君たちはどう生きるかのレビュー・感想・評価
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理解できた上でお金返して欲しい
ジブリ、宮崎駿、これらのワードを取り除いて映画と向き合っていただきたい。いったい、これ、何が面白いの。面白くないよなって話題にするために、俺はお金を支払ったのか…逆であってほしかった。とにかく不快。
世論への考え→①理解できるできないで面白いは決まるのは確実。こうやって話題にでてるわけだし。決まらないならまず論争にならない。②想像する、自分なりの解釈ができる映画→別にどの映画でもそうですけど?なんか"特別"が強くて笑える。③これはアート→知らんがな。こちとら総合芸術見に来てるんすけど。美術館でやってくれ〜。
ただ前情報なしで映画鑑賞できたのはよかった。でもそれは、この映画じゃなくてもできることだな。
子供向けではありません。
タイトル通り、お話の導入までの下積みが長く、またキャラクターや背景をそのまま受け取れないハイコンテクストな作品ですので、子供向けではありませんでした。
少なくとも、寝る前に読み聞かせていた絵本を勝手に読み進めてしまうとか、小説や物語を貪るように読むような子でないと厳しいと思います。
以下、ネタバレを含みます。
初見なのでキャラクターや背景が何を表しているのか、まだ掴めていない部分もありますが、少なくとも大叔父は宮崎駿自身で、隕石は想像力、積み木は宮崎駿自身が作り上げてきた映画、もしくはスタジオジブリではないかと思います。
塔の中の世界は宮崎さん自身(大叔父)がかつて美しいと感じて取り入れた物(海、帆船、鳥たち、魚たち、青鷺、ヒミ、キリコなど)を表しており、時間が経つにつれて自分の悪意や美意識と現実の捩れの影響を得てしまうのではないか、と解釈しました。
キリコは大叔父が見染めたんでしょうか、可愛らしい上等な(奉公に来る女の子には買えない)ワンピースが吊るされているそうです。
キリコやヒミが成長していないところを見ると、一度塔の中に取り込まれるとイメージ体だけが塔の中の世界を保つために取り残されるのかな、という風に考えています。
さらに言うと、本体が再度取り込まれるとイメージ体の、大叔父が美しいと感じ時の姿のまま動くことになるのではないか?とも思いました。
ラストで母であるヒミとキリコが元の時代に戻っていくシーンが?でしたが、本体がイメージ体として動いているので、本体を取り込んだ時期に戻してやらないと戻れないのだと思います。
インコ人間が楽園のセキセイインコを見て「ご先祖様」と言っていましたが、楽園が世界を生み出す場所なのだとしたら、世界はイメージ体が解き放たれる場所なのでしょうか。
青鷺はどういう存在なのか、インコたちは何を表しているのかなど、疑問が尽きませんので、もう一回見てこようと思います。
映画における要素の重要性
一切の情報を明かさず公開して賛否両論が渦巻く中での鑑賞。
物語は眞人という少年が地獄に迷い込む話、みたいなのが簡潔な物語のあらすじだ。
全て観て、大変驚いた。
伏線を全て回収せずに謎を謎のまま終わらせたのだ。
よく映画の中には「これはあなた達が考えて下さい」と投げ、皆が考察するみたいなものがあるが、これはマジで何にも言いようがない。
いろんな魅力的なキャラもいる。
だが、物語としてあまりにも破綻しすぎている。
これに★5を付ける人は、ジブリと宮崎駿というブランドを過大評価しただけだと思う。
しかし衝動的な感覚だけかもしれないので、今の状態ではこの評価。
難しい。
はいぃ?
つまらなくは無かった気がする。
が、サッパリ意味がわからない。
解らない事が多すぎて、何が解らないのかも解らなくなってきた。
とりあえず、タイトルに何の意味があるのか?
ラストはあんな終わり方? バッサリズッパシぶった切られたけどあのラストは唖然としたよ。 エンドロール後に何かあるのかと思ったよ。
絵はとても綺麗だった。さすがのクオリティ。 でもファンタジー世界で少年少女の冒険物語が観たかったな。
ヒミが可愛かったよ。
とにかく頭の中は『?』だらけです。
事前情報非公開は正しかったと思う。
観終わってこの作品だからこそ、一切の前情報を非公開としたのは正しかったと思いました。
適切な宣伝の伝え方も難しいなと感じることもそうですが、この作品は前情報がないフラットな状態で観るべきだと思います。
スタジオジブリの作品だからこんな感じだろうというような先入観も持たず、宮崎駿監督の一つの作品として、正面から作品を観るべきです。
(まぁそもそもの話、宮崎駿監督の近年の傾向から単純な冒険活劇が繰り広げられるような作品が出てくるとは考えない方が良いと思います。)
スタジオジブリの主な作品を観ている方は、是非一度観ていただくと良いと思います。
私は、面白い云々の前に観て損はなかったかなぁと思いました。
【最後に一言】
思ったより飲みやすい宮崎駿監督の原液だなぁと思わせて来るのは、監督流石だなぁと思いましたまる。
ただただ素晴らしい
予備知識なく観たが、評価が分かれるという噂だけ聞いていた。観てみて、いや、これは素晴らしい作品。宮崎アニメの創造性の極地。うれしくてニヤニヤがとまらない、あっという間の時間だった。宮崎駿の遊び心と毒々しさがふんだんに詰め込まれた、宮崎駿ぶっちぎり映画。宮崎駿の創造力を全身で体感できたことに感激している。
【生と死】【あの世とこの世】壮大な宇宙観の物語
◎ストーリー
戦時中、母を火災で亡くし、父の再婚を機に2人で継母・夏子の実家でもある立派な屋敷で暮らすことになる。ここは母の生まれ育った屋敷でもあった。真人が屋敷にやってきた時から不思議な出来事が度々起きるようになる。ある日、夏子が敷地内の森の中から帰って来なくなった。真人は、アオサギの仕業だと感じ、夏子の大叔父が建てたと言われる敷地内の不気味な塔に入り、夏子を探しに行く──。
その塔はあらゆる世界、宇宙を繋ぐ不思議な塔で、そこから真人の摩訶不思議な冒険が始まる。
◎感想
死の世界、動物との共存などのテーマを散りばめた宮崎駿らしい作品である。『千と千尋の物語』をはじめ、他の宮崎駿作品とも通ずるところが……。時間を忘れて夢中で見てしまった。だけど、見終わった後の余韻や高揚感は、過去作品と比べると劣る気がする。今作の評価が分かれる理由の一つに、スピリチュアル要素が大きく関係しているのではないだろうか。スピリチュアルや輪廻転生、あの世この世の話が嫌いな人にとっては、訳の分からん物語、あるいは白けてしまうかもしれない。だけど私のように、目に見えない世界を信じている人、興味関心のある人にとっては、とてもワクワクする世界観になっている。
そして、“君たちはどう生きるか”。
これからの未来を生きる若者へ──。というタイトルには、世界は君たちの手によって作られていくというメッセージが。平和な世界にするのも、不安定な世界にすることも君たちの手にかかっているのだと。
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⭐️⭐️以下ネタバレのレビューと考察⭐️⭐️
義母の夏子と真人の実の母は姉妹だったということだろうねど、真人にとっては複雑だっただろう……。
黄泉の国で出会う、火を魔法を使う女の子は実の母がの幼い頃の姿だったということか……!?
真人の窮地に彼女が現れ真人を助ける。そして、最後のシーンのセリフではハッキリとそのことを口にしている。
キリコさんはあの仕様人のお婆さんの生まれ変わる前の姿?
白いモフモフした物体(名前なんだっけ?)が、これから生を受ける人たちというのもなんだか感慨深い。
ちょっと謎が多かったり、話の筋が合わないことも多かったので★4つですが、それでも宮崎氏の強いメッセージ性を感じました。
美しさと汚さ
賛否あるけど、僕は感動しました!孤高の天才作家、宮崎駿監督の思考やイマジネーションそのものを覗き見ることができたんだから。封切り前からシークレットにされてきた内容は語れないけど、最後の作品にふさわしい秀作でした。
多分主人公は宮崎駿そのもので、彼の生み出す幻想のパワーが見事に映像化されている。ワンシーン・ワンショットに全知全能を傾けた、アートディレクションは美しく楽しい。宮崎ワールドを堪能しましたよ。エンドロールの声優陣に驚くから、お楽しみに。
映画作品で描いてきた様々な美しさの裏には、汚さがある。そんな悪意を排除せず、あえて描くことが最終章の目的だったのでしょうか。
君たちはどう生きるか?「僕は最後に自分が作りたいものを自由に作ったよ。」そんなほくそ笑む宮崎駿監督の気持ちが響いてきました。だから酷評もザマアミロなのかもね。僕もそんな粋な姿勢を見習いたい。宮崎駿さん、忘れられない素敵な作品の数々をありがとう。
ラストメッセージ
今伝えなければならない想いを最後に全部詰め込んでくれた。
そのメッセージをどれだけ受け止められるかで評価が分かれる作品。
まだまだ描きたい、伝えたい事がある中で抗えない老い。後継者の難しさ。残る世界の危うさへの不安。現実問題をも投影した宮崎駿の集大成としては最高傑作だと個人的には感じました。
印象的だったのは鳥たちの描き方。
欲を持てば人間のように醜くなり飛ぶことも出来ない。元の姿になれば自由に空を飛べるが糞を撒き散らす。
美しさと汚れと儚さこそが生命。
生命への畏敬の念が宮崎駿作品全体のテーマだった気がします。
終盤のセリフと描写には宮崎駿の想いが詰まっています。
主題歌も良かったです。
もう彼の作品が見れないと思うと切なくて自然と涙が出ます。
想いを引き継いで行きましょう、皆で
まるでわかりませんでした
今作、まるでわかりませんでした。
前半と後半でまるで別の映画のよう。
アニメーションがヌルヌル動くのはさすが。映像表現が進化しています。
しかし、内容がとにかくわからない。同じファンタジーでも千と千尋の神隠しのようなわかりやすさがありません。
わからないので評価は星3つとしました。
皆様のレビューどおり?
本日、ようやく観賞しました。
賛否両論…それもなるほど。
訳わからん…ふむふむ…集大成とも書かれてましたね。
宮崎監督は何を描きたかったのか、何を伝えたかったのか。
これまでの作品中で気に入ったところとか描ききれなかったところとかを盛り込んだ?オマージュを感じる部分がたくさんありました。
で、君たちはどう生きるか…と我々に問いかけているのか…
いろいろ不思議な内容が始めからてんこ盛りで、後にどう繋がって行くのかと首を傾げてたらエンディングでした。
個人的な感想は…難しいですね。
理由は監督の思い?が私には理解出来ませんでした。結果、不完全燃焼
ストーリーもキャラクタ関係もわかるんですが…なぜにここでこのキャラクタなのか?
いろんなキャラクタがワラワラ出てくるのは千と千尋の神隠しの八百万の神々みたいなんですが、表情はまるでポニョのキャラ!
う〜ん…なんと言ったらいいのやら
これが完成形なんでしょうか、監督!
ジャムパンのシーンに感じ入った。
宮崎駿監督は、ちゃんと汚いものは汚く、臭いものは臭く描くのが好きですね。千と千尋の神隠しに近いがあれほどエンタメしてなくてメッセージ性が強いと思います。
眞人は自傷も厭わないし、自分を汚物で汚すことも厭わない、あるいは何者かを殺傷することも厭わない。それだけ母の死が大きく自分をないがしろにした自暴自棄。
夏子は夏子で眞人の最も信頼ある人物、彼の父の様に裕福さや安心の暮らしを眞人にアピールして受け入れられたいのに、そもそも眞人は母そっくりな姿で現れた挙げ句父の様に振る舞い、母の愛した男と愛し合う夏子に心を開けない。
眞人には自分がやってる事への罪悪感が確かにあるのに意固地で表に出せない。これ見よがしに自傷して父に甘えても夏子は拒絶する。戦時中にしてはあり得ない位恵まれた生活を送れているのにそれも態度で反発する食事シーン。それでも眞人と何とか分かり合いたい夏子への酷いお見舞い。そこに垣間見える子供の未熟さ。
その結果として、あの世界に閉じ籠った夏子の吐き出した本音は眞人が初めて生で触れた己の罪深さそのもの。ここではまだ罪悪感や贖罪から夏子を母と叫ぶ。夏子は大人で、眞人へ酷い本音をぶつけた自分に思わずハッとして、何とか弱った心で姉の声に応えようとするところが私は好きですね。
あの世界で、人に助けられなければまともに生きることも出来ない眞人が己の小ささを思い知りながら周囲の人達の愛に気付きながら、自分を破壊して再誕させる物語に感じられました。夏子も眞人とは違う形で自身を再誕させている。
あの汚ならしいジャムパンの食べ方、母を相手に子供の純真な幼さがよみがえったんでしょうね。それにあの時、我が子へ口を拭うものを母が差し出してました。あれは眞人と夏子への愛に溢れるシーンなんだと思ってます。
あれ最後のシーンで夏子も眞人もインコの糞まみれになったのに、次の瞬間顔がキレイだったのは、母の愛と同じく拭ったんですよ、母から貰った愛を同じく母である夏子に返した事で親子になれたシーン。ここに生きてたシーンだと勝手に思ってます、あの汚ならしいジャムパンのシーンw
宮崎駿監督作品エッセンスを潤沢に盛り込んだ少年の成長物語
学生時代、授業の合間に近くの名画座で貪るように映画を観ていた時期がある。その時に、喝采、波止場、白鯨、などの名作に出会い感銘を受け、事前情報ゼロの映画鑑賞の醍醐味を知った。以来、現在に至るまで、極力、原作を読んだ作品は観ないし、事前情報は最低限での映画鑑賞が続いている。本作の事前情報ゼロを聞いた時には、久々に学生時代の感覚が味わえると思うと公開が待ち遠しかった。
予想通り、先が読めない、何が起きるか予測不可能な、宮崎駿監督作品のエッセンスを潤沢に盛り込んだ、らしい作品だった。無心で画面を追い続けた。本作の舞台は、太平洋戦争中の日本。主人公は眞人。彼は、住んでいた東京の空襲で母を失い、父は母の妹なつ子と再婚する。なつ子は妊娠する。3人家族は父の実家に疎開する。疎開先は、となりのトトロを彷彿とさせる雰囲気がある。そこで、主人公は、虐められたり、ふとした切っ掛けで、人間界とは違う異世界に触れ、摩訶不思議な異世界の多様な価値観を知る。ここは、千と千尋の神隠しを彷彿とさせる。また食物連鎖の非情さを改めて知る。貴重な経験をして眞人は、大きく成長していく。
ラストシーン。眞人一家は東京に戻っていく。眞人が疎開してから東京に戻るまでの数年間のプロセスは、眞人が疎開先での体験を通して自分の生きるべき道を定め行動していくプロローグである。眞人はどう生きるかを決めた。そして、日本の戦後復興に貢献、尽力したと推察できる。
では、本作を観終わった観客=君たちは、今後、多様化が進み、科学技術が進歩し、ますます複雑化する社会のなかでどういう価値観、覚悟を持って生きていくのですか。誰も教えてくれません。君たち自身が、今後の人生をどう生きるのかを決めて行動して下さい。ラストシーンの眞人の東京に戻る姿を通して、本作は、我々観客に、そう強く主張していると感じた。日常に追われ漠然と生きていくのではなく、本作を機会に今後どう生きていくのか真剣に考えていきたい。
笑止。集大成とは過去作のコラージュばかりの意か?!
2013年の「引退宣言」を撤回しての『宮﨑駿』の十年振りの新作は、
前宣伝無し、チラシも無し、パンフレットさえ後送。
事前に公開されたのはポスター用のビジュアルが一点のみと
イマイマでは異例の「逆」プロモーション。
情報さえあれば、
行きたい・行きたくないの判断をきちんとすることができるのに、
それが叶わぬ本作では、様々な感想が飛び交うことは容易に想定。
言ってみれば、『宮﨑駿』に対する自己の勝手な事前期待と
それがどの程度充足されるかにより
鑑賞後の満足度は大きく揺らぐハズ。
自分にとってのここ四十年の「宮崎作品」は
ほぼほぼが「女の子がお掃除をする」オハナシ。
勿論、その「掃除」には大小アリ、
地球規模から自分が住まう予定の部屋まで様々。
ただ、それによって彼女達は、成長への階段を一歩上がるのは共通、且つ
鑑賞者がカタルシスを得る点に於いても。
翻って本作の主人公は少年。
また、舞台は第二次大戦中の日本と特定されている。
東京への空襲で母親が入院している病院は焼けてしまい、
『牧眞人』はこの上ない喪失感を味わう。
それを機に母親の故郷である疎開するのだが、
そこには彼女の妹『ナツコ』が住まう古い屋敷が。
地元の名士でもある旧家には、
昔から不思議が起こると言い伝えられ、
少年は否応なく、いや明らかに自分からその渦中に飛び込んでいく。
主人公の性格は直情、物おじをせず意志も強固。
怖いもの知らずで知性も高く臨機応変。
一方で身内や使用人にも優しい心根を見せる。
ただこれは、過去の女性キャラの総和を男性に変換しただけで、
成長も含めて変化は見られぬ。
ドラマの前半部はリアル。しかし中盤以降、
一気にファンタジーの世界になだれ込む。
その仕掛けが如何にも『宮﨑駿』らしいものの、
場面場面を見れば、過去作品のコラージュとしか思えぬものが大半で既視感がありまくり
(含む〔ルパン三世 カリオストロの城(1979年)〕)。
また、『柳田國男』の〔遠野物語〕からの借用、
〔2001年宇宙の旅(1968年)〕を思わせるシーンもありで、
全体的に新しさが見られない。
「わらわら」が天に昇るシーンですら
タイ・チェンマイの「コムローイ祭り」で、
加えて〔塔の上のラプンツェル(2010年)〕で観てはいなかったか。
二重螺旋で上がって行くのは新機軸だが。
とは言え、初期作の〔パンダコパンダ(1972年)〕を思わせる
不条理な世界観は個人的には好ましい。
また、大団円の場で、お手伝いの老婆達が皆々得物に掃除道具を携えていたのには
思わず笑ってしまった。
「君たちはどう生きるか」の題を借用した意味とは?
この映画の感想をどこかに吐き出しておきたい、と思った。
映像と構成は素晴らしかった。
この映画は
「(少なくとも後半については)『眞人』の年齢向けの空想冒険活劇」
「眞人が(当時の)宮崎駿監督本人の投影」
「『大おじさま』が宮崎駿監督の映画創作の投影」
いずれにも受容できるように作ってある、と観た。
そういう意味で、構成の完成度は高い。
ただ、いずれの読み方をしても、正直なところピンと来なかったのが率直なところ。
「すごいのに好きになれない」というのはあまり無い鑑賞経験だった。
本作はあくまで宮崎駿監督のオリジナルで、「君たちはどう生きるか」は作中で主人公が読む本として登場し、実際は全く違う本を下敷きにしているらしい。
ただ、本作はそれでも「君たちはどう生きるか」と題している。
その「本歌取り」の責任を果たしているかというと……個人的には、到底そうは思えなかった。
元の「君たちはどう生きるか」は、太平洋戦争の前、日本が軍国主義的に傾いていくなかで、「人間としてのよい生き方」について、明確に軍国主義へのアンチテーゼとして書かれている。
必ずしも吉野源三郎のスタンスを盲信すべきとは言えないかも知れないが、本作は果たして「君たちはどう生きるか」の「本歌取り」足りえるだろうか。
本作の冒頭は戦中の、まさに「君たちの」発刊よりしばらく後の情景から始まる。
しかし、眞人は「君たちの」のテーマの大半とは向き合わず、畢竟自分の内面と向き合うだけで終わってしまう。
自らの(経済的に)恵まれた状況とそうでない者とのギャップ、人間に対して何を与えうるか……といった「君たちは」のテーマも、そもそも「君たちは」が軍国主義・全体主義へのアンチテーゼであることも、本作では一切触れられないし、配慮もされていないように見える。
インコたちもペリカンたちも、「眞人の元の世界」に飛んできた途端、ただの「可愛い鳥」になってしまう。
眞人は(父の軍需産業の恩恵を受けて)戦中から戦後まで一貫して豊かな暮らしを享受し、何の疑問もないまま本作は終わる。
これが宮崎駿監督自身の投影なのかはさておき、眞人は作中で「君たちは」を読み、涙していたはずなのに、一体何を受け取ったのだろうか。
単に「自身の悪意や弱さに向き合う」だけで、その他のテーマを何ら顧みないのでは、「わたしは好きに生きる」にしかなっていないのではないか。
「君たちは」を冠しながら、自身のエディプスコンプレックスに向き合って終わり……では、原題に応答できているとは到底言えないのではないか。
本作が敢えて事前情報を遮断したことは、国粋主義的なフェイク情報が氾濫するインターネットと距離を取ったのだと思えば、ある意味では「君たちは」に対する現代流の応答になり得たのかもしれない。
ただ、本作を観た限りでは、吉野源三郎に対する応答ができていたとは思えなかった。
何をおいても吉野のスタンスに準じるべし、とは思わないが、原題を借用する以上は、少なくとも「君たちの」に現代の立場から応答するのは当然の筋なのではないか。
それが為されていない、というより放棄されていたように見えるのが、個人的には非常に残念だった。
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