「キアヌ無双 自由への血闘篇」ジョン・ウィック コンセクエンス 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
キアヌ無双 自由への血闘篇
もはや説明不要。すっかりキアヌ・リーヴスの代表作となったこのシリーズ。
前作で完結の筈だったが、何の何の! ラストで支配人ウィンストンに撃たれビルの屋上から落ち死んだと思ったが、生きていた。
主席連合の粛清から一旦逃れ、地下の“キング”の元に身を寄せ、再び来る闘いの時に備えて。
前作から4年。4作目にして今回こそ完結編とも言われている。そして遂に、その時が来た。
逃れられぬ主席連合との決着。この苦闘の男に、自由になれる日はやって来るのだろうか…?
今回ジョンに立ち塞がるは、若くして主席連合で力を振るうグラモン侯爵。
甘いマスクだが、やり口は冷酷無比。ジョンを殺さなかったウィンストンへの粛清として、その地位から解任し、ホテルを爆破。さらに、名サポート役だったコンシェルジュのシャロンを殺す。よ、よくもシャロンを…! 今年3月に急逝したランス・レディックに改めて哀悼…。
もうここで侯爵が嫌いになった(ビル・スカルスガルド、ナイス憎まれ役!)。ジョンよ、最後の最後にコイツをブッ殺してくれ!
侯爵はジョン暗殺をある男に依頼する。
引退した身だったが、娘の命を脅され、従うしかなかった。
盲目の暗殺者、ケイン。彼は、ジョンとは旧友でもあった…。
演じるは、ドニー・イェン。前回はマーク・ダカスコスだったが、アジアの誇る当代きってのアクションの達人が参戦! それにしても『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』に続き盲目の男。強すぎるからハンデ…?
旧友だから動向や頼れる相手も知っている。
ジョンが数少ない旧友の中で今頼れるのは…
日本。大阪コンチネンタルホテルの支配人、シマヅ。
演じるは、真田広之。キアヌとは『47RONIN』以来の共演。あのトンデモ駄作で共演はもうNG…なんて事にはならず。続いていたお互いへのリスペクト。
リスペクトを感じたのはこれだけじゃない。今回孤立無援のジョンの唯一の味方が日本というのも嬉しいし、シリーズには一貫して日本テイストが。日本や日本アクション(キアヌの千葉真一敬愛は有名)への監督やキアヌの溢れんばかりのリスペクトを感じた。だからまあ、突っ込みたくなる日本描写は堪忍して。
ジョンを追って大阪コンチネンタルホテルに続々現れた主席連合に雇われた暗殺者たち。
その中に、犬を連れた賞金稼ぎも。
掟でホテルで争う事は出来ない。が、侯爵の力で聖域指定解除。何て横暴な奴…!
前半の最大の見せ場。火蓋が切って落とされ繰り広げられる、大阪コンチネンタルホテルの陣!
本シリーズの醍醐味アクション、“ガン・フー”は今回も激しい。
銃のみならず、日本刀や弓矢やナイフ…。もう“何フー”!?
言うまでもなく、真田サンの見事なアクション。アクションや渋い演技や義理人情…。もう本当に誇らしいね。一部で噂されている『VIVANT』の続編オファーを断ったらしいが、それも堪忍して!
同ホテルのコンシェルジュでシマヅの娘役のリナ・サワヤマも華麗なアクションを披露。
ドニーは盲目ながらも目を見張るアクション! 杖で位置や周囲を把握したり、音も敏感。本当は目が見えるんじゃ…なんて愚問。これぞ『座頭市』から伝わる盲目アクション!
銃にナイフに車に馬に…本シリーズで様々なアクションを融合させてきたキアヌだが、今回はヌンチャク! もう気分はブルース・リー!
キアヌのキレッキレで激しいアクションの連続は衰える事なく。ジョンは無敵って訳じゃなく、時折やられたり、傷付いたり、バテたり。そこが感情移入し、手に汗握るんだよね。
キアヌ×真田サン、キアヌvsドニー、真田サンvsドニー…。
激闘の果てに、悲しい犠牲が…。
ジョンが行く所、悲劇と死しかないのか…?
この逃れられぬ運命から逃れ自由になるには、ジョンが死ぬしかないのか…?
たった一つだけ、自由になれる方法がある。
古来のルールに乗っ取って、一対一の決闘。
勝てば自由。が、負ければ…。
ジョンは侯爵に決闘を申し込むが…。
後半はパリが舞台。
関わる者たちが一旦集い、決闘の日時や場所が決められる。
この時ジョンと侯爵が顔を合わすのに、ここで殺し合う事は出来ない。ルールに背く。非情な殺しの世界なのに、皆主席連合が定めた奇妙なルールに従う。何てクレイジーな世界…。
だからと言って決闘の時まで穏便にはいられない。あくまで決闘時のルールで、その時以外は通常通り。
ジョンが決闘地の寺院へ向かう間、パリ中で殺し屋たちが襲撃。
侯爵がラジオを使って仕向ける。決闘の前にジョンを殺そうとしたり、決闘もケインを代理に立てたりと、自分で手を下そうとはしない。何処までも卑怯な奴。卑怯で、チキンなのだ。
クライマックス直前の大盛り上がり!
パリ街中の大アクション! 襲い来る暗殺者と銃撃、格闘、カーチェイス。
中でも凱旋門広場で行き交う車の中の危険なアクションと、圧巻は寺院へ続く大階段の『蒲田行進曲』も真っ青の階段落ち!
決闘前に大丈夫か?…と心配になるくらい。
やっと頂上まで登ったと思ったら、侯爵の強靭な手下(スコット・アドキンス)の蹴りの一撃で階下へ転げ落ち…。
展開上そうなると分かっていても、しんど…。
決闘は時間厳守。遅れは許されない。遅れたら…。
しかし、もう体力も限界。タイムリミットも僅か。
その時手を差し伸べたのは、まさかのケイン!
二人で共闘しながらてっぺんを目指す。ジョンとケインの共闘は激アツだが、辿り着いたら決闘が待っているだけに…。
助っ人もう一人。犬を連れた賞金稼ぎ。とある闘いのシーンで侯爵の手下に犬を殺されそうになった時、ジョンに助けられた。ジョンも愛犬家だしね。ワンちゃんの“ジョンを殺しちゃダメ”と言わんばかりの眼差しに胸キュン。怖い顔で唸り声を上げ手下に復讐するシーンは痛快!やったれ!
決闘の時間にギリギリ間に合った。
パリを望める高台から美しい日の出。
そこで、非情な決闘が行われるとは…。
決闘の方法は、互いに銃を持ち、30歩離れて撃つ。10歩ずつ距離を縮めていく…どちらかが倒れるまで。
高みの見物の侯爵。(←ほんと、コイツは…!)
ジョン対ケイン。友と友の闘い。
ジョンが勝てば主席連合から自由になれる。ウィンストンも復職しホテルも再建。
ケインが勝てば同じく自由になれる。娘と共に。
勝たねばならぬ理由がある。負けられない。
やはり二人共凄腕の殺し屋。一発で決まらない。距離を縮めていく…。
遂に一方が倒れた。まさか、ジョンが…。
死んではいない。侯爵がここぞとばかりにトドメを刺そうとする。
その時…。
ジョンは3発目の弾を撃ってなかった。
その弾を侯爵に放つ!
こんなのルールじゃない? いやいや。元々はジョンが侯爵へ決闘を申し込んだ。ちゃんと本来の目的を果たしたのだ。
このシーンはスカッ!としたね。最初願った通り、あのクソ野郎をブッ殺してくれた。
何はともあれ、決着が付いた。
侯爵に勝った事で、ウィンストンは復職。ホテルも再建。
どうなるかと思った友と友の闘い。ケインも娘も自由の身に。
ジョンも。もうこれで主席連合に追われる事はない。長き苦闘に終わりが。遂に自由となった。
不可能と思われた全てを、ジョンはやってのけたのだ。
このままハッピーエンドであって欲しかった。
闘い終わったが、たくさんの傷を負った。血を流した。多くのものを失った。
自由の代償はあまりにも大きかった。代償はまだ奪う。
去るジョン。が、力尽きたのか座り込み、そのまま…。
脳裏に浮かぶは、愛する妻と過ごした幸せな日々…。
ラストシーン。
二つの墓石に刻まれている。
“夫を愛した妻”。
“妻を愛した夫”。
ジョンは本当に死んだのか…?
死んだのかもしれない。
ウィンストンやキングの計らいで、死を偽装したのかもしれない。
ジョンが再び私たちの前に姿を現すとしたら、また何かの闘いの時かもしれない。
せっかく闘い終えたジョンにそれはあまりにも酷だ。
闘いでなくともいい。だからせめて、
自由になった安息の姿を見せてくれ、ジョン!