君たちはどう生きるかのレビュー・感想・評価
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監督の白昼夢の追体験
ここ最近の作品であるハウルやポニョあたり見てると、監督は頭に浮かんだイメージを描写することを最優先にして、話の筋道や説明は『不思議なファンタジー』ってことでお茶を濁してる印象があり、今作はその症状が進行している感が強い。そういう意味では千と千尋は夢と現実の狭間をギリギリ保った最高傑作だと思う。
今作は何も考えず監督が見た夢のように映像美にトリップする鑑賞法が正解なんだろう…考えるな、感じろ的な。考察の余地はもちろんあるとは思うんですが。
7人の小バーバと可愛くない鳥たち
ジブリ作品を全部観てはいないのですが、観た中で、
好きな作品は、「天空の城ラピュタ」「魔女の宅急便」「ハウルの動く城」です。
嫌いな作品は、「かぐや姫の物語」「風立ちぬ」です。
つまらなかったのが、「コクリコ坂から」です。
本作は、私にとってつまらない作品に入りました。
まず絵です。炎のシーンなど背景は初めのうち、とてもきれいだったのですが、だんだん手抜きな感じになりました。お屋敷の母屋と増築したらしい離れはどんな位置関係だったんでしょうか。それに後半の別世界では部屋や通路がかなり雑でした。
それからキャラクター。ばあやさんたちが醜すぎます。千と千尋の湯ばーばは人間じゃないから気になりませんが、本作のばあやたちは見た目が汚な過ぎです。キリコさん、変わりすぎですよ。
「借りぐらしのアリエッティ」」でもお母さんが不細工でばあやが醜かったですね。
鳥たちが全く可愛くなくて、アオサギは私がカッコいいと思っている鳥なので残念でした。
どんなラストかまでは分からなくても、観客を驚かせる仕掛けが無いので何となく先が読めてしまう感じでした。
キリコさんやヒミの正体はすぐに分かってしまう一方で、分かりにくい所はわからないままでした。
内容に、宮﨑監督の考えが色々込められているのだとは思いますが、アニメ作品としてとにかくつまらなかったです。監督の熱烈なファンや、仏教や哲学に興味がある方や、様々な事柄に込められた意味を読み解くのが好きな方はそれなりに楽しめると思います。
<追記>(というか備考です)
私にはハマらない作品でしたが、海外で高く評価されるのは喜ばしい事です。
海外での題名は、「少年と青サギ」です。アオサギは、英語でgray heronという灰色のサギです。
灰色なのになぜアオサギ?そんなことはどうでもいいという人は読まないで下さい。
日本には色の名前がおそろしく沢山あります。鉄色、鈍色(にびいろ)、利休鼠(りきゅうねず)……青系だと群青、藍、茄子紺、花紺、浅黄(浅葱とも書く)……これは、黒い目の方が青い目より色が識別しやすいらしい事もありますが、長い歴史の中で、わずかな色の違いを楽しむ、色へのこだわりが強い文化が生まれたからでしょう。一方で、少しでも青みを感じれば青、赤みを感じれば赤、と呼んでしまう傾向もあります。灰色の馬にアオと名前を付け、茶色の牛をアカと呼んだりします。うちの犬の図鑑にも、柴犬の毛色はアカ、クロ、ゴマ、シロとあります。
というわけで、 アオサギは、青みがかった灰色の美しい鳥なんです。
4次元と高次元を行き来するお話?
上手くまとめられませんので言いたい事だけ。
一度観た印象としてはSFっぽい話だと思いました。インターステラーに近いというか。宇宙とか物理とかの話。
人間が高次の存在になる例としてまどかマギカの鹿目まどか、
シンエヴァンゲリオンの碇シンジ。
元々高次の存在だった例としてグリッドマンの新条アカネなどがありますが、
君たちはどう生きるかの中でそうなったのが大叔父様。
超常的な力を持った隕石に遭遇し高次の存在にランクアップ、この世(4次元時空)の管理者ポジション、いわゆる神様になってしまったのではと思いました。
大人向けの「ポニョ」
とても面白かった。前情報全く無しで観て良かったと思う。
宮崎駿の年齢を考えると、この作品が本当の本当に最後の作品になる可能性が高いので、「君たちはどう生きるか」というタイトルは我々や、スタジオジブリのスタッフに対してのメッセージのような気もした。
作品の印象として、「風立ちぬ」の時代背景で、大人向けの「ポニョ」をやった、という感じ。
ただ、この作品が万人向けに面白い作品かといえばそうではないと思う。
ぼくは夏目漱石の「夢十夜」やミヒャエル・エンデの「鏡のなかの鏡」のような、他人の夢の中の世界を面白いと思うような人間である。なぜそれを面白いと思うかといえば、ユング心理学的な世界観(万人の意識の根幹には万人共通の普遍的なものがあり、それがときに夢に現れる)を信じているからである。超現実的なフィクションというのは、ある意味で創作者の「夢」のようなものだといえる。だから、超現実的な展開や謎だらけの展開であっても、その解釈について考えることが楽しく、有意義であるように思える。
しかし、そういったことが全く無意味であるように思う人もいると思う。表現の意図が伝わらない、もしくは伝えようとする意志がない作品はエンターテイメントとして成立していない、という考え方も正論だと思う。
「ポニョ」では、トンネルは産道、トンネルを通り抜けた向こうの世界は死の世界(生まれてくる前の世界であり、死後に行く世界)ではないかと思ったが、この作品でも、「塔」の中は死後の世界のようなものと思った(若いころの実母(ヒミ)とキリコがいる点では時間を超越した世界でもある)。
ただ、それだけではない。塔の中(もしくはこの作品そのものも)はこれまでの宮崎駿作品の断片がパッチワークのように詰め込まれているようで、宮崎駿の脳内というか、精神世界のように思った。
ドキリとしたのが、大叔父が主人公に「血縁関係のある者にしか仕事を継がせることができない」、と言うところ。もしかして大叔父は宮崎駿で、主人公は宮崎吾朗、塔はスタジオジブリということ?(でも、そんな考え方、宮崎駿がするかな?)
塔がジブリを象徴しているというのは、何かありえそうに思う。大叔父とインコの大王がケンカするシーンは妙ななまなましさがある。インコ大王が「裏切りだ」とかいって激昂するセリフは、現実にそんなセリフを言った人がジブリ内にいたんじゃないかって気がする。
大叔父が純粋なクリエイター(つまり宮崎駿)としたら、インコたちはジブリの社員たち、インコ大王はインコたちの生活を保証する、ジブリの社長?
キリコが釣り上げたアンコウみたいな魚はリビドー、わらわらはそれをエサにして育つ創作の種、それが上空に昇って(昇華して)現実世界で顕現する(表現される)と作品になる。創作の種を食べてしまうペリカンは創作活動だけに没頭させてくれない雑事・雑念。インコやインコ大王は宮崎駿の精神的世界(もしくはスタジオジブリ)を生活の糧にしているジブリの社員たち、みたいな感じ?(でも、インコたちはこの映画ではすごく嫌な存在として描かれているので、もしインコがジブリの社員の象徴として描かれているのだとしたら、そんな映画を自分たち自身の手で作らせている宮崎駿はあまりに辛辣すぎる人間だということになるが…)
大叔父が現実の塔の中で消えてしまった、というのは、創作活動に没頭すると現実世界を生きられなくなってしまう、ということ。門に掲げられた文字、「我を学ぶ者は死す」というのも、同じ意味。
最後に塔が崩壊するのは、宮崎駿が死ぬ、もしくは宮崎駿の創作活動が終わることで、ジブリという会社が倒産するということ?(塔の世界の維持を継承させようとした眞人=主人公がそれを拒否したから)
積み木は映画作品の象徴な気がする。1つ1つの石は作品を構成する要素。これらの要素は純粋なものでなければならないし、絶妙のバランスで積み上げていかなければならない。積み木を作り続けている限りはジブリは存続するが、大叔父(宮崎駿)はそれを続けていくことができないから、主人公(宮崎吾郎)にその役割を継承させようとした。
塔の崩壊の直接のきっかけは、インコ大王が雑に積み木を積み上げてしまったから。「テキトーでいいからとにかく作ればいいんだよ」って態度で作っても、会社をつぶすってことか。「アーヤと魔女」のこと?
アオサギが何の象徴なのかは謎。アオサギは現実世界と塔の世界(死の世界、創作の精神世界、超現実世界)を行き来できて、主人公を塔の世界に誘って、敵でも味方でもない、というとても特殊な存在。いわゆるトリックスター。
(個人の妄想で終わってしまうはずの)創作活動を現実の経済活動につなげている、という意味では、鈴木敏夫なのか?
とりあえず一回観た感じではこんなふうに思った。また観たら全然違うように感じるかもしれない。主人公が宮崎吾郎の象徴というのは何か違う気がする…。
あと、変な話だが、この作品のいくつかの印象的なシーンについて、「以前に観た気がする」という不思議な感覚がある。デジャブとは違う。宣伝を全くしていなかったはずなのに、なぜこのシーンをぼくは知っているんだろう?と思ったところがいくつもあった。1年前とか2年前に実は一部だけ公開していたことがあったのだろうか? 変なの。
久しぶりにジブリ感が出ていて良かった!
題名的に、「コクリコ坂」や、「風立ちぬ」みたいに普通の世界の話なのかなと思っていましたが、ジブリらしい世界観の映画で、「待ってました!!」って感じに思いました。
アリエッティ振りかな?
こういうジブリをずっと見たかったので嬉しかったです。
内容に関しては1回見ただけでは全部は理解出来なかったというのが正直な感想です。
特に、母と義母はどういう関係なのか理解しきれませんでした…
もう一回見直してみたいと思います。
あと、あいみょんは何役だったんだろう…と思いました。
評価が低くなるのは、理解しきれないからつまんないと思う人いるからでしょうね。
小学生には難しく、大人向けのジブリなのかなと思いました。
今までの実績を信頼したこちらが悪いのか
一切告知無し、それでも映画館は満員。これが信頼される実績を持った監督だから成せること。
これから書くことは、大いに批判である。
「嫌なら見るな」と言われるだろうか、「ジブリファンなら黙って見ろ」「ファンなら公式からの供給を素直に喜べ」と言われるだろうか。
ひどい映画だった。ストーリーもめちゃくちゃだ。幻想的!神秘的!という肯定的な意見もある。分からないのだ。ピースが散らばったジグソーパズルをドンと置いて、「完成です。これが作品です。これが映画です、芸術です」と言われたような感じだ。
人を試すような作品は作ってはいけないと思う。映画なら尚更だ。映画ならストーリーで勝負しろ。芸術作品を並べて見せ続けるのは映画じゃない。自己満足だ。個展でやるべきことだ。
物語として考察しようにも、辻褄が合わなかったり、矛盾点が多くて、考察のしようがない。
「告知をしないことで作品に入り込ませる実験的な作品、それがよかった!」みたいな評価をする人がいるが、本来そうであるべきだろう。消費社会が加速してるから、失敗したくなくておもしろいという確信がなければ見ない人も増えたが、ネタバレをたくさん吸って映画に足運ぶ人はそんなに多いのか。少ないだろう。本来の映画の楽しみ方だし、作品のレビューをしろ。作品の良し悪しを上映の仕方やプロセスで評価するなよ。今後、レンタルとか配信で見る人には関係ないだろう。Amazonで「配送遅かったから低評価」とか言う人と変わらんぞ。
そして、告知しないことでネタバレの流出も大いに防いでいる感があるが、それで素直な低評価も弾圧されている気がする。
そして、「これまでのジブリのオマージュ」「監督の集大成、監督の頭の中」とかで評価されている方もいるが、それこそ監督の自己満足作品と言ってるようなものだろう。
本当にがっかりした。風立ちぬは本当に大好きで、何回見ても泣いてしまう。あれはストーリーが良かったから、声優の違和感も帳消しにできた。
今回の作品はただの芸能人声優当て楽しみましょう映画だ。暇つぶしの作品でしかない。
彼の一作品に惚れ込んだ私だからこそ、心の底からがっかりした。見なければ良かったとさえ思う。素晴らしい作品を作る監督というイメージを失いたくなかった。本当に本当に残念な映画でした。
これで正味の引退⁈宮崎さーんそりゃないよー
色んな方の書き込みを見て観に行こうか迷っていたが、捉え方は十人十色、自分は満足できるんじゃないかと思いきや多数派のん〜でした。
まずストーリーが現実的(義理の母が叔母とか…子供には理解し難い)すぎてジブリらしさが感じられず、更に追い討ちをかけるのが数々の大御所俳優、なかにはハマっている人もいたけど木村拓哉などメディア露出が多過ぎる為、感情移入出来なかった。
事前情報で冒険活劇と聞いていたのでラピュタやナウシカの様な子供が見てもハラハラドキドキし心に残る映画を期待していたので本当に残念で悲しく寂しい…
何事も盛りは過ぎ、消える。ジブリも
【スタジオジブリへ】君たちはどう落とし前をつけるのか!?
あくまでも個人的な意見です。
情報を一切明かさないで、売り上げを確保する手口に辟易しました。
よほど本作品に自信がなかったのか?ただの驕りだけなのか?スタジオジブリの姿勢に疑問です。
スタジオジブリも経営が苦しいのか?これで興行収入100億確実??でも、それで嬉しいのでしょうか?
映画鑑賞料金も二千円に突入しました。
物価高騰の時代に、僕らも何の情報をもらえないのはフェアじゃないと思います。
物語は、プロデューサーがおっしゃるような冒険活劇にはなっていません!!
序盤から中盤あたりまで、超絶に長く退屈でした。
後半は少し盛り上がりますが、宮崎駿大先生の独特の世界観ついて行けず、何も理解できずに終了しました。
映画は、まだ7月ですが、今年ワースト級のつまらなさでした!!
ですが、米津玄師君のエンディング曲だけは良かったです!!
しかし、それだけしか印象に残らなかったですね。
私たちは生きていく
宮崎駿監督最新作。
あれ、『風立ちぬ』で引退しなかったっけ?…なんてのは『もののけ姫』の時から毎度の事。
引退詐欺なんてよく言われるけど、きっとこの人は、新作を発表するとやりきって燃え尽きて引退を表明するけど、暫くしたらまた創作意欲が湧いてくるんだろうなぁ。毎回毎回それほどの入魂って訳で、何だかんだ新作を見れるのはやはり楽しみ。日本のみならず世界にも誇る宮崎駿=スタジオジブリ!
でも今回こそ本当に最後の作品になるかもしれない。宮崎監督は現在80歳超え。次また新作作るにしても5年~10年はかかるだろうし、年齢的に見ても。
それをこの目で見て、しかと受け止めたい。新作の度に昔の方が良かったと気の毒なくらい言われ続けているが(世間には高慢な輩が多すぎる)、長年に渡って我々を楽しませてきてくれた宮崎映画なのだから!
にしても今回は異例だった。言わずもがな、7月14日の公開初日まであらすじも声の出演も主題歌担当も非公表。それどころか、予告編も流さず一切宣伝もせず。全ては公開されてから分かる。
映画は宣伝して話題を作ってなんぼなのに、この徹底ぶり。『~SLAM DUNK』方式なんて言われているけど、極力宣伝を抑えて逆に興味を惹き付ける手法も面白いと言えば面白い。個人的にその昔、『トゥルーマン・ショー』なんて情報を抑えて公開すれば面白かっただろうに。
情報化社会の今。予告編でバンバン映像を流し(一番の見せ場すら)、SNSで調べりゃ公開前にネタバレすら出てる事も。そんなんで新作映画を見て果たして本当に面白いのか…? 映画は新鮮な気持ちで見たいのが本音。この点、今回のNO宣伝の仕掛人の鈴木Pと意見は等しい。
情報も出さず宣伝もしなかった事ですでに色々言われている。
ジブリの新作は9年ぶり(『アーヤと魔女』? 何それ?)。このブランクは予想以上に大きいと思う。ジブリはレンタルや金ローで見るものと思っている若い客層を劇場に誘う事出来るか…?
TVドラマやアニメシリーズを倍速で見、映画をネタバレ見てから見る今の世は、秘密のベールに包まれたこのスタジオジブリ最新作をどう見るのか。
公開から2日経ち、声の出演や主題歌担当などすでに情報がちらほら漏れ始めている。もうこれ以上待てないので、当初は休みの明日(月曜朝一)で観に行く予定だったが、仕事終わりの今日(日曜夜)急いで観に行く事にした。
宮崎作品の宿命。早くも賛否両論真っ二つ。
まだ数日しか経っていないのに、もうレビュー投稿数は500超え!
さすがは宮崎…!
見た直後の率直な感想を単刀直入に。
確かにこれは賛否分かれそう。
これまでの宮崎/ジブリ作品のエッセンスは詰め込まれている。それを醍醐味と見るか、新味ナシと見るか。
終わり方もあっさりで物足りなさも感じる。作品的にもあれやこれはどういう事だったのか、もっと情報が欲しい所。
でもその分、考察のしがいはある。
『もののけ姫』だって初見時は難しく、賛否分かれた筈だ。何度も見ていく内に、見て考察していく内に、人それぞれの鉱脈を見出だした筈だ。
本作だって同じ。すでに意味が分からないと酷評意見も多い。
分からなくて当然だ。初めて見るのだから。
これは自分に合わないと見るのもいい。分からなかったらまた見るのもいい。自分に合い、色々考察してまた見るのもいい。
新たな作品を見るは、異世界への冒険。そういった意味では、れっきとした宮崎作品だ。
個人的には、宮崎作品のベストとまではいかなかったが、そう悪くなかったと思う。宮崎/ジブリの王道的作品を素直に楽しめた。
それを踏まえて、自分なりの考察を。
※※がっつりあらすじやネタバレに触れてますので、まだ見てない方はこの先は絶対に読まないで下さい※※
まず予告編も流れていなかったので、本作の映像を見るのも初めて。
2014年に一時映画製作から撤退し、多くの逸材やアニメーターが離れたそうで、クオリティーを心配したが、あぁちゃんとジブリの画だ。
やはりジブリはセル画アニメ。ビミョーなクオリティーの3Dジブリなんてない…?
舞台は戦後直後。こう始まるのか…。
今まで伏せられていたあらすじだが、要約すると…
戦争で母親を亡くした少年・眞人。軍事産業に携わる父親は亡き妻の妹・ナツコと再婚し、相手の屋敷で暮らす事になる。
広大な敷地には池もあり、鷺が飛ぶ。裏山には古ぼけた塔が…。
不思議な塔が気になる眞人。
ある日ナツコが姿を消す。塔の中に消えたかのように。
眞人は鳥人間のような青鷺に誘われ、塔から異世界へ足を踏み入れる…。
これまでの宮崎/ジブリ作品のみならず古今東西のファンタジーを詰め込んだような話や設定、展開だ。
現実の世界で心の傷を負う主人公が異世界での経験を通じて生きる意味を見出だしていく。本作の主人公・眞人の場合、母親を戦争で亡くした事が深い痛手となっている。それ故父親や新しい母親になるナツコに隔たりを感じている。性格は真面目で誠実そうだが、跳ねっ返りの面も。
異世界の描写は美しい。さすがはジブリ。
が、全てがファンタスティックで美しいだけじゃない。暗や死、滅びの陰も。
何処となく異様でもある世界観は『不思議の国のアリス』を彷彿させた。
我々の世界が“上の世界”と言っていた。ならば地下世界…? 否。
その昔、空から落ちてきた石によって出来た世界。いや、通じ、開いた世界というべきか。
我々の世界とは全く異なる。単純に異世界でもあるし、死後と通じる世界でもあるし、現実世界や自分の心が反映されたような世界でもある。
この世界へ通じる塔は『千と千尋の神隠し』の不思議のトンネルのようだ。屋敷内も湯屋のよう。
謎の少女・ヒミとの出会いや誘われた洋風世界はジブリの洋ファンタジーのような世界。
このヒミと眞人の関係…。『思い出のマーニー』のようだ。
毅然とした眞人の姿や弓矢を構えた姿などは『もののけ姫』のアシタカだ。
戦争時代は『風立ちぬ』や『火垂るの墓』と通じる。
他にも彷彿させる点や要素も。
ジブリ異世界には個性的なキャラは付き物。奇妙なキャラもいれば、まっくろくろすけのような新たなマスコットにもなりそうなキュートなキャラも(“わらわら”と言ったっけ)。
食指そそる“ジブリ飯”も勿論。
ジブリはジブリだ。
同名小説はあるが、その映画化ではなく、宮崎のオリジナル・ストーリー。
見ていて眞人は、宮崎の少年時代を投影したのではと思う。
年代的にも同世代。好奇心旺盛で小生意気。
宮崎は同タイトル小説に多大な影響を受け、眞人も小説を読んで涙する。
眞人…いや、宮崎少年はこの異世界での冒険を通じて何を見出だしたのか…?
現実の世界なんて悲しい事、嫌な事、辛い事ばかり。眞人もそう言っていた。
だからつい我々は、別の世界へ行きたいと思う。現実逃避でもあるし、最悪の場合この世界から旅立とうとも…。
別の世界が理想的な世界とは限らない。より過酷で現実的で、試練を強いられる事も…。
あの異世界は生まれ変わりの世界とも考えられる。何かの事情でこの異世界に落ち、必死に生まれ変わろうとする。
本当の生死でもあるし、眞人のように生きる活力を見失ったものがまた生きる活力を取り戻していく。
独りぼっちだと思っていた。が、ヒミ、キリコ、青鷺…。
異世界で友達と出会えたように、きっと現実世界でも見つける事が出来る。改めて触れる事も出来る。見守ってくれる父、ナツコ、おばあちゃんズ。亡き母も…。
君は生まれ変わる事が出来るか。
確かにちとストーリーに分かりづらい点はある。と言うか、突然話が飛んだ?…と思った点も。
公開まで唯一の情報だったポスターの“鳥人間”。なるほど鳥がモチーフにされているが、青鷺やインコやペリカンなどどういった意味合いがあるのか…?
不思議な異世界ファンタジーの雰囲気は充分だが、胸躍る冒険活劇心は今一つ触発されず。
これは心の彷徨を描いた旅であり、深いようで抽象的でもあり…。
本当に宮崎作品の中でも好みが分かれるだろう。良くも悪くも。
まだまだ把握出来てない点も多々。
伏せられていた声の出演だが、眞人にはこれからブレイクするであろう若手俳優を配し、周りはこれまた豪華。菅田将暉は『打ち上げ花火』や『シャザム!』吹替では下手だなぁ…と思ったが、今回はなかなか良かったのでは。キムタクも脇に徹してた。木村佳乃は何だか艶があり、柴咲コウやあいみょんらも好助演。
同じく伏せられていた主題歌担当は、米津玄師。宮崎×米津…果たして合うのかと思ったが、エンディングを美しく謳い上げた。
久石譲の音楽も言うまでもなく。
眞人は終盤、思わぬ人物と会う。その人物から託される。
新しい世界の創造。
世界は悪意に満ちている。少しバランスを崩しただけで崩壊してしまう。積み木のように。
新しい世界を美しい世界にする事が出来るか、醜い世界にしてしまうか、君たちの手に掛かっている。
大おじから眞人へ託された新しい世界の創造は、宮崎から今を生きる若者たちへのメッセージだ。
いつの時代、どの作品でも宮崎は問い掛けてきた。
生きるという事。
死ぬという事。
立ち向かう事。
切り開く事。
冒険する事。
夢を持つ事。
愛する事。
自分自身の手で。
君たちはどう生きるか。
宮崎駿からの直球の問いに、我々も直球で応える。
私たちは生きていく。
キョト〰︎ン
「意味がわからない」というレビューが不安な方へ
「わからないならつまらないかな…?」と不安になる人も多いかもしれない。
そんなことないから安心しろ!
説明されない部分も多々あるけど、その程度は他のジブリ映画と同じです。
今作のわからなさは、ナウシカなんかと同じような『わからなくても楽しく見れる』タイプのものだと私は思います。
「うわー!ママー!」「鳥こわ…」「あばよ…( i _ i )」と、
作中世界の成り立ちを理解できなくても、駿がこの作品に込めたメッセージが何なのかがわからなくても、考察なんかしなくても、ただただ画面に映っているものを見ているだけで興奮して、楽しかったです。
アニメもジブリも詳しくないけど、多分映像とか作画も凄まじいです。
冒頭の走るシーン、炎、飛ぶ青鷺…見ていてぞくぞくしました。
知識も文才もない浅いレビューですが、見ようか迷っている人の助けになれたら幸いです。
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