君たちはどう生きるかのレビュー・感想・評価
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主人公は監督の分身で、ジブリで溢れている宮崎作品の集大成。でもストーリーやや薄め。
吉野源三郎の小説「君たちはどう生きるか」(1937年)からタイトルを借り、内容は小説と異なる宮崎駿監督のオリジナル。新作の設定やストーリーはそう説明されているが、間違いではないにしても、十分でない。小説と映画が同じなのはタイトルだけではありません。映画で描かれているのは、小説に宿る精神そのものではないでしょうか。
宮崎駿監督10年ぶりの長編は、視覚の大冒険、めくるめくイメージの連打。それらを突き通す「芯」となるドラマが薄味で、日本が敗戦に向かう時代を背景としながら前作「風立ちぬ」よりも苦みや省察に乏しいのが難ですが、ラストには力強いメッセージが「君たち」(つまり私たち)に向かって放たれるのです。主人公が異世界に行き成長して帰ってくるオーソドックスなファンタジーです。
●中盤までの物語(声優名は、筆者の推定)
太平洋戦争中、牧眞人(山時聡真)は実母・久子を失います。軍需工場の経営者である父親の正一(木村拓哉)は久子の妹、夏子(木村佳乃)と再婚し、眞人は母方の実家へ工場とともに疎開するのです。疎開先の屋敷には覗き屋のアオサギ(菅田将暉)が住む塔がある洋館が建っていました。
不思議に思った眞人は埋め立てられた入り口から入ろうとするが、屋敷に仕えるばあやたち(風吹ジュン、阿川佐和子、滝沢カレン、大竹しのぶ)に止められます。その晩、眞人は夏子から塔は、頭は良かったが本の読みすぎで頭がおかしくなったといわれている大叔父様(火野正平)によって建てられ、その後大叔父様は塔の中で忽然と姿を消したこと、近くの川の増水時に塔の地下に巨大な迷路があることから夏子の父親(眞人の祖父)によって入り口が埋め立てられたことを告げられます。
転校初日、眞人は学校でうまく馴染めず、帰り道で地元の少年らからイジメを受けます。眞人は少年らから殴る蹴るの暴行を受けるでした。眞人は道端の石で自分の頭を殴ると、出血を伴う大けがを負ってしまいます。
自室で寝込んでいる最中、アオサギが眞人の部屋に入り込んできます。それをきっかけに襲ってくるアオサギに木刀で立ち向かうのでした。アオサギに「母があなたを待っている。死んでなんかいませんぜ」と話しかけられ、眞人は魚やカエルたちに全身を包み込ります。
眞人の怪我に正一が校長に怒り狂う一方で、夏子は妊娠によるつわりに苦しみ、何度も眞人の顔がみたいと周りに話しますが、眞人は夏子を受け入れることができず、そっけない態度をとってしまいます。
眞人は、ある日夏子が森の中へ消えていくのを見かけるのでした。そして自室で久子が昭和12年に眞人のために残した吉野源三郎の小説『君たちはどう生きるか』を発見し、読んでいくうちに涙を流してしまいます。
その日の夕暮れ、夏子の失踪に屋敷中が大慌てになる中、眞人は使用人のキリコともに夏子の後を追って洋館の裏口に入り、閉じ込められてしまいます。
そしてアオサギからは偽物の久子を見せられるのです。怒った眞人はアオサギに弱点であるアオサギの羽根「風切りの七番」を矢羽根にした矢を放ち、アオサギの嘴を穿ちます。するとアオサギは半鳥人の姿から戻れなくなってしまいます。塔の最上階にいる謎の人物に命令され、眞人とキリコは「下の世界」へいざなわれていくのでした。
「下の世界」に落ちた眞人はペリカンの大群に襲われ、「我ヲ學ブ者ハ死ス」と刻まれている墓の門を開けてしまいますが、通りすがりの船乗り・キリコ(柴咲コウ)に助けられ、成り行きでキリコの仕事を手伝うことになります(殺生ができない「下の世界」の住人のためと、生まれる前の魂たち・わらわらを飛ばすのに魚の内臓が必要であるため)。 仕事を終え、外へ出た眞人の前で多くのわらわらたちが飛び始めました。それを狙ってペリカンたちがわらわらに襲い掛かり、捕食を始めたのです。
そんな中、舟に乗って現れた少女・ヒミ(あいみょん)が自らの力を使って花火を打ち上げ、ペリカンたちを撃退します。わらわらたちも巻き添えになる中、止めろと叫ぶ眞人でしたが、ヒミがいないとわらわらたちは上の世界へ行けないとキリコはつぶやき、ヒミに感謝の言葉を投げかけます。
便所から出た眞人はヒミの力によって瀕死状態となった老ペリカンと出会うことに。老ペリカンは海には魚がほとんどおらず、わらわらを食べるほかなすすべがない、子孫の中には飛ぶことをしないものもいる、どこまで飛んでも島にしか辿り着かない、などを眞人に語った後、力尽きてしまいます。
どこからともなくやってきたアオサギを横目に、眞人は丁重に老ペリカンを土葬するのでした。
翌日、アオサギに手伝わせて水くみをしていた眞人でしたが、アオサギの「夏子の居場所を知っている」という発言から、キリコにアオサギとともに夏子を探しに行くよう提案され、キリコの下を離れる。その際、お守りとして「上の世界」のキリコによく似た人形を手渡されます。
「下の世界」で夏子を探す道中、ピンクのインコに「お待ちしておりました」と告げられ、夏子の元へと案内されるがそれは罠で、眞人はインコたちに囲まれ、殺されそうになる。ヒミのワープする力を使って二人はヒミの家へ移動、そこから夏子がいる石の塔へ向かうのです。
(中略)
インコたちの王であるインコ大王(國村隼)とその手下たちに捕まったヒミは大叔父様のいる塔の上へ連れて行かれ、眞人とアオサギは塔の外壁からインコ大王たちを追っていきます。
●眞人は宮崎監督自身の分身?
劇中の病院の火事で母親を亡くし、父親と共に地方に疎開。母の妹との生活が始まるという件。時代は恐らく1944~45年のことでしょう。宮崎監督自身が幼い頃、宇都宮市などに疎開していた時期と重なります。
主人公の少年、眞人は少し年齢は上ですが、たぶん眞人には監督自身が投影されているのと思われます。
終盤、迷宮の主である白髪の老人が登場、長年担ってきた大事な仕事を眞人に継がせようとします。彼も宮崎監督の分身です。「これを使って豊かで平和な美しい世界を築け」と、特別な石で出来た13個の積み木を差し出すのです。
自分は力を尽くした。バトンを受け取れ、君たちが未来を作れ、というメッセージです。
●宮崎作品の集大成
序盤の描写は、前作「風立ちぬ」に近い印象。実在したゼロ戦の設計者を主人公のモデルにした「風立ちぬ」を継承したかのように、時に映像のダイナミズムをいかしつつ、端正な描写が続きます。時々姿を見せる謎の鳥が何かが起こる予感を感じさせ、眞人の心はざわめくのです。あの時代の日常の空気感を残しながら、ファンタジー世界への扉を開いていきます。
行方が分からなくなった新しい母を眞人が捜し始めると、観客の期待に応えるかのように監督の映像世界が全開となります。上から下へ、風が吹き草が流れ、鳥のはずなのに人間のようであり、日本かと思っていたら無国籍風の世界へ。生きているのか死んでいるのか。まるで一切の境界がうせたかのよう。融通無碍とはこのこと。もはや理屈ではありません。
物語そのものは冒険活劇ファンタジーとして、これまでのジブリ作品の集大成として、各作品の名場面をオマージュしたジブリらしい映像表現が盛りだくさんに見られました。「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」や企画・脚本の「借りぐらしのアリエッティ」など、過去の宮崎作品のモチーフをいくらでも指摘できそうです。でもそんな作品の境界さえなくなっていきます。
床を抜ければ海の上、火に飛び込めば別の家の暖炉、扉の向こうは現実世界。迷宮の塔のイメージは、宮崎監督が愛する江戸川乱歩の「幽霊塔」や仏アニメ「やぶにらみの暴君」から。過去の自作を連想させる描写や人物もちりばめ、宮崎ワールドの集大成と呼びたくなりますが、それぞれのモチーフはきちんと整理されるのでなく、ぶつかりあい、混沌の渦となるのです。
それでも宮﨑駿監督は絵コンテしか手掛けていないとされており、シブリ作品における若い世代への“継承”が見てとれました。
●最後に本作の惜しいところ
様々に思いを巡らせながら、2時間4分の映画を見終わりました。全てをのみ込む渦の中でも、はっきり見てとれたのは眞人の決意と母親への思慕です。
生きにくい世界であっても、仲間と力を合わせて乗り切っていこうというのは、小説の大事なテーマ。小説の主人公、コペル君に絶望せずに生きることの意味を伝えるのは、彼の慈愛に満ちた母親だったではないでしょうか。
眞人は母を失った悲しみから、現実世界に対し悪意に似た思いを抱きます。宮崎アニメに珍しい屈折型です。クセ者のアオサギ男との交流や、行く先々で出会う庇護者の優しさで心がほどけていきますが、眞人が母にどう愛され、ナツコとどう心を通わせたのか、その描写が希薄なので「母捜し」のドラマの推進力が弱くなったのではないでしょうか。
ファンタジーの装いの下、小説のメッセージやモチーフを現代によみがえらせること。作品の真意をそう読み取ってみました。
私はいまひとつはまらなかった
ラピュタまでの初期作品のファンでわかりやすいのが好きなだけに。。最近の作品は見ており、今回もそれを思い出させる描写あり懐かしかった。
低評価ばかり目につくので
公開二日目に見てきました。千と千尋以降、少しずつストーリーの骨格が見えにくくなり、エンターテイメントから逸れてアート作品に立ち位置が近くなってきている感のある宮崎作品。
個人的にはストーリーも児童文学として王道だと感じましたし(異世界を訪ねたことによる少年の精神的成長)、真摯なキャラクター造形、圧倒的な世界観、美しいシーン、そして全編を経て伝わってくる、監督の「どのように生きてもいいんだよ」という誠実で優しいメッセージに、とても感動し、涙しました。
宮崎作品はこうでなければいけない、という先入観を持って鑑賞した人たちは裏切られ、失望した感があり、低評価をつけられたのでしょうか。
「宮崎作品でなければこんな作品に観客は入らない」というような立ち位置からの批評も目立ちますが、そうした批評は不誠実で嫌いです。興行成績の高低が、個人の評価と合わない場合に怒りを覚えるというスタンスが傲慢に感じるからです。
私はこの作品が、上記に挙げた理由からとても好きです。でも万人に受ける内容ではないのかもしれません。それで良いと思います。すべての人に受け入れられるように、スタジオジブリが会社として成り立つように、幅広いレンジに向けてこれまで作品を作り続けてきた宮崎監督が、本当に伝えたいことを伝えよう、として創られた作品に感じたからです。
評価が5でない理由は、ストーリーに粗い点や、キャラクターの心象の掘り下げがやや浅く感じたことにあります。そうした評価も、私の個人的な評価です。
映画批評なんてものは、個人個人違っていて当然です。主語を大きくする評価は、大嫌いです。それだけが書きたくて、登録させてもらいました。
遅いことなどないのかも知れない。 再び現れた監督の深いメッセージは生死のなかの愛に満ちたエールだ。
燃えあがる火の海をかけぬけるのは
大切な人がそこにいるから。
しかし知る、永遠の命などないこと。
哀しみを抱いたままの心。
選ぶ余地もなく変わる人生への不安や戸惑い。
それでもそこで生きていく。
ーーーーー
身の回りに次々と溢れかえる事象を、監督はあえてたくさんの登場人物やその不可思議な言動や空間に表現したように感じた。
単純なようでとても複雑で、柔らかくやさしいようで恐ろしく厳しくて、慣れようとすれば変化して、追いつけばもう離れている。
進化したかのようにみえ退化もし、悲しき争いの教訓は未だ生かされず。
目にしたものをそのまま信じた時代はいつしか遠ざかり、複雑な情報が瞬く間に入れ替わり混沌としているこの世界をそのままに。
この世の厳しい先を深く静かにみつめながら積木を持つ手は幾度も人知れずためらいに震えたはずだ。
しかし監督はあえて振り切った。
それが自分の役割りだと知っているから。
未来への時間をつくりだせる「君たち」に向けて、人を知りものを知ることで考えて歩む意味を伝えるために。
胸がじんとする。
目の底に圧がかかる。
眞人はほかならぬ〝君〟(私)の迷える姿なのかも知れない。
戸惑い、もがき、一喜一憂を繰り返しながらも「君」たちは、傍に離さない〝希望〟と〝意志〟を持つことで前に進める。
未来とはその先にしかない。
うらやましいくらいにまだ続く時間は「君たち」が持つ特権なんだよと。
先を行った人々に見守られ過去から未来へと繋がっている尊い今を、その時々の役割を感じとり、あたまとからだとこころで道を拓くために…君たちは、どう生きるか。
受け止める側のじぶんのあり方を問われた貴重な時間が、帰り道のくっきりした夏の空をなんだか少し滲ませた。
私には眞人ほどの時間はない。
その深い呼吸のあと、監督よりいくらか年上である故郷の両親があたまに浮かんだ。
自分に起きている流れのすべてを受け止めひたすら明るく穏やかな母と、1日でも母より長く生き母を守り通すことを決めているようにみえる病ある真面目な父のことを。
私はどう生きるか、この先の未来を。
何度も問いながら自分らしく生きていきたい。
そんなことを思った。
⚫︎⚫︎追記⚫︎⚫︎
グレシャムの法則さんの追記を読後の追記です。(7月27日)
眞人の足元に落ちた本、それを読んで泣いているシーン。
なぜ、あのタイミングであれだけのカットだったか。
タイトルにしているのに、なぜ?とあっけなく感じるくらいのシーンは〝あえて〟なのだろう。
監督は「君たち」の元へさらりと、そして強烈な愛に満ちた魂を込めてそれを送り込んだのだ。
人が持つ邪悪さを自己に見つけ翻弄されるだろう「君たち」が〝「君たち」自身によって〟気づき、それに命をあたえ乗り越えるための鍵にするために。
タイトルそんなに関係ないんじゃない?のもやもや感が少なからずあったなら、不気味にそびえ立つあの塔が音をたて崩れたときのようになにかが形を変え、まわりの空気を新たにすることがいつかあるだろう。
駆り立てられる思いを表すのに、遅いことなどないのかも知れない。
監督の背中が私たちの前を歩きながら、そう思わせてくれた。
修正、追記、再追記、評価変更済み
難解だなぁ けれど 一度はみた方がいい
# よかった点
- 安定のジブリクオリティ。映像も美しいし、ジブリっぽさももちろんあって、鑑賞後に満足感があった
- メインストーリーを追うのはそこまで難しくない
# 悪かったところ
- この物語がなんのメタファーなのか分からない。ネット上に考察が転がっているが、小説も読んで、何度も見るのはちょっと...と言う感じ
- 全体として美しさはあるものの、強く印象に残るシーンがなかった
- 例えば千と千尋なら、考察する点がたくさんありつつも、一度見ただけでも「夏の懐かしさ」みたいな強く印象に残る(共感できる)シーンがあった。比較して、考察すれば面白いのはわかるが、初見だと強く印象に残る感じはしなかった
- 今作は大分ファンタジー寄りになっているので、一般人には共感しづらい作りになっているのかもしれない
まとめると、
考察するために何度も見たくなるような映画ではないが、
十分満足感はあるので、一度は見に行った方がいい(見にいくだけの満足がある)映画だと思う。
内面の旅
これまでのジブリ作品は、何も考えずただスクリーンを眺めているだけみたいな人々も楽しめるような配慮がされていたけれど本作は違う。考えて、自分自身に問いかけてやっと伝わってくるものがある。恐らく低評価勢は前者。
過去作のオマージュが頻出しますがそこは好みでしょう。
-0.5はキャラクターの動きに手抜きを感じる部分があったので。
中途半端な作品という印象
子供のようなイキイキとした想像の世界を未だ持ち続ける宮崎駿ワールドに没入する2時間
ちょっと気持ち悪いようなでもどこか愛らしいキャラクターたち、空想なのか現実なのかわからない異次元の世界での少年の葛藤と成長、久しぶりに宮崎駿ワールドを体感した、という感じでした。
最近は伏線含めて細部まで作り込まれた構成や脚本が多いので、いろんな不思議な出来事について細かい辻褄合わせをしたくなりがちですが、この作品はそういうところに拘らず、子供の感覚に戻って独特の宮崎駿的なキャラクターや世界観に没入してエンターテイメントとして楽しむのが良いのではと思います。
もちろん、根底にある主人公の中の葛藤やそれに立ち向かって行く成長の過程も今までの作品と同様、共通のテーマとして描かれてます。
あのお歳でまだこんな瑞々しい子供のような想像力溢れるが世界が描ける宮崎駿さんは本当にすごいな、と思います。
これが監督の吉野さんへの応えだ!
五所光太郎さんの作品解説が素晴らしい。
「思うとおり、好きなものを作って下さいと伝えた」
「製作委員会方式ではなくジブリ単独出資」
「究極のプライベートフィルム」
だから公開前の宣伝なし施策が可能だったわけで。
五所光太郎さんの作品解説を読んでよく理解できました。ありがとうございます。
主人公の父親と再婚相手の接吻音が本当に気持ち悪い。あの場面は不要。
理解が難しい
正直に面白くない。
シンプルに面白く無かったです。
期待して楽しみに映画館に足を運びIMAXで2600円ほど支払ったことに後悔してます。
後半まさかこの流れでこんな感じで終わるのかと逆に笑ってしまいました。
キャラクターや映像も過去の作品の使い回し?
エンドロールの豪華声優陣の名前が自慢げに見えて声優に有名な人を使ったからなんなのかと思いました。
宮﨑駿監督がご高齢だからなのか、なぜこんな作品になったのかは分かりませんが、ジブリの制作会社に「君たちはこれからどう生きるか」と聞きたいぐらいです。 笑
素晴らしかった
悲しみを抱えて生きる
宮崎駿という監督は、最初から一貫してこどもたちのための映画を真摯に真面目に創り続けてきたひとだと思います。だからこそ彼の作品は、大人が鑑賞した際にも、こどもに戻って観られるものになっていて、それが素晴らしいと思うのです。
この作品を観た後、こどもたちのこころにずっと残るメッセージがあるとすれば「空想の世界は悪意もなくて整然としたルールに守られた美しい世界だけど、それは積み木の塔のようにもろくて壊れやすい。いっぽうでぼくらの生きてる現実は悪意に満ちてて混沌とした世界だけど、とても強い世界だ」
「空想の世界が壊れてしまうのはとても切なくて悲しいことだけど、ぼくたちはその悲しみを抱えてこの現実を生きていかなきゃならない。そしてぼくたちこどもが守られるだけの弱い存在から成長していくためには、不完全なこの世界を許して受け入れなきゃいけない」
というものではないかなと、こどもに戻って鑑賞したぼくは感じました。
ストレートなメッセージ
宮﨑駿監督は「自分でも何を作っているのかわからなかった」と仰っているようですが、私にはとてもストレートなメッセージが込められているように感じられました。
知識に凝り固まり、多くの生き物を犠牲にし自分の理想の世界を追い求める大叔父の行いは独りよがりです。
理想郷の建設のために生きるより、戦争と苦しみに満ちた現実に戻り友を見つけます、という主人公の答えが監督のメッセージではないでしょうか。
宮﨑駿のセルフオマージュが随所に散りばめられていて、ああ本当にこれが最後の作品になるんだな、監督は集大成を作っているんだと切なくなりました。作中に登場する墓は、監督自身の墓なのではないでしょうか。
映画体験としてすごく良かったです。
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