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カイと名乗るヒッチハイカーが、黒人女性に襲いかかった差別主義者の男を止めた。たまたま持参していた手斧で。かなりおかしなシチュエーションだが、カイはこの事件が報道されたことで英雄扱いされ、ネットやメディアでもてはやされるが、今度は別の事件の容疑者として逮捕される……。実話じゃなかったら、ヘンテコすぎて脚本会議で却下されそうなプロットだと思う。
映画の半分は、カイという複雑なんだか単純なんだかピュアなんだか善人なんだか邪悪なんだかよくわからない男についてであり、もう半分はネットミームにして消費する現代社会のいびつさについて。後者のテーマの方がより掘り下げる価値があるように思うが、結果的にどっちつかずになってしまっているはもったいない。獄中にいるカイ本人は「自分不在で勝手に作られたドキュメンタリーであり、Netflixの搾取」と非難しているようなので、前者のテーマについてはカイの協力を得られていないことが掘り下げ不足の原因かも知れない。
とはいえカイよりもヤバそうなカイの母親とか、うさんくさいテレビ番組のプロデューサーとか、モヤる要素には事欠かず、興味を惹かれるポイントは多い。現実に起きたヘンな話を聞いてもなにを持ち帰っていいのかよくわらずただただ当惑するしかない宙ぶらりん感が、この事件やドキュメンタリーから得られる最大のものである気がしている。