丘の上の本屋さんのレビュー・感想・評価
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「本を読むということ」を描いている
イタリア中部石造りの街を舞台に、古書店の老店主リベロのもとに行き交う人々を描く。 読書家ゆえ身に付いたと感じられるリベロの博識さや優しさ、人となりがこの映画のすべてかもしれない。カフェ店員ニコラを友人として想い馳せるシーンは言葉選びに読書家としてのリベロらしさがあって特に美しかった。 イタリアの人たちの感情表現が豊かなあまり、段々と表情や声色で伝えたいことの片鱗を字幕なしで感じ取れるようになっていく変化も新鮮だった。 個性豊かな古書店に訪れる街の人々を通じて、本とのさまざまな接し方に触れられる。そして本の前では年齢も性別も国籍も重要ではないし、その壁すらも超えられると感じることができる。 登場人物が役割的で人物描写やエピソードの深みがなく物足りなさを感じるけれど、人物以上に古書店に主体があると割り切ってる感じ。 イタリア文化に触れられるのんびりとしていて心が落ち着くという視点ではたまにはこういうのも見たいなと思えた。 本好きより本を読まない人にこそ人生が動くきっかけが得られる気がしている。そういう視点で意義深い作品である。
そっち方面の人の作る映画はつまらない。
え?なに?そのラスト....
こじんまりとした古書店を、一人、また一人と客が訪れての会話劇。極右ネオナチ。移民の少年。アブノーマルな性癖を匂合わせる女性。落ちぶれた教授。舞台劇の建付けです。切れはありません。深くも無いです。言葉の美しさも無いし、会話の妙も無く。ありゃりゃな感じです。
古書店の主人は、移民の男が買い取りを求めて持ち込んだ、女性の日記を少しずつ読み進める。でですよ。1957年にアメリカに彼氏を一緒に移り住むと言う展開になったところで、思うわけです。永住権(グリーンカード)を得るために、彼はベトナムに行っちゃうんじゃないかと。が、そんな悲劇的な展開もなく。淡々とした会話劇は、淡々と終わります。
でも。最後のアレは、「イヤイヤ、それじゃないだろう」と。
完全に萎えました。世界人権宣言、そのものは崇高なんですけどね。近年、それを掲げる人達が好きじゃなくってw
だから、なんかの小説か詩集かにしてれば良いやんw
優しく諭して、気づきを与えてくれる映画
個性豊かなキャラクターが古本屋に来て、リベロおじいさんや本と化学反応を織りなしていくのが、人間味があって優しく面白く、安心して観られる映画だった。 イソップ童話やキノピオなどの童話のような説教くささもあるけれど、それがどこか懐かしく温かかった。 キノピオを読みおえた少年がリベロに、「騙そうとするやつは、愉快な風を装って欺いてくるんだよ」と戒められたときに 「僕は土に埋めてお金が増えるなんて言われても信じないよ」「コオロギはこうるさいだけだ」と、巧みな言い回しで言い残して帰って行ったのも面白かった。笑 少年は、まっすぐで汚れなく危うく、美しかった。 イタリアの村の美しさ、音楽の美しさにもうっとり。 ハッとさせられる言葉も多く…(その多くは沢山の名作達の引用なのがまた感慨深い) 特に『白鯨』を渡すときの言葉が印象に残ってる。 「1度だけでなく、2度読むんだ。1度目は、作品を理解するために。2度目は、考えるために読む。作品から与えられるメッセージは1つだけでない。最初に感じ取ったこととはまた違うメッセージを受け取れるかもしれない」(うろ覚えの部分はあるけど確かこんな感じ) 私自身、映画を観るのも本を読むのも、どこか「情報を得る」ことが第一になってる今日この頃。 (実際今日も、一本映画を観た後間髪入れずにこの映画を観ているし…笑) 作品から情報だけ吸い取ったら満足して手放してしまう。そんな人は結構多いのでは? じっくりと自分の頭で考えて、咀嚼すること。それは作品に対してだけでなく、人生における色んなところで大切だと思うし、それが「豊かに生きる」ということなのかなと自分なりに思った。 『世界人権宣言』と共に渡される 「1番大切なことは、『誰にでも幸せになる権利があるということ』」というメッセージも、最後にふさわしいものだったと思う。 過去に弾劾されてきた思想たち、発禁本…。過去の偉人達によって、現代の私たちの基盤があるということ。なんだかとても考えさせられた。 ラストは、「やっぱそうきたか…」と思いつつも、まぁ正しいラストだったかなぁと。 本が様々な人の手に渡って、知識や物語を与えてくれるように、彼も少年やお客さんに思いを託していったんだなぁと。 良い余韻でした。
ページをめくる度に希望が生まれる
「丘の上の本屋さん」 イタリアの古本屋に通ってくる人たち、店主が差し出す本を通して人の温かさを肌で感じ、 本を読むということで ページをめくり物語に入り込む様に明日が愉しみになる。 何が生きる糧になるのか 少年の顔が物語る。 特別なお話ではないけれど、こんな人と本の時間は特別になってしまた。
本がますます愛おしく感じて・・・
イタリアのそれはそれは綺麗な風景の小高い丘の上にある古書店。老店主リベロと本好きな移民の少年エシエンのほのぼのとした心の交流のお話。本を読みたいけれど購入するお金が無くて諦めてしまうエシエンにさり気なく本を手渡してあげる優しいリベロ。古書店の隣のカフェで働く二コラや店に訪れる色んなお客とのユーモアあふれる会話が愉しい。ザ・イタリアの陽気さが羨ましい。リベロから手渡された本「ピノッキオの冒険」から「星の王子さま」「白鯨」「ドン・キホーテ」etcを読んでいくエシエンは、一冊読むごとに様々な気付きを手に入れていく。リベロは目に見えない力をエシエンに手渡してくれる素晴らしい大人。私もそんな意味ある人になりたいと思わされた。体調の思わしくないリベロが最後に手渡した一冊それが「世界人権宣言」だった。移民と言う境遇にあるエシエンにとって、これから生きていく人生の中で幾度もぶつかるで有ろう壁を乗り越えるための重要な一冊を手渡すリベロがとても素敵に見えた。石畳の歩道、レンガを積み上げた壁、明るい日差しと爽やかな風~そして何気なく隣人を気遣う優しさ・・ここで暮らして行けたら幸せだろうなぁと思わせてくれるスクリーンに引き込まれていった心に優しく語り掛ける作品。
本は心のサプリメント!
タイトルに心・持ってかれました! 眩しいくらい緑豊かなイタリアの小さな村にある丘の上の本屋さん 店主が常連客と何でもない日常を穏やかに過ごしている 移民の少年と本を通してのやりとり 店主と少年の会話の対等な流れは無駄が無く ずっと傍で聞いていたくなりましたし ニコラが働くカフェで濃い目のコーヒーを飲みながら田園風景を眺め「星の王子さま」を読みたくなりました ラストの少年の力強い瞳の中に彼の光溢れる未来が見えた気がしました 人生の楽園の様な あの場所に寄り添うように流れるピアノの旋律 アンティークなオルゴールの優しい音色 やわらかな陽だまりの様な心温まる作品でした 本は1度目は理解し2回目は考える …店主のこの言葉は映画を観る事に共通すると思えましたし 人権啓発の気付きも得る事も出来た学び多き84分でした 帰りの電車…誰もが下を向き無表情でスマホをいじる中 背筋を伸ばし文庫本を読む女子高生になんだかホッとしてしまった私でした
微妙な締め方
後味が悪い
爺様が子供に本を読ませ、感想を聞くというプロセスはシンプルに楽しい。
話は爺様の周辺に終始してあまり楽しくはないが、アリアのオルゴールなど、客に合わせた劇伴は小気味良い。
しかしエシエンの内面や境遇、生活環境がどのようなものかを全く掘り下げていないのに最後がアレだと消化不良。
途中に出てくるフィルムコミック批判も作家性と言えばそうなのだろうが、個人的には前時代的な意見に感じた。
いい感じで進んでましたが、、、
終わりよければ全て良しの真逆のタイプ。 店主の人柄と温かみのある設えが素敵な古本屋さんで交錯する大人たち(家族歴の提示がほとんどないこと、基本善意の人しか出てこないことに若干違和感があるものの)と貧しくも賢いアフリカ移民系少年の交流という心地よいシチュエーション。そうだよね、町の本屋さんて「学校」だったよなあと、ほのぼのと見ていた。 しかし、、、エンディングで、、、読書週間啓発の長尺広告を見せられていたのかと。 それだけじゃないとってつけた感は実際に見てくださいとしか書けないけど、ある意味「オチ」ありの映画だった。
これからでもどうぞ。
イタリアの最も美しい村(300以上ある)の一つチヴィテッラ・デル・トロントを背景にしている。フランスでもそうだが、海岸沿いのこうした村は丘の上というよりも、山の上にある(標高は600メートル前後か)。景色は素晴らしい、しかし暮らすのは大変で、それを維持できているのは、住民のとてつもない意志と努力に依るのだろう。村の広場に面した古書店が舞台。70歳くらいと思われる書店主のリベロの家族や経歴が明かにされることはなく、古書店での人々の交流が主題であることが判る。中心は、アフリカ移民の少年エシエンとのやりとり。様々な本を無料で貸し与えるうちに、最初はすぐ読んでくるだけの賢い少年(医師を志望しているようだ)であったものが、本の内容を受容し、成長してゆく姿が見て取れ、それをリベロが楽しみにしている。他にも、本を探しにきた若い女性と隣のカフェの給仕との出会い、ネオナチらしい青年、稀覯本や発禁本を探す学者、サドマゾ、それも最近の本を探す女性、本を拾って持ち込むことを生業とし、一獲千金を夢見ている男、なぞなぞが好きな男(監督自身)、などが次々に現れ、リベロは何にも誠実に対応する。それらのエピソードをつないでいるのが、拾ってきた本の中に入っていた、リベロが生まれた頃20代であった女性が書いた日記(50年以上は経っている)。リベロがそれを読むときには、必ず卓上のライトが灯されてオルゴールが流れ、これがいわば「展覧会の絵」の「プロムナード」であると知れる。次第に、リベロがエシエンに伝えたかったことが、本以外にもあったことを思い知らされることになる、ただそれには様々な伏線が用意されていた。最後にエシエンに渡す本は、もう少し何とかならなかったのかとは思うが、イタリアは移民の国だ。平日の午後のロングランとなっていることを歓びたい。
贈り物
イタリアの美しい丘に竚む古本屋さんのリベロと本好き移民の少年エシエンを中心とした、本を通じ交流する人々を描いた作品。 本は好きだが買うお金が無いと言うエシエンに様々な本を貸出し、その感想を聞くことを楽しみにし始めたリベロ。しかしそんなリベロはある問題を抱えているようで…。 全体を通し、変わり者だが皆善人の登場人物達が織り成す、心温まるヒューマンドラマ作品。 昔は地元にもこんな古本屋があったよな〜、なんて思い出しつつ、今の日本じゃ希薄になった見知らぬ人との交流なんかも平和に描かれており、心が和む。 ワタクシ自身も、本は買ったらそれで満足してしまい中々読まない質なので(リベロに怒られちゃいますかね…笑)、改めて色んな本を読んでみたいなぁと。。 映画が趣味なワタクシですが、どの作品にも何かしらのメッセージがある所は読書も映画も一緒ですよね。 理解と考察…う〜ん深い。 たまには一度観た作品をじっくり見返してみるのもアリでしょうか。尤も、その時間があれば新しい作品を観てしまうのがワタクシの性ですが。 そんなことを改めて考えさせられた作品だった。 また、最初はコミックに始まり、段々と難しい作品になっていき… 心なしかエシエンの表情もそれに合わせて逞しく少し大人になったような気がしましたね。 強いて言えば、最後はちょっと急展開過ぎというか…エシエンがもうちょっとそれに悩まされたりする描写があれば印象は変わったかもだけど。。 90分もない短い作品なので、そういうのもちょっと見たかったかも。そしてこのロックバラード…。凄く良い曲ではありましたが…笑 とはいえ、終始ポカポカムードで進んでいくのが本作の良い所かとも思うし、ニコラを始めとする他のキャラも皆良い感じ。 本好きは勿論、そうでなくとも映画好きなら中々に感じるものがある作品ですかね。 とても面白かったです。
思ってたより薄っぺらい…
もっと、しんみり、深くて、感動する映画かと思ってたら、薄く安っぽい… ガッカリ… これだったら観なくても、よかった…(笑) 最後、強引すぎる(笑) エンドロールに流れこむ時の音楽と展開… アレで、一気に安っぽくニセモノっぽくなった(笑) ポリコレうんざり(笑) もっと普通の映画が観たい!! 低評価👎️ 甘め評価で60点ぐらい(笑) ダメだ、こりゃ(笑)
エシエンの人生に幸あれ!
仕事で本に関わっており、年齢的にもリベロに近いこともあり、古書店の店主視点で、エシエンのことを見つめながら鑑賞しました。 ニコラやキアラ、ボジャンといった魅力ある脇役たちや日記を通して描かれる女性の行く末にも興味をそそられながら、やはり老店主と移民の少年の絆がどうなるのか気になります。 リベロから託された思いを胸にエシエンには幸多い人生を歩んで欲しいと思わずにいられない一作です。 やや説教じみた終わり方になるのが残念でしたが、それでもこの映画が伝えてくるメッセージを損なうものではなかったです。
ゴールイメージの共有。
知人のチョイスで知ったのがきっかけ。本屋さんが舞台というのが興味をそそられる。イタリアには数回旅行で訪れているが、この映画にはイタリアらしさが溢れ裏切らない。石造りの建造物と豊かな自然との対比、陰の輪郭線までくっきりと認識できるかのような強い陽光、人々の陽気さや軽妙さ、洒脱さ。 そんな社会に移民が紛れ込んでも、柔らかくそして程よい距離感で包み込む。現実では、このようにうまくいくことは、なかなか難しいのかもしれないが、一つのゴールイメージを地球人が等しく持つことは大事だと思う。 こんなおじいちゃんと小さい頃に会うことができたら人生変わってたかも、と思いつつ、子どもの頃はむしろこんなおじいちゃんが近くにいたら、ウザって思ってたかも(反省)
本好きによる、本好きのための映画
高1の娘と一緒に観たくて楽しみにしていた映画。 観終わった後に娘が「今までママと一緒に映画館でみた映画の中で1番好き。」とのたまったのを最初にお伝えしておきます。 とにかく優しい話だった。 ほぼ本屋さんとその隣のカフェしか映らないのに、やってくる人々がバラエティに富んでいて楽しいので物語が広がって深まる。チラチラ挟み込まれるイタリアの美しい風景もとても良くて、こんな国で生活してるから優しくなれるのかなとちょっと羨ましくなった。 読書量と本に対しての知識が半端ない古書店の主人が、移民の少年におすすめの本を貸して、彼を知識の泉に触れさせていく話なんだけど、人々の心の触れ合いが温かい。 主人も移民の少年も家族構成も何もかもわからないけど、愛されて育っただろなと思う優しい雰囲気。お隣のカフェの友人との交流も素敵だった。 お客さんがどんな人が来ても、きちんと話を聞いてその人が欲しているものを探そうとしてくれる店主を観て、こういう人が聞き上手っていうんだろうなあと思った。誰に対しても平等に対応していて、とても誠実な対応に心が温まる。 これは心からの本好きの人が、本好きのために作った映画なんじゃないかな。 めっちゃ帰りに本屋さんに寄りたくなった。笑
本を媒介として成立する豊かさと隠された反骨と
ゴミ箱から本をあさって売りに来る人、お金がなくて買えないけど本が大好きで医者になることを夢見る移民の少年、希少本を探しに来る大学教授、こだわりの本を探す人・・・・年老いた古書店主は、それらの人に対し、分け隔て無く接し、そのすべての人と、「本」を媒介として、そのそれぞれに応じた関係性を結んでゆきます。 つまり「本」と「自分自身」の1対1の関係で与えられた豊かさだけではなく、多くの人とその豊かさを共有することで得られる新たな豊かさとでも言ったらよいでしょうか。豊かさに広がりが出ている点がまた素晴らしいと思いました。あたかも本の言葉の種が伝播して、多くの実を結ぶように。 「ピノキオの冒険」「イソップ寓話集」「星の王子さま」「白鯨」を巡る少年との対話も良かったですが、面白いなと思ったのは、取り上げられている本が権威主義に反対しているものが多かったこと。ムッソリーニに反抗して監禁された詩人の著作やローマ教会から破門されたガリレオなどの「発禁本コーナー」だけでなく、ユダヤ教会から破門された反骨の哲学者スピノザや、マルクスの著作などなどの「哲学書コーナー」も(「誰も読まなくなったから多い」というのが笑えました)。 イタリアでは、その地理的な要因から、アフリカからの難民の窓口のようになっていて、不法移民問題が深刻となっているようで(外国人比率は日本の2.7%に対し10%を超えているそうです。)、昨年ついに、ムッソリーニにも肯定的な極右政党を中心とする連立政権が成立したようです。本作はその前年にイタリアで公開された作品ということになります。 店主が最後に少年に渡した本も、そう考えると意味深く感じられます。
すべての子供たちのための賛歌
本好きにはたまりません。そしてどこまでもやさしい!派手さはない、悪い人も出てこない、付き合いを深く掘り下げもしないが、一定の距離を保ちつつ見守り、最後に愛した知を引き継ぎ生きること難しさと立ち向かうための標をしめした、愛情に満ちたまなざしがたまりません。ただただ優しくただただいとおしい。世界中のどんな環境にいる子供たちにも、すべての子供たちのための賛歌。生きてよいのだと、自身を誇ってよいのだと、あきらめるなと、優しく背中を押してくれる、そんな素敵な作品でした。
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