かあるな。
どじょうの話
悟は今を
堀は過去を
かなえは傷ついた記憶を
封印する。
銭湯の客がする噂話を
遠くの雑音にすることで
普段通りの時間が流れるように
彼らはそうやって調節して生きる。
そして私やそれ以外の誰かも。
〝ずっと一緒にいた〟悟の、
そのままにしてある部屋だけが
わかっていたようでわかっていなかった夫を
責めるつもりもないかなえの気持ちに
リンクするように佇む。
それは優しさなんかではなく
弱さでもない。
抗えないことがあるのをわかっているから。
探偵を頼んでみたけれど
本当はその〝こたえ〟も
とうに心の奥にある。
ただそうするしかないのを
誰よりも知っている彼女だから。
程なく夫が見つかった知らせを受けた時
安堵と不安をうわまわり
堀を大切に感じる気持ちが
水面に向かう空気の玉のように
彼女の心に浮かびあがったのを
見たように感じた。
知っていた〝こたえ〟のありかを
ひとかきされて
水底が動きをみせた瞬間。
悟に再会し対峙した彼女は
新たな流れのなかで凛としていた。
だからあのマフラーには
これで最後と決めたひとかけらの愛情と
精一杯の赦しのサインを込めることが
できたのだと思う。
under currentー
蒼白い水の中で揺れてさまよう心。
そこに
かたちを変えながらようやく差して込んできた光は
すこし離れて歩くふたりに届くだろうか。
これからの
二人の時間に思いを馳せる静かな余白を
膝のうえの両手でそっと包みたくなった。
修正済み
行間を味わう文学的な作品。人をわかるってどういうこと?
原作漫画は読んでいて、映画向きの話、と思っていましたが、原作と同様に行間から滲み出るものを掬うように味わう文学的な作品。個人的にはとても好みでした。
どういう話?と聞かれて、あらすじを説明しても主題が伝わる類の映画ではないのは確か。
人をわかるってどういうことですか?
これはとても深い問いで、私もすぐには答えられません。
また、わからないことはわからないし、わかることはそのうちわかる、それでいいんだと思います。
それにしてもリリーフランキーが最高です。カラオケのシーンはいま思い出しても笑えてきます。
井浦新もこういう役がハマりますね。
ちょっとひなびた銭湯や常連客の雰囲気がたまらなく懐かしく、どこかへ帰りたい気持ちになりました。
夫・・・わたしの知らない他人
原作もいいのでしょうが、
監督が好きなのことも重なり、上手いなぁ、流石だなぁと
思いました。
父親から譲り受けた銭湯「月乃湯」を夫の悟(永山瑛太)と
経営していたかなえ(真木よう子)。
悟が突然、蒸発した。
かなえにはまったく心当たりがない。
父親が一年前に亡くなり閉めていた「月乃湯」を再開したばかり。
そこへ謎の男・堀(井浦新)が現れる。
①夫の失踪の原因
②謎の男・堀は何者か?
次々と興味を惹かれてわくわくして観ました。
かなえの大学の友達・菅野ようこ(江口のりこ)と再会した所から、
物語りが動き出します。
格安料金で探偵の山崎(リリー・フランキー)を紹介されます。
有能な山崎から知らされる夫・悟の数々の嘘。
本籍地が違うに始まって、小さい時に両親を交通事故で亡くして、
養護施設で育ったとは真っ赤な嘘。
高校まで親元で育ち、
正しかったのは大学の4年間位で、
ようこもかなえも悟との接点は大学でした。
③かなえの心でトラウマとなっている小学校の親友のさなえが
………誘拐されて絞殺されて池に沈められた事件。
映画では何度も何度も何度もかなえの回想として大人のかなえが、
水に溺れたり、首を絞められたりするシーンが再現されます。
ラストのあたりで「月乃湯」の常連のシングルマザー美奈
(内田理央)の娘・みゆが突然連れ去られます。
この事件が無事に解決したのを聞いたかなえは、
突然失神してしまうのです。
子供心に親友が殺された事件がいかに大きな心の傷となっていたか・・・
真木よう子のかなえも、深刻には描かれません。
水の心象風景を多用して、銭湯の湯に浸るシーンも、
沈むシーンも恍惚としたような柔らかな表情です。
井浦新も謎の男・堀の寡黙で誠実で傷ついた心を訥々と演じて、
ラストの慟哭へと繋がる難しい役を、身体全体で表出しました。
後半あと37分でやっと現れる永山瑛太、
(リリー探偵の手腕で発見される)
悟の告白にはかなえも凡人の私も、
驚くばかりですが、
広い世間に犯罪者スレスレ、戸籍なしでも生きていける種類の
人間がいるのですね。
(日本の行方不明者・年間8万5000人との情報)
永山瑛太のカメレオン俳優にも、
そしてリリーさんの役割は大きかったです。
「アナログ」の寡黙な喫茶店主から180度変わって、
ラストでコーヒーを出す演技も同じコーヒーの置き方でも、
何と違うものかとびっくり。
役者たちのほとんどが本気でその役になりきり、
映画のイチピースとして光輝き動いている。
江口のりこも、中村久美も、そして
堀の秘密を誰よりも知る煙草屋の店主・田島役の康すおん。
康さんの働きは大きかった。
一見、講談師のような口調で、重い話を温かくしてくれた。
この「アンダーカレント」は人間の、面の顔と裏の顔。
《あなたの見ている、
《見えている彼は?彼女は?
《そして自分は?》
ホントは、何が見えているのだろう?
見たいものを見ているだけなのではないだろうか?
と問いかけています。
そして描きすぎない手法。
答えを聞こうとする瞬間に画面が暗転。
次には違う場面に切り替わっている。
そしてYMOの細野晴臣さん作曲のピアノ旋律や楽曲が重なる。
重すぎないのに深い映画で、とても好き。
そして、最後のシーン、
かなえのクラと散歩する、
5メートル後ろの人物!!
尾行しているみたいで、ちょっと怪しい距離!
「でも、何で?」と理由を聞きたくなるような感覚
劇場鑑賞するかどうかの判断基準について、最も重要な要素と言って過言でないのが「監督」です。これは通を気取っているわけでなく、自分にとっての作品に対する好き嫌いが予想しやすく、特にご自身で脚本を書かれる監督ならなおさらです。そんな「見過ごすことができない」監督の一人が今泉力哉監督です。
ただ、候補にまで上がっていても、最終的に無視できないのが作品が掛かっている劇場と、その上映時間によっては気にはなっても諦めることがあります。また、年間100作品以上は劇場鑑賞する私にとって、やはりコストは無視できません。例えば、新宿バルト9は自宅からも職場からも距離があり、さらに安く鑑賞できる方法が基本平日のサービスデイとなると、結果的に「配信待ち」してしまう作品も少なくありません。そしてこの『アンダーカレント』もバルトか、、と思っていたら、今回角川シネマ有楽町で掛かると知り、喜び勇んで参戦です。
で、感想なのですが、、、正直まとまらないんですけど、うなりましたね。当然良い意味で。「なんか、すげーな」の一言です。
後半に明かされていく登場人物たちにまつわる謎は、観ている段階で「ひょっとしたら」と想像ができて特に意外性はありません。それはミステリーでありながら、流行りの「伏線回収」を狙ったようなものでなく、登場人物に自分を重ねつつ「でも、何で?」と理由を聞きたくなるような感覚。
人は他人のことを解らないばかりか、自分のとった言動に戸惑ったり、説明がつかなかったりすることがあるように、自分自身のことだって解ってはいないと気づくことがあります。今作『アンダーカレント』はまさにそういう部分の興味深さに、ついつい「あの場面って」と他の人の意見を聞いてでも、理由を確かめ合いたくなる作品な気がします。何なら正解なんて一択な結論はなく、観る人によって作品や登場人物に自分を重ねるからこそ、それぞれ解釈が異なるような複雑で面白いと思える構造に思わず感嘆するのです。
そして、そのストーリーをいつしか「リアリティー」と錯覚して見えてくる演出と、役者たちの演技がまた素晴らしいですね。それぞれのキャラクター性に明確な役割を感じ、この人しかありえないと思えるキャスティングの気持ちよさがあります。中でも、キーマンは「サブ爺(じい)」こと田島三郎を演じる康すおんさんですね。なお、私は今回も原作未読なので、もし原作ファンに異論があればご容赦いただきたいのですが、少なくとも、この映画の中ではいろんなものが「見えている」老人であり、若者たちの拠り所ととして聖職者のような存在感に観ているこちらも救われます。
さて、今まで敢えて聴かずにとっておいた某ラジオ番組の映画評論と、ネタバレありの番外編を楽しもうかな。そして、時間をおいてもう一度観て、その時々の見え方や想い方を比べて楽しむような「しゃぶりつくせる」旨味を感じる一作です。感嘆。
表面に現れない本当の感情
リリーフランキー演じる探偵 山崎道夫のキャラクターがとてもよかった。
恰好から、発言から、何から何まで胡散臭いが、仕事はしっかりこなす。
変なんだけど、言動にかっこよさを感じるから段々と好きになっていく。
特に、主人公が、夫のことは私の方が分かっていると発言したのに対して「人をわかるってどういうことですか?」と考えを揺さぶる問いを投げかけるシーンが印象に残った。
真木よう子、永山瑛太もとてもよかった。
「怪物」の時も思ったが永山瑛太の、自分の感情を隠しながら取り繕って生きる演技がとても良い。
ラストでかなえと悟が本当の感情について語り合うシーンでは、本当の気持ちとは何だろうか、実は自分でも自身のことはほとんどわかってないよなと考えさせられた。
観た後の満足度が高いわけではなかったが、ふとした時に何度も思い返し、考えさせられる。嚙み締めることで面白さが沸き上がってくるそんな作品だと感じた。
原作はアフタヌーンコミックスということを見た後に知った。
「スキップとローファー」や「ヴィンランドサガ」など最近みて面白いと思った作品はアフタヌーンであることが多い。
「Undercurrent」
1.底流、下層流
→奥底に動いている思想、感情
2.(表面に現れない)暗流
→表面に立たない不穏な動き
青色、水がずっと頭から離れない
美しいポスター、真木さんの表情 このポスターやチラシだけでも引き寄せられる さらに今泉監督となれば、緊張感を持って劇場に向かいました かなり以前の原作があって、それだけに皆さんの評価も様々でありましたが、現実的であってもなくても、このテーマは常に私たちにはあります 最も近くてわかっているはずの夫婦が実は最も遠くてわからない関係・存在であることに気づいてしまうこと、知りたくない気づきたくなかった「事実」
に直面すること、こうしてスクリーンで観ると、改めて「真実に蓋をしている」観る者に突きつけられるものを感じます 井浦さんは常に安定、言葉が少なくてもその思いが感じられます 最初の日にあれだけ吠えていた犬が穏やかになるのも、犬にすら彼の思いが伝わっているかのような場面でありました ラストをどう解釈するか、「希望」を感じずには、祈りたい、願いたいと思いました 随所に出てくる「水」、彼女にとってしまい込んでいた記憶が呼び起こされたのも水、しかしこれからの生活も水に向き合っていかなくてはならない 井浦さんのバッグ、真木さんの鮮やかなお出かけ着は鮮やかな赤色でありましたが、アンダーカレントは青色そのものです (11月2日 イオンシネマ茨木にて鑑賞)
静かに流れてゆくもの。
とても淡々とした静かなストーリー。声を荒げそうな場面でも登場人物たちはそっと現状に向き合い、現実を受け入れてゆく。突然夫が失踪したかなえ。何故?どこへ?その気持ちを引きずりながら夫婦で経営していた銭湯をなんとか再開する。
そこへ働き手としてやって来た謎の男、堀。まるで湯船にお湯がはられるように時間が流れてゆく。堀の正体とは。かなえが封印した過去を巡るミスリードの要素もあり、大人の会話劇でもあり、実に今泉監督らしい時間の使い方だなと思いました。
正直真木よう子は作品によって波がある印象ですが、今作はとても良かったです。リリーフランキーのちょっと下品だけど的確な探偵も良い味出してました。夫の行動の真意がよく分からなくてその辺もう少し説明してほしかったです。
やりきれてないと思われる。
なんじゃこりゃ?
そこそこ期待してたのだけど…何なのかがよく分からない。瑛太氏だけが芯を喰ってたような気がする。
夫の失踪から話が始まって、なんかウダウダ展開していくのだけど、よく分からない。
登場人物としては…
友達を見殺しにした過去をもつ、夫に失踪された女
その友達の兄(妹が大好きだった)
虚言癖をもち失踪した夫
で、
何も起こらない。
いや、起こるのだけど至極どうでもいい。
フランスでは人気の漫画らしい。
静止画と動画ってのが明らかに違う。
絵画でない限り静止画には脳内の補填が必要不可欠に思う。で、その補填される様々は見た人の人生経験から想起されるものだと思われる。
映画はそこが根本的に違う。
補填するわけではなく、読み取ろうとすると思う。
答えは全て絵の中にある。
…で、頑張ったけどよく分からない。
例えば、海岸のカフェで対面するシーンとかでも、胸中は煮えたぎってんじゃないのかと思われる。
夫に対する愛情は薄れていたとしても、その責任感の無さとか自身のプライドとか費やした8年もの時間とか、どえらい事になってんじゃないかと。
で、そこを隠すからアンダーカレントなんて題名がつくんじゃないかと思うのだけど…
完璧に隠しすぎて最早「無」だよね。
そして、あなた相当強いよね、強すぎるよね。
最後の台詞が全く皮肉に聞こえない程、切り捨てたよね。
アレが正解なのかしら?
あのフルサイズの引き絵が正解なんでしょうか?
慮れとでも言うのか?
それぞれの表に出さない内面を汲み取れと?
ならば、その前にキャラに感情移入できるだけの材料をくれよ。
退屈で寝たわー
原作読んでないけど、この配役で合ってるのかしら?
総体的に線が太いように思う。
兄とかもなんでそこまで暗いのかよく分からない。お前が妹を殺したのか?って感じだ。
瑛太氏はクズ男をやらしたら日本一だと思う。
ウダウダ御託並べてたけど、子供に縛られる未来が悍ましかったんだよね?
唯一、彼には落とし所があったように思う。
なんか、人を理解する事の幻想みたいなレビューも多いのだけど、他人なんか理解できる訳がない。他人を理解出来ると思う事自体が傲慢ではないか?だからこそ思いやりなんて文化があんじゃないのか?
…などと常日頃から思う俺は、よっぽどさもしい人間で、寂しい人間なんだなと思う。
合掌。
リリーさんは有能(役柄)
この間見た「福田村事件」の二人がまた同じ映画に出ている!と鑑賞。
「湯道」や「ブギウギ」などお風呂屋さんが舞台の映画・ドラマを今年はよく見る。スタイリッシュな感じなのかなとチラシなどのパッと見の印象で思っていたら。。
だいぶヘビーな思いを抱えた人たちの話だった。。だから心に蓋をしてしまったんだろうかと。真木よう子演じる主人公の過去はショックだった。
筋とあまり関係ないけど、リリーさんは歌上手い。そして、赤ちゃんが可愛かったわ。
誰かのことを「わかる」ってどういうことか?
【古いアカウントで投稿していたので、削除して再投稿します】
映画館の予告編で見ただけなので、主演が誰か以外の予備知識ゼロで観ましたが、それが正解でした。(まぁ、これは全ての映画に言えることですが。)
と、言いながらこのような説明を加えるのもいかがなものか、ではありますが。
ネタバレとまでは言えないと思いますが、予備知識を一切入れたくない方は、以下、読み飛ばしてくださいね。
劇中の私立探偵のセリフ「他人をわかるってどういうことですか」がこの映画のテーマを完璧に表している。
映画の全シーンにわたって実にゆっくりとした「間」が取られているので、登場人物や物語を追いながらも、劇中の状況やセリフを自分自身や人生経験に当てはめて思いにふけるだけの時間がある。
主題の「問い」は物語のかなり序盤で示されますが、物語が進むにつれ、徐々に個々の人物像や取り巻く環境、過去の出来事が見えてくる中で、繰り返し、繰り返しその答えを問われる感じです。
最後には、自分自身でさえ自分のことを本当にわかっているのか、自分が"本心"だと思っていることさえ都合のいい"解釈"でしかないのでは、などと考えさせられます。
なお、他のレビューにもありましたが、私も終盤のじーさんが話す説明しすぎる、決めつけすぎるセリフは興ざめに感じました。(お前は誰やねん!という感じ。)
あれは必要ない、というか、映画全体の中であそこだけが不自然な感じがしました。
ま、個人的な”意見"をさも"事実"のように語る人間が現実にいるのも事実ではありますが。
少なくとも、この映画にはやはり必要ないシーンだと思います。
(原作にあったのかどうかは知りませんが。)
ちなみに、同じ日に見た2本の映画にリリーフランキーさんが出てきてコーヒーを淹れるシーンがあったのですが、妙なデジャヴを見ることになった不思議な1日でした。
かなえの幼馴染を殺した犯人があの人ならラストはゾッとする
2023年映画館鑑賞60作品目
10月22日(日)フォーラム仙台
スタンプ会員1500円
原作未読
監督と脚本は『愛がなんだ』『アイネクライネナハトムジーク』『mellow』『his』『街の上で』『あの頃。』『愛なのに』『猫は逃げた』『窓辺にて』『ちひろさん』の今泉力哉
脚本は他に『影裏』『愛がなんだ』『Arc アーク』『ちひろさん』の澤井香織
銭湯屋月の湯の共同経営者で婿養子の悟が組合の旅行中に失踪した
組合の紹介で堀が面接にやってきた
その日から働くことになった
アパートが見つかるまで同居することに
友人の菅野の紹介で失踪をした悟の調査を探偵の山﨑に依頼した
両親は子供の頃に交通事故で亡くなり兵庫県の施設で育ったと聞かされていた悟の過去は嘘
本当は最近まで両親は生きていて悟は山形出身
悟は子供の頃から嘘つき
嘘で塗り固めた人生だった
嘘に耐えきれずかなえの元から去り失踪したのだ
今泉監督の要求だろうけど真木よう子の芝居に不満がある
もう少し悲壮感がほしい
『ある男』の安藤サクラのような
客商売だから表向き明るく振る舞う必要があってもあれはない
真木よう子だって無名塾出身なんだからやればできる子のはず
今泉監督の意図がわからない
原作もあんな感じなんだろうか
カラオケ屋で重要報告したあとにオハコを熱唱する山崎とかなえのツーショットが面白い
悟も山﨑も含蓄のある発言をいくつかしてるのだが今となっては全く覚えていない
知的で弁が立つ男はちょくちょく女を言いくるめてしまうものだが女だって納得してるわけではない
ヒスを起こしてブチギレるのはクールな大人の女としてはみっともないという羞恥心のあらわれだろう
「なに言ってんの・・・」内心では怒りを通り越して呆れてるのかもしれない
田島の爺さんがまさかの名推理ぶりを発揮するわけだが詰めが甘かった
金田一耕助が毎回毎回やる「しまった!」みたいなものである
かなえが子供の頃に幼馴染だった女の子が殺された
堀の妹だ
かなえも現場にいて逃げた
殺した犯人はまだわかっていない
犯人はおそらく彼だろう
そうなるとラストがゾッとする
配役
銭湯屋月の湯を経営する関口かなえに真木よう子
銭湯組合の旅行中に失踪するかなえの夫の白石悟に永山瑛太
危険物取扱資格とボイラー技能士の資格を持つ月の湯の新従業員の堀隆之に井浦新
失踪した白石の調査をする探偵の山崎道夫にリリー・フランキー
かなえの大学時代の友人で康平というまだ赤ん坊の息子がいる菅野よう子に江口のりこ
堀の正体を見破った煙草屋の老人の田島三郎に康すおん
月の湯のお手伝いをしているオバさんの木島敏恵に中村久美
月の湯によく来るみゆという小学生の娘を持つシングルマザーの藤川美奈に内田理央
温泉組合の世話役に諏訪太朗
堀さんの涙
豊田徹也さんによる原作が大好きである
上流の肩の力が抜けた自然さ 穏やかさ 素朴な生活感
それらの下流に確かにある偽り 疑念 他人や自分への諦念
誰しもが持ち合わせ、コントロールしあぐねている心の波の断層を
静かに温かく それこそ映画のような美しさで切り込んだ一冊に 思春期の私は完全に陶酔し、瞼に映像を映しては余韻に浸りまくっていた
そのアンダーカレントが映画化、監督は今泉監督、音楽は細野晴臣という文句のつけようがない布陣が報じられ ドキドキしながら観に行ったが
期待を裏切らない143分でした
ふとした会話の合間合間にギリギリまで溜め込む間
全体的に寒色が強めな静かな色調
年季の入った銭湯兼自宅の美しい庭と調度品
再会と最後の会話に相応しい海辺のロケーション
台詞も概ね忠実で、とても原作の独特な空気感を大事にしつつ
あやとりや蛙でのシーンの繋ぎ方はとても上手だなと思った
そんな原作へのリスペクトが感じられる中、一番驚いたのが 堀さんの涙である
クールで無表情で飄々としていて
クールで(2回目)かっこいい堀さん
原作では涙なんて想像できなかった
映画での井浦新演じる堀さんは 終始どこか困り顔で 背負う哀愁がものすごい
(35.6歳設定にしてはキャストの年齢が少し高すぎないかな…と薄々感じながら観てました)
バスを見送った堀さんが一度目頭を抑えてから静かに歩き出す原作のラストがたまらなく好きなので
その終わり方を踏襲してくれるだろうと勝手に思い込んでいた自分は 家でかなえと食事をするシーンまで続いたことにかなり驚いた
けれど、本当はドジョウが苦手だけれど好きだと勘違いされ続けちゃって もう本当のこと言い出せないんだよね 、と笑うかなえを前に涙と隠していた真相を零す堀さんを観て
ああ これはこれで なんて綺麗な終わり方なんだろうと思った
これは個人の解釈だが、この作品のテーマは「人の多層性、人を分かるということの不確かさ」
そしてこんなにも好きな所以は、美しさもさることながら「悲しみや嘘、本音を下流にたたえながら 静かに 時に激しく流れ続ける今を生きていかなければならない市井の人々による日々の営みへの 作者の眼差しの優しさ」である
言葉にできない ありのままに表せない 本当が分からない「嘘」を
ドジョウのささやかな一件でさらりと表現し
かなえは笑い
堀さんは泣いた
そこには今泉監督による生活への優しい眼差しが見えて、この人が実写化をしてくれて良かったと思えたのだった
素晴らしいアンダーカレントをありがとうございました
(原作との比較雑感)
・湖で堀さんが石を投げるシーン
漫画で狂おしいほど好きなシーンなので、一瞬で終わって残念だった…あそここそたっぷり間を使って映像化してほしかった…!
・山崎さん
リリーフランキーが山崎さんすぎてとんでもなく良かった 自己紹介時の「釣りバカ日誌のハマちゃんと同じです」の言い方で最高のキャスティングだと痺れた
・下着を盗んだ少年を諌めるシーン
ここも堀さんがかっこよくて好きなので、なくて少し残念だった
でも連載作ではない1本の映画で、映画の堀さんの描き方では不要だったのかもしれない
・CharaのDuca
初見の時Ducaを知らなくて、後々聴いた時に カラオケでいきなり振るには難しすぎる!と笑った
どうしてこの曲を歌ったのか不思議だったので、映画にはなくて笑った
Charaを好きになったきっかけでした カラオケでは歌わないけどね
人をわかるって、何ですか
2日連続井浦新、ご馳走様です。
今泉力哉監督最新作。ようやく見ることが出来ました。久々のレイトショー、既にテンション爆上がりです。昨年公開の「窓辺にて」はこれまでの監督の作品と打って変わって、かなりビターで大人な渋い映画でしたが、本作もかなり落ち着いたトーンで、更に文学的で考えさせられる作品に仕上がっていました。
「死にたくなってことってありますか」
前日に、人生に詰んだ元アイドルは赤の他人のおっさんと住む選択をした(通称:つんドル)を見ていたため、この言葉にニヤリ。まさかの逆転してる!豹変した井浦新に驚くばかり。ここ1ヶ月で3回も出演作が見れるとは...贅沢です。真木よう子も、今までに見た事がないくらい表現力豊かで上手かったし、この作品の主人公としてこれ以上ない役者だったと思う。心に深い傷を抱えた人物を、2人とも見事に演じていました。
かなり行間が多く、文学的な色合いが強い作品であるため、この尺は中々に長い。緊張感の途切れない、静かで重いカット。そんな中で唯一の癒しがリリーフランキー。実際にこんな人が居たらくっそ腹立つだろうけど、画面越しだとめちゃくちゃ笑えちゃう笑 主人公が落ち込んでいる最中、更に追い詰めるかのように1人で熱唱。しかも歌う曲が...笑 原作の漫画でも、この"ヤマサキ"はリリーフランキーをモデルにして描かれたらしく、おかげで最高にハマっている。文句言う割には、自分言っちゃうんかい!
人間の醜いところや弱いところ、普段考えないような現実を、一切の綺麗事なしに映し出す、今泉力哉監督。彼の映画の主人公は、いつも寂しくて孤独。見ている人の等身大で、決して主人公ぽくない。本作は、最近の監督にしては珍しく、原作があり、かなり色の違う作品ではあるけれど、匂いはしっかりと今泉力哉。今を生きる人々に、疑問をなげかけてくれます。人は嘘をつく。嘘をついて生きている。それなのに、人を分かるって何なんだろう。
まるで水の中をさまよっているような、息苦しくて途方に暮れそうな世界。それなのに、何にも囚われていないような自由も同時に感じる。アンダーカレントというタイトル通りの作品で、文学的でありながら、自分の心にすごく刺さりました。旦那の気持ちを理解するのは難しいし、説明口調になって若干興ざめしてしまう場面もあったけど、監督のファンとしては今回もまた最高でした。いやぁ、にしてもすごいペースで撮るよね。無理をなさらず、たくさん世に映画を届けて欲しいです。
浮かび上がるもの
お見事。監督のテイストが如何なく発揮され、静かな中にも確かに感じる熱量が心地良い作品になっておりました。煙草をやめて暫く経ちますし全く吸いたくはならないのですが、とある縁側のシーンでは久々に「うまそうね♪」って思いました。そういう何気ないシーンが上手いんですよねぇ。そこにシビれる!あこがれるゥ!。…ゴホン、失礼。原作を知っていても楽しめるであろうことは間違いないのですが、知らないので観て頂きたい。未読(情報も遮断)の私は、後半の畳み掛けで色んな感情がないまぜになって、物凄く楽しめたので。
何の話か解らないまま観るべき映画
映画評を見てもどういう映画かよく解んないし、あまり期待してなかったんですが…
面白かった。そうか、だから何の話か書かれていなかったのか。
主題自体を説明すると、もうネタバレ。
とにかく、なぜ旦那は失踪したのか?
なぜ堀が風呂屋を手伝いに来たのか?
なぜ主人公が闇を抱えているのか?
すべてが同じ主題に集約していく。
無感情、よくわからない、淡緑のimage
「人を分かる」とは何か?
それをこの映画は投げかけようとしている。
その過程において、人の苦しみを知ること
は重要だろう。しかし答えはわからない。
映画の流れは単調である。しかし飽きない。
単調たらしめてるのは、私(鑑賞者)の心に
機微がなかったからだろう。映画を見て、
可笑しさも、感動も、苛立ちも、何も感情が
起こらなかった。だがそれで良い。
スクリーンを観ながら、耳を傾かせれば
言葉が自然と身体に沁みてくるようだ。
たばこ屋のおじいさんのあの語り口調は
監督の嗜好だろうか。この映画で唯一
苛立ちの予感を覚えたシーンであった。
原作通りの雰囲気
映画を観た様な読後感のある原作で、凄く好きな作品だっただけに、映画化を知った時、今更?とかあの雰囲気壊して欲しくないな、という不安を感じながらも、期待と喜びは隠せなかった。キャストも納得出来る配役(特に山崎探偵はたしかにコノヒト)なだけに、原作の持つ特徴的な雰囲気が損なわれて無かった。削られたエピソードもあったけど、原作ファンとしては納得出来るイイ映画だと感じた。
自分の中では大注目作品だっただけに、観客2人での上映は少し寂しかったな…。
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