「鈴木亮平のキャリアと原作愛が寄与した安心の実写化作品」シティーハンター ニコさんの映画レビュー(感想・評価)
鈴木亮平のキャリアと原作愛が寄与した安心の実写化作品
「シティーハンター」は、実写化運がいい。漫画実写化界隈のシカバネたち、原作の本質が蔑ろにされた仕上がりに原作ファン阿鼻叫喚、という歴史を振り返れば(近年は昔より佳作が増えたものの、実写化決定と報じられればいまだにファンの心に不安がよぎるのも事実)、古くは香港、近年はフランスと今回の日本と、違う国で3回実写映画化されて、うち2回が相当な高クオリティというのはけっこう奇跡だ(韓国ドラマ版もあるらしいが見てません)。
いやもう、びっくりですよ……鈴木亮平のファンなので演技と原作愛は信頼していたし、体格なんかバッチリだと思っていたけれど、正直お顔は冴羽獠にあまり似てないなと思っていた。
それが、動けば全く無問題。それどころか、彼がこれまでのキャリアで培った演技のバリエーションは全て冴羽獠をやるためだったのではないかと思うほど。変態仮面から大河から孤狼の血までやり切ってきた彼だからこそ、シリアスとおちゃらけのめくるめく緩急が高いレベルで成立していて(実写でこれを適切なテンポでやって、かつ実在感を出すのは何気に難易度高そう)、安心して見ていられた。声までだんだんCV神谷明に聞こえてくるし。見終えた時には、今冴羽獠をやれるのは鈴木亮平しかいない、と確信するに至った。
森田望智にも驚いた。前段階として、「全裸監督」の黒木香が朝ドラで昭和初期の専業主婦花江として出てきた時にまず驚いていたのだが。同じ女優とは思えないほどの花江との雰囲気の違い、動くほどに「そうそう香ってそんな感じ」と思わせてくれる演技に、女優さんってすごいな……と子供のような感想が湧いてきた。
特に終盤、敵のアジトでの香のコミカルなリアクションと2人のアクションのテンポのよさは、シティーハンターらしさがよく出ていて素晴らしかった。
ちなみに個人的には、アジトへ向かう車中で獠と阿久津(橋爪功)の会話の後、「言ったなあ〜はっは………大人の話だ。黙ってなさい」香「何も言ってないけど」のところの間の取り方と鈴木亮平の表情が大好き。ほんと上手い。
迫田孝也は「VIVANT」の印象が強すぎて、初登場シーンでLOREの社長の背後にぼんやり映っただけで、あーもうこいつが悪者なんだな、と思ってしまった。上手いんだけど、彼の背景の描写もないし、ちょっといかにもなキャラ過ぎたかな。
エンドロールの入りは、お約束「Get Wild」。この曲のイントロがラストシーンにかぶさってこないとシティーハンターが完成しない。アレンジにあたり、監督はイントロだけは変えないようにと念を押したとか。小室さんもいろいろあったけど、ここまで作品と不可分な存在になれる、アイコニックな曲を生み出す才能はやっぱりすごい。
エンドクレジットに神谷明の名前があったが、さっぱり分からなかったので調べたところ、槇村死亡のニュースを読むキャスターとして声の出演をしていたようだ。
筋書き自体はエンタメ至上主義といったノリなので、細部までリアリティを求める人にははまりづらいかもしれないが、エンタメはこれでいいんです。
是非続編を作ってほしいなあ。