「迷走魚雷」デシベル レントさんの映画レビュー(感想・評価)
迷走魚雷
久々の韓国サスペンスアクション、劇場鑑賞見逃したので配信にて鑑賞。
指揮官とは多くの部下を統率しその任務を完了する責務がある。指揮官の命令は絶対であり部下は命令に従う義務を負う。その反面指揮官はその部下の命を預かるという重大な責任を負う。指揮官にはできる限り多くの部下を生還させることが求められる。
時には非情な決断も強いられる。多くの部下の命を救うために一人の命を犠牲にしなければならないことも。戦場においては躊躇してる暇はない、一瞬の判断の迷いが命取りとなることもある。決断は瞬時になされなければならない。決断が遅れれば多くの部下を犠牲にすることにもなりかねない。
潜水艦副艦長のカンはまさに決断を強いられる。それはあまりにも非情な決断だった。しかしやむを得ない決断でもあった。彼の決断で多くの乗組員の命が救われた。他の乗組員の命を犠牲にして。
そんなカンに対して憎悪を抱くテソンは軍人として未熟であった。彼は今回のことで愛する弟を失った。くじを交換させなかったカンを恨んだ。しかし弟もけして交換には応じなかっただろう。弟の気持ちは兄と同じだったはずだから。
テソンは感情に支配されて軍人として道を踏み外した。本物の軍人ならば苦渋の決断をしたカンの気持ちを理解できたはずだった。
彼の暴走はもはや止まらない。まるで制御が効かなくなって味方の船を攻撃する迷走魚雷のように。
テソンはカンに対して常に二者択一を迫った、あの時のように。カンにも家族を失った気持ちを味合わせようというのだろう。しかしテソンは見誤った。カンはすでにあの時多くの家族を失ったのだ。乗組員という家族を。彼はテソンの脅しにけして揺らぐことはない。何の迷いもなくテソンの計画を阻止しようと邁進する。
物語は大きくテロパートと潜水艦パートに分かれていて以外にも潜水艦パートの割合が多かったが、これはこれで一本の映画が作れそうなくらいの濃密な内容。
メインのテロパートもなかなか良かったが少し演出が抑え気味だったのが残念。やはり爆弾テロもので今回は音に特化したアイディアなのだからもう少し音響効果とかに工夫があってもよかった。プールのシーンなど結構緊迫したシーンにもかかわらず淡白な演出が目立った。このテロパートがもっとハリウッド映画並みにド迫力に描かれていたらかなり満足感は高かったはず。
あの新聞記者のキャラはよかった。最後の記者会見のシーンなんて、おいしいとこ持っていくし。
最後のシーンはちょっと蛇足かな。ちなみに艦長はどこ行ったのかな。