「優しく諭して、気づきを与えてくれる映画」丘の上の本屋さん ともさんの映画レビュー(感想・評価)
優しく諭して、気づきを与えてくれる映画
個性豊かなキャラクターが古本屋に来て、リベロおじいさんや本と化学反応を織りなしていくのが、人間味があって優しく面白く、安心して観られる映画だった。
イソップ童話やキノピオなどの童話のような説教くささもあるけれど、それがどこか懐かしく温かかった。
キノピオを読みおえた少年がリベロに、「騙そうとするやつは、愉快な風を装って欺いてくるんだよ」と戒められたときに
「僕は土に埋めてお金が増えるなんて言われても信じないよ」「コオロギはこうるさいだけだ」と、巧みな言い回しで言い残して帰って行ったのも面白かった。笑
少年は、まっすぐで汚れなく危うく、美しかった。
イタリアの村の美しさ、音楽の美しさにもうっとり。
ハッとさせられる言葉も多く…(その多くは沢山の名作達の引用なのがまた感慨深い)
特に『白鯨』を渡すときの言葉が印象に残ってる。
「1度だけでなく、2度読むんだ。1度目は、作品を理解するために。2度目は、考えるために読む。作品から与えられるメッセージは1つだけでない。最初に感じ取ったこととはまた違うメッセージを受け取れるかもしれない」(うろ覚えの部分はあるけど確かこんな感じ)
私自身、映画を観るのも本を読むのも、どこか「情報を得る」ことが第一になってる今日この頃。
(実際今日も、一本映画を観た後間髪入れずにこの映画を観ているし…笑)
作品から情報だけ吸い取ったら満足して手放してしまう。そんな人は結構多いのでは?
じっくりと自分の頭で考えて、咀嚼すること。それは作品に対してだけでなく、人生における色んなところで大切だと思うし、それが「豊かに生きる」ということなのかなと自分なりに思った。
『世界人権宣言』と共に渡される
「1番大切なことは、『誰にでも幸せになる権利があるということ』」というメッセージも、最後にふさわしいものだったと思う。
過去に弾劾されてきた思想たち、発禁本…。過去の偉人達によって、現代の私たちの基盤があるということ。なんだかとても考えさせられた。
ラストは、「やっぱそうきたか…」と思いつつも、まぁ正しいラストだったかなぁと。
本が様々な人の手に渡って、知識や物語を与えてくれるように、彼も少年やお客さんに思いを託していったんだなぁと。
良い余韻でした。