「数学と音楽の巧みな連携」不思議の国の数学者 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
数学と音楽の巧みな連携
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韓国の成績優秀者を集めた名門私立高校ドンフン校には生活困難家庭支援の奨学金特別枠がある、母子家庭のハン・ジウもその枠の一人、しかしながら学校側は成績不振など難癖をつけて自主転校を促す非道ぶり。ジウも胡散臭い数学教師に転向を促され落ち込んでいる、そんなジウにひょんなことから学校の年配の用務員イ・ハクソンが数学を教えることに・・。
オイラーの公式やリーマン予想など数学の象徴的な用語が出てきますが特徴的なのは劇中の音楽、平均律を発明したバッハの無伴奏チェロ組曲や立命館中学校の数学教師長谷川幹さんが円周率を音符に見立てたπ(パイ)・ソングのピアノ演奏などを織り込んでいましたね。
脚本のイ・ヨンジュは難関大学、延世大学建築工学科卒業なので数学全般の知識に優れているのでしょう、そもそも古代ギリシャの数学者ピタゴラスが音程や音階の理論を発明し、バッハがこれまた数学的知識で平均律を編み出し音階を改善した訳ですから数学を音楽と結びつけて表現するあたりは教養の深さを感じます。
数学と若者支援を結び付けた映画は名作「グッド・ウィル・ハンティング(1997)」をはじめ「奇蹟がくれた数式(2016)」などあるが本作もその流れ、パク・ドンフン監督もグッド・ウィル・ハンティングは大のお気に入りだそうです。また、ラストでイ・ハクソンが講堂に乗り込んでハン・ジウを救う演説をするくだりは、これまた名作「セント・オブ・ウーマン/夢の香り(1992)」のアル・パチーノを彷彿とさせられました。
韓国映画で主人公は脱北の数学者なので、もっとポリティカルな韓国の国威高揚映画かと懸念しましたが、意外と王道のヒューマン・ドラマでした。
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