「氷菓子」アイスクリームフィーバー ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
氷菓子
役者陣の振り分けが不思議な作品だなと思い鑑賞。監督はこれが初監督作品、良い方向に転がってくれるのか、それとも…。
はい、悪い方向に転がりました。相性の問題だとは思いますが、オシャレ一辺倒でどうにもむず痒かったです。画角だったり、止め方だったり、こだわりが強く感じられたのですが、商業作品でやる事ではないなと思いました。
ストーリーは時系列が少しズレているオムニバス的な作品で、美大を卒業したのちアイス屋で働く女性、1つの小説を書き上げて以降、書けずにいる女性作家、恋人を実の姉に奪われたOL、実の父親を探しにきたOLの姪たちの物語が交わったり交わらなかったりしながら進んでいきます。
アイス屋の女性と小説家の話、互いが夢をやり切れてない2人が出会い百合っぽい事やってたら、小説家は失踪し、アイス屋は店長任されたりという感じでポンポンポンと終わっていく事に疑問しかなかったです。小説家がアイスコーンを投げ捨てる演出、本物か偽物か知りませんが、食材を雑に扱った時点でこの映画はダメだなと思いました。このシーンが別に何かに活きたわけではないので、少しムキッとしました。
OLと姪の話、これ姪がとにかく振り回しまくっててイラッとしました。勝手に転がり込んだ挙句、父親探しの手伝いをさせますし、基本家でダラダラしてますし、届いた荷物を勝手に開けますし、それについて怒られたら半ギレしたりしますしで、好感度は地の底に落ちました。核兵器の話をし出したあたりで監督か原作者が憑依したんじゃないかぐらいベラベラ喋っていて相当キツかったです。
カメラワークのクセは気になるほどではありませんでしたが、ぶつ切りのようにシーンごとに映像を止めるのが気になって仕方がありませんでした。そのカットがかかるたびに画面への集中がプツンと切れてしまい、ショートムービーならそういうのもありだと思いますが、しっかり100分超えてる映画なので、そういうのはノイズだと誰か口止めしなかったのかなと思いました。
画角もスクリーンに映された時に一眼で分かる小ささで違和感が拭えなかったです。あとこれは劇場サイドの問題かもしれませんが、エキゾチックな音楽たちが爆音で耳障りでした。主題歌が流れるシーンは普通だったのに、劇伴だけ大暴れしていたのでそこも頭を抱えてしまいました。
詩羽さんが踊り出すシーン、もうこれは本当踊らせたかっただけだろと突っ込んでしまいました。踊る理由は訳分かりませんし、それがシーンに活きてきるわけでもないので、詩羽さん演技がとっても良かっただけにこのシーンが無駄にもっていかれたなと思いました。
全体的に女優さんたちの表情の喜怒哀楽が楽しめるので、その点では良かったかなと思います。特に松本まりかさんの色気と可愛らしさと悲哀に満ちた表情と、松本まりかさんのキャリアがドンと解き放たれていたなと思いました。
良いところもあるにはあって、背景の家具や服装のこだわりはとても感じられました。オシャレでしたし、役者陣もこの格好が似合うので、ここは見事に噛み合っていたなと思いました。あとアイスは食べたくなりました。シャレオツなお店のアイス1個分くらいの値段で買える業務スーパーの2Lアイスを食べました。
こだわりが全面的に出てきてしまうと独りよがりな作品が出来上がってしまうのが残念でした。監督も従来の映画の形とは違うものを作りたいという意識のもと作ったんだと思いますが、それをやるならフィールドはYouTubeやInstagramの方が形式的にはあってるのかなと思いました。こういう考えを無くしてどれもこれも映画と解釈できるようになれば良いんですが、長編PVにしか思えなかったです。数少ない今年のワースト候補です。
鑑賞日 7/17
鑑賞時間 11:35〜13:30
座席 C-7