君たちはどう生きるかのレビュー・感想・評価
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ジブリはひと通り見てきたけどそこまで詳しくもなく、前情報も入れずに...
ジブリはひと通り見てきたけどそこまで詳しくもなく、前情報も入れずに見に行きましたが楽しめました。今回は悪目立ちする俳優もおらず、すんなり世界観に入り込めました。わたしは千と千尋が1番好きですが雰囲気が近くて好きです。スルメ的な作品だなと思うのでまた見に行きたいです。
さすが背景が美しい
ジブリ作品は好きでも嫌いでもないが、人にすすめられて鑑賞。ジブリ作品はできるだけ大きなスクリーンで観たいと思って、映画館に足を運んで正解だった。
映像がとても美しかった。
田舎に着いた時の自然の緑、目に心地よいというか、気持ちよかった。和風なインテリアも、洋館のインテリアも、どちらもとても素敵。大きなスクリーンじゃなきゃ、細かいところまで見えないよね!異世界の風景も良かった。
ストーリーは、青春期の少年の心の葛藤を描いているのか、解釈は人それぞれにゆだねられている。エヴァンゲリオン観た時も、同じような感想になったな。
おばあちゃんたちが7人で、まるで白雪姫の小人たちみたいでホッコリ。小さな木の人形が出てきた時には笑った。
いろんな生き物が、うようよと出てくるところは少しだけ気持ち悪かったけど、おもしろかった。鯉と蛙のところ、ひぃーってなった。そもそも鳥が苦手なので、青鷺、ペリカン、インコと、なんで鳥ばかり…と思ったり。インコはカワイイキャラクターになってたからまだ良かったけど。しかし、可愛い外見と怖い行動のギャップ!
あと、主人公もほかのキャラクターも、お辞儀をするところが何度も出てきて、そこが好きだった。お辞儀って、日本文化の良いところだと思う。日本文化の様式美が好き。
前情報ゼロで観たので、声優さんたちのこと知らなかったから、後で調べて、えー!わからなかった!ってなった。ジブリの映画では皆さんジブリの話し方になってる、良い意味で。
菅田将暉さん、青鷺だったとは!
音楽のピアノも心地良し。ジブリ音楽好き。
そして、最後の米津玄師さんの曲がとても良い!
何か深いテーマがあるのだろうけど、そこまではよく理解できず…。しかし、好きな感じだった。パンフ買い忘れて残念。もう少し情報欲しかったのに。
迫力重視にしてしまった点
冒頭で、主人公の眞人がお母さんを亡くし、代わりに妊娠している妹の夏子に引き取られるということから、その生まれた子と眞人が本当の兄弟ではないなかでどうやって生きていくのか、という流れだと予想していました。
例えば生まれた子が眞人の妹で、喧嘩した眞人がケガをしながらも妹のお世話をしていると、母親を亡くしたトラウマから心を開いて学校に行くようになり、本当の家族のようになったとします。
しかし眞人が学校を卒業して東京へ行き、しばらく働いていると高校生になった妹が彼氏と結婚の約束をしてしまいます。眞人は母親を亡くしたというトラウマを強く持っているので、それを認めません。すぐにやめさせようと妹と彼氏の恋愛を邪魔をしてしまいます。そこで喧嘩になり、本当の兄弟じゃないという本音をぶつけ合い、あまりの怒りに二度と帰って来ないと出ていく眞人。そこから本編に登場してきた通りの流れにすると、さらにストーリー的に面白くなったのでは。
夏子さんがそこで眞人を探しに行き、おじいさんの元へたどり着くという流れにすると。帰ったあとには妹と仲直りして、結婚させようと決断。
本編の終盤でも出てきましたが、積み木というキーワードは決断するという意味だと私のなかで感じたので、母親を亡くしたトラウマを克服し、妹の結婚を認めるという決断をする。そうするとより印象深くなっていたと見ていて思いました。
今までのジブリ作品のなかでも特に迫力があり、他の作品には真似できないような作画をされていたのですが、ストーリー性の乏しさにもったいないなと感じてしまいました。主人公の抱えているトラウマをもう少し感じさせてほしかったです。
以上、長くなってしまいました。私の感想です。
解釈に迷う
冒頭の火事のシーンは熱気や舐めるような炎の描写が凄かった。空襲なのかと勘違いした。
ファンタジーの入り口は扉だというイメージがあったが、本作では現実世界へ戻るための扉だった。
ハウルでは1つの扉に複数の世界だったけど、今回は無限回廊だった。そこで様々な時代や場所と繋いでいた。ジブリらしい世界だった。
ワクワクするところも、モヤッとして考えさせられるところもたくさんあった。
これまでのジブリ作品に登場した、様々なものがオマージュされていた。
ただ、一回観ただけではなんともわからない。自分の中で、この映画はこれを伝えたいのだろうという納得感を得るためにはもう1回観ないとダメかもしれない。タイトルの意味もちゃんとあるはずだ。
泣けた~
公開から1カ月半ぐらいだけど、13:00からの上映で96席の9割は埋まってた。
まず、これでびっくり。
自分は宮崎アニメはあまり興味がなく
でも千と千尋の神隠しは大好きな程度。
なので、見に行く予定はなかったけど、
評価が別れているのと、千と千尋の神隠しのような世界観と何人かのレビューにあったので観に行きました。
ちょうど、ただ券もあったので。
いつもは映画は朝イチに観て、終わったら、商業施設で昼御飯のパターンなんだけど
今日は反対でご飯を食べてから映画。
椅子に座った頃には、お腹いっぱいで眠気満載でヤバいと思ったけど、最初から引き込まれて
眠気はぶっ飛んだ。
今回、いつもと違うのはもう一つあり、一番後ろの席で観た。
遠い~
見えない。失敗。いつもは車椅子席の後ろなので、けっこう前の席だから、あまり見えなかった。けど、音響が良くて、久石譲氏の重厚なピアノがとても良かった。
でも、声優さんがなんで、俳優さんばかりなの。何人か俳優さんならわかるけど、俳優さんばかりで、違和感ありありだった。
あと、エンドロールで誰も立ち上がる人がいなかった。
かなり久しぶりの光景かも。
ちょっと自分のレビュー見て、令和3年のインターステラーの上映以来かも
宮崎駿のファンタジー、ここにあり
小さい頃、テレビにかじりついて見ていた宮崎駿アニメをようやく劇場のスクリーンで見れたような気がした。
そこには、確実にラピュタのような冒険活劇があり、一人の少年が必死で自分の中の問題と葛藤する姿がありありと描かれていた。
昔から憧れていた世界が、目の前で繰り広げられるこの映画を見れて、本当に良かったと思う。
監督自身、今までジブリで築き上げてきたもの、託したい思いなど、様々な思いをありったけにこの映画に込めたのかもしれない。
宮崎監督は、高畑勲監督とお互いに切磋琢磨しながら映画を作ってきて、ジブリという会社を大きくしてきた。
宮崎監督がようやく、自分の思いの丈を映画という媒介で出し切れたこの映画を高畑監督はなんて言うのか、聞いてみたい気もした。
問いかけ系(または自伝か)
マザコン爺さんに興味が無くなっただけ〜
宣伝をしない宣伝が話題の本作。
出だしの映像は「もののけ姫」の冒頭の様に
ワクワクしました。
でも、結構大事なところで寝落ちしてしまって
気がついたら大団円になってました。
だから採点はできません。
面白くない訳ではないのです!
映像のクオリティーはジブリ印が保証してくれてる映画の一つですね。
で、月に8本ほど映画館で映画を観る中途半端な映画好きとしては
なんで、寝てしまったのか?
面白くない訳では無いのだけど
正直体調により寝てしまう映画もよくあります。
だけどそれ以外に寝てしまった理由を見た後も色々考えてきました。
色んな人の考察を観てみましたが今ひとつピンと来なかった。
で、最近「バービー」を観てその面白さに
もう3回も観に行ってる訳です。
また「ベネデッタ」の感想を書くため
2月にたった一回観ただけの映画を
今でも鮮明に思い出して楽しめてたりします。
で、唐突に、わかった!!
ああ、私はもう「宮崎駿に興味が無くなったのだ!」
「バービー」や「ベネデッタ」が無類に面白く感じる私には
宮崎監督と言う「マザコン爺さん」には興味が無いのだわ!
私が映画に求めているのは
「女性」の新しい生き方や価値観の置き方であって
マザコンの願望を叶える話は求めていないのだ!
今作はその上に宮崎監督の今までの作品の様な
観客サービスは盛り込まれていないのです。
全方向的に分かり易くは作っていない。
そんなことは抜きでひたすら自分の世界感を描いているので
監督に興味のある人は入って行くし
監督に興味が無ければそこでお終い。
そこはそれで良いと思います。
だから監督に興味の無い私は採点無し。
久々のジブリ
久しぶりのジブリ
この作品に関しては正直評価することが難しい作品の一つといえるだろう
公開前は
予告も場面カットも情報も一切なしで、公開前日になっても情報一切なし
当日になってやっと情報がでるというのは前代未聞だ
宮崎駿いままで積み重ねてきた実績とネームバリューがあるから知名度は
ものすごくあるので、確実に人は来るが、ほかの作品で情報一切なしで遮断するのは
大きなリスクだと思う。
スタジオジブリは大きな賭けにでたといっていいだろう。
間違いなく歴史に残る一作だろう
公開前はいろんな妄想が止まらずものすごくわくわくさせてくれた。
そして公開されて一足先に劇場へ駆けつけた。
ちなみにIMAXで音響のいい中鑑賞させていただきました。
ストーリーを自分なりにざっくり説明すると
戦火を逃れた少年眞人は疎開し、亡くなった実のお母さんの妹である夏子と一緒に綺麗な家に住むこととなる。
アオサギという存在に出会い、夏子は消え、手がかりの大叔父の家である塔に向かうことに
夏子を探すために少年は異世界を旅する
・・・・・という話だ。
間違っていたらすいません!!
最初は火垂るの墓のようなリアリズムの話かと思いきや、千と千尋のような異世界
を旅するファンタジーであった。
アオサギやその世界の登場人物たちと
協力しながら異世界を冒険していく話である
文章でストーリーを語るとわかりやすいのだが
しかし本編映像自体は非常に難解であった。抽象的な表現が多く、理解するのに時間がかかる
いや理解不能だ。だがそれが面白い。
一種のアート映画ともいえる
賛否別れるのは確実だろう。
勝手な解釈だが
でてくるモチーフ小道具生き物キャラ部隊すべてが様々な含みをもたせたいわばメタファーのようなものを感じさせるつくりであった
それは宮崎駿、鈴木敏夫、息子の宮崎吾郎、ジブリスタジオ、ジブリを支えてきたクリエイターたち
、そしてジブリ作品を観続けてきた私たちともとらえられる
物語の後半で13個で積み上げられた積み木がでてくるが
これは宮崎駿がいままで作ったアニメ映画の本数といえる
塔の存在はジブリスタジオ 大叔父の存在も宮崎駿自身だと思う
ジブリ自体もいまや宮崎駿を超えるような作り手がいない状態だ。
宮崎吾郎に関してもそうだが、失礼ながら才能を受け継ぐに足りうる才能
とは言い難い。監督も80歳を超え、長年の相棒、親友だった高畑勲監督も
先立たれてしまい、今度は自分の番かもしれない。
いつ死ぬか分からない思いに悩まされる
残されたジブリスタジオはどうなるのかとても心配だ。
衰退して、なくなるか、企業に買収されて別の会社になっているかもしれない。
それに数十年後数年後に自分の作品は誰の記憶からも忘れ去られる残っている可能性だって怪しい。
衰退の一途を垣間見えてしまう。
宮崎駿も自分がつくりだした世界ジブリというブランドに
大きな功罪を抱えていたのだろうと思える。
そう思った駿氏はこの映画で解答を示したのかもしれない。
この作品を世に送り出せたこと自体宮崎駿にとって
幸せであり奇跡であり希望であったことなんじゃないかな
最後に塔が崩れて異世界から解放されるのもジブリという長い夢から
覚めたともとらえられるし、眞人に掌に一つの積み木が託されたのも
これから巣立っていく若者、若いクリエイターに希望を託したとも思える
もうジブリなんてみてないでしっかり現実をみなさい
自分の人生を全うした老人が今度はジブリによって人生を壊された人たち(全人類すべて)に
自分の人生にしっかり向き合いなさいと言っているみたいだった
作り手としてあるいは人生の主役として我々は自分と向き合わなければいけないだろう
一種の嘆きそれとも喜びか
ジブリのようなアニメなんて作らないで、自分自身を表現した作品をつくりなさい
宮崎吾郎の息子の件もあり、
クリエイターや作り手に向けた遺言ともいえるメッセージかもしれない。
今後宮崎駿を超える才能は別のところで現れると思う。
解釈は人それぞれだろう、それぞれがみて感じたことすべてだ。
この作品が面白いと感じる人もいればつまらないと感じる人もいる
つまらないという人がいても全然わかってないなとはいわない
少なくともこの作品はあらゆる意味で記憶に残る作品となった。
何年後かにはまた評価が変わるかもしれないがここでふせさせてもらう。
飽きることはなかったけど
君たちはどう生きるか
この映画を初見で理解できる人は、ほとんどいないと思います。
全体がどの様になっているのか把握することは、無理です。
ここからは、僕の解釈です。
初見は、わけのわからないファンタジー映画でした。
でも、宮崎監督が何でこれを最後にしたのか?
一体全体何を作りたかったのか?見終わった後しばらく考えました。
何で見覚えのあるシーンが多かったのか?
よくよく考えてみると、この手法は、
一話完結でない一話完結!の作り方を採用しています。
あれ?もしかして、わざとシーンを過去の作品にシンクロさせてた?
って考え、積み木が何で真っ二つになって、混沌の渦に飲まれるの?
真っ二つにする意味あるの?って考えた時、全てが繋がりました。
この映画を公開すると、ジブリの評価が真っ二つに割れるのを見越して
あのシーンを入れたんだ、今起きているこの状況を暗示していたんだ!
って、この映画を理解し、2回目を観に行ったら、
完全なるパロディー映画でした。シンクロシンクロシンクロ!
笑いこらえるのが大変でした。カリオストロの城が一番シンクロ映像が
多かったかな。笑いが止まらない、爆笑映画になっていました。
この映画に意味は、無いと思います。
あるのは、宮崎監督の挑戦を強く感じました。
この世界で人が生きるのは大変だ
これから創作活動に関わる若い人達へ向けた宮﨑駿のささやかな、しかし熱烈な思いを感じ、涙涙
宮﨑駿監督(本作より宮崎が宮﨑に変わった様)による2023年製作(124分、G)の日本映画。配給:東宝。
前評判は今ひとつと聞いていたが、大きく感動し、年はとったものの宮﨑駿のイマジネーションって凄いと改めて思った。そして、今までの宮崎アニメにあまりなかった渾身のメッセージに涙が溢れてきた。凄い映画だ。
出だしの母親が火災で亡くなる臨場感は、お見事である。階段を駆け上がる主人公牧眞人のスピード感と走って向かっていった先の燃え盛る炎拡大の凄まじさ、そしてアッサリとすぐ次のエピソードに進むテンポの良さに感心。
そして、眞人疎開先の日本家屋の造形や内装の美しさ、取り囲む自然の緑や光そして水の豊かさに圧倒された。細かい細部まで、今まで以上に美しく描き込まれており、美術監督武重洋ニら宮崎アニメの美を支えて来た方々に大いなる敬意を覚えた。
学校でいじめられ、自分で頭を石で叩き出血する主人公。その理由は自分には良く分からなかったが、悪意の象徴と本人は言っていた。父の行動を予測しいじめた奴らへの復讐を意図したものなのだろうか、母亡き後すぐに結婚し学校に息子をダットサンで送りつける父の行動への怒りが自分に向かったものなのか、それとも、家でも学校でも孤独で楽しくないイライラからの暴発的自虐行為なのか?
謎の怪しい存在である青サギを射ろうと弓矢を作る眞人。最初、全く上手く飛ばなかったが、青サギの羽を付けることによって、目の覚めるような速さと重量感で矢は放たれる。この予想の遥か上を行くスピード感の凄さが、宮崎映画の大きな特長で、それが相変わらず健在と感嘆させられた。
母の手書き文章が書き込まれた「君たちはどう生きるか」を読みながら、涙を流す眞人。その涙の水々しい表現がどのアニメと比べても、宮崎駿アニメは1番上手と思う。そして、少年の成長のための冒険の始まりの導入としても、とても上手い本の利用とも思った。
大叔父の建てた洋館(恐ろしい数の書籍があふれる内部造形も凄い)に入った眞人と青サギ転じたサギ男(声は菅田将暉)は、老婆キリコと共に泥土の中へ沈んで行き、下の世界へ行く。この時、落ちていく真下が波が打ち寄せる海岸であるという映像に、息を呑んだ。何という素晴らしいイマジネーション。何より絵になるじゃないかと。宮﨑駿創作のイメージ凄いと思ったが、構図的にはエヴァンゲリオンの絵に関わってきた作画監督本田雄によるものかもしれない。降りたった場所が浅瀬で、そこでの足もとでの海水の揺らぎが何とも美しかった。
ここで出合う若かれし時代のキリコ(声は柴咲コウ)。その意思の強い頼りになる強い女性像が、宮崎アニメの常連キャラクター(ナウシカのクシャナ、ラピタのドーラ、もののけ姫のエボシ御前、千と千尋のリン、等)を思い出し、何とも懐かしく感じた。そして今回も、大魚解体の鮮やかな包丁捌きなど、とても魅力的であった。
魚解体時に集まった多くのワラワラ。その造形が何ともユニークで可愛いが、お腹が膨れて丸くなり、1匹、2匹と空に飛んでいく。それが数えられない程の数になり大空を覆う様になる。その美しい映像に、そのイマジネーションの見事さに、もの凄く感動してしまった。
しかし、そこにペリカンが現れて、かなり多くが食べられてしまう。ワラワラが空を飛べるのは本当に久しぶりとか言われており、どうしても自分は、多くの若いアニメーターの方々をイメージしてしまった。日頃の収入は乏しく、大きな仕事が入っても今度はハードすぎる仕事で心身を痛めてしまう存在を。ワラワラを食うしかなかったと言って死ぬ老ペリカンは、多くの若いアニメーターをすり潰してしまったという宮﨑監督自身の懺悔の様に聞こえた。
更にこの下世界で新たに出会う火を自在に扱う少女がヒミ(声はあいみょん)で、実は火災により亡くなった母久子の少女時代の姿らしい。この時空を超えた設定がなかなか魅力的で、彼女の力も借りて、母の妹でもある義母夏子と再会する。鬼の様な形相で「あなたなんか、大っ嫌い」とまで言われてしまうが、この世界で揉まれてきたことでか、ずっと懐かず夏子さんと読んでいたのに、ここで夏子母さんと呼べ、夏子の実姉息子の義母としての苦しみを救うことが出来た。
そう、この物語は少年の成長の物語。そして、この少年は多分創作を目指す多くの若者であり、宮﨑駿自身の経験の反映が色濃く出ている。青サギは、その道の先導役であり先輩で弓矢作りの様に創作を刺激する存在。そして、一緒に活動してくれる大切な友でもある。まあ鼻の特徴から宮崎にとっては高畑勲のイメージで(2018年に亡くなった彼への宮崎なりの感謝の表明と感じた)、未来の創作者にとっては互いに刺激し合える大切な仲間なのであろう(高畑葬儀で、宮崎は5年上の彼との出会いは、雨上がりのバス停と言っていた。サツキのトトロとの出会いは実は高畑との出会いだった)。
主人公が下世界で出会うのが大伯父(声は火野正平)。彼は、13個の積み石を積み上げることで、世界のバランスを何とか保っていると言っている(On your mark含め本作で宮崎監督映画は13)ので、勿論宮崎駿の自画像なのだろう。空に浮かぶ巨石(宮崎が愛した多くの欧州の物語達の象徴か?)に導かれ、汚れた上の現実の世界と接点を持たずに創り挙げて来たこの世界(やはりジブリのことを言ってると思える)を、血の繋がった人間に継承したいと言う。新生宮﨑駿によるかつての自分(宮崎駿)の創作姿勢や組織運営に対する痛烈な自己批判と自分は感じ、感動を覚えた。
未来の創作者である主人公牧眞人は、大伯父の継承依頼を断る。汚れて破壊に向かってるかもしれないが上の現実社会で、この世界で得られた青サギやヒミの様な友人と共に、歩んで行きたいと。積み石は、不安定な状況を嫌った権力者インコ大王により破壊され、それにより下世界は大崩壊に至る。インコ大王は創作者の想いや志しを十分に汲み取れないプロデューサーやスポンサーを象徴している様に思える(下世界をジブリと見れば、鈴木敏夫や協賛企業お偉方の姿なのだろうか?)。
自分はこの大崩壊の凄まじい映像表現に、崩れる世界のある種の美しさに圧倒されてしまった。幸いに、眞人・夏子及び青サギ、そして戻る世界は別だがヒミ、そして多勢のインコ達(ジブリで働いていた多くの人間がイメージされる)は、この世界を何とか脱出する。
眞人のポケットの中には、キリコの木製人形と下世界で得た悪意を有する石を携えて。石携帯は大叔父の創造する意思(いし)の継承の表れか。過去の自分のあり方は否定したが、新たな現実社会に立脚した誰かの物真似では無い、人間の善意と悪意の両面を描いた集団創造への宮﨑駿の期待の大きさを感じた。
元の世界で戻った主人公は、新たに生まれた弟も伴い東京に向かう。書籍「君たちはどう生きるか」の携帯は勿論だが、ポケットの中には青サギには忘れてしまうと言われてもいたが、持ち帰った“石”が入っている様に思えた。自分の創作活動のかけらが僅かでもどこかで役立てば嬉しいという、ジブリを飛び出したアニメーター達に、ひいてはこれから創作活動に関わる若い人達への宮﨑駿のささやかなしかし熱烈な思いを、聴き取った気がした。
監督宮﨑駿、原作宮﨑駿、脚本宮﨑駿、プロデューサー鈴木敏夫、作画監督本田雄、美術監督武重洋二、色彩設計沼畑富美子、 高柳加奈子、撮影監督奥井敦、撮影藪田順二、編集瀬山武司 、松原理恵 、白石あかね、音楽久石譲、主題歌米津玄師、音響演出笠松広司、整音笠松広司、アフレコ演出木村絵理子、助監督片山一良、制作スタジオジブリ星野康二 、宮崎吾朗 、中島清文。
出演
山時聡真眞人、菅田将暉青サギ/サギ男、柴咲コウキリコ、あいみょんヒミ、木村佳乃夏子、木村拓哉勝一、竹下景子いずみ、風吹ジュンうたこ、阿川佐和子えりこ、滝沢カレンワラワラ、大竹しのぶあいこ、國村隼インコ大王、小林薫老ペリカン、火野正平大伯父、上原奈美、西村喜代子、綿貫竜之介、柳生拓哉、画大、飯塚三の介、川崎勇人、鈴木一希、土居正明、重田未来人、井下宜久、岡森建太。
全2015件中、381~400件目を表示