劇場公開日 2023年7月14日

「巨匠の仕事」君たちはどう生きるか AKIRAさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0巨匠の仕事

2025年5月20日
PCから投稿

一方的ですが、私が「私の中の文豪、巨匠」と呼ぶ方は、私の人生に問いかけてくる作品を創られる方です(宮崎なら「風の谷のナウシカの原作」のラストのような)

私の中ではこの作品はやはり、宮崎駿という巨匠の仕事であると思っています。

前もっての情報も無くまっさらな気持ちで観させるとしたら、もしかしたらタイトルも無題だったかもしれません。

でもこのタイトルを敢えて付けたのは、『君たちはどう生きるか』という小説を中高生にぜひ読んで欲しい、(世界中の)大人達にも、あのコペル君の叔父さんのような大人になって欲しい!という宮崎駿の気持ちが、きっと込められていると私は思います。

ブルースリーは「考えるな、感じろ」と言いました。でも、宮崎はあたかも逆に「考えるんだ」と映像全編に込めて言っているように今回この作品を観て感じました。(今でも折に触れ考えています)

文学でいうならこの作品には、芥川龍之介の『歯車』に通ずる、全てを脱ぎ捨てた天才の凄まじいキレを感じます。そして13という数字が出たのは(うちの近くの寺にも十三重の塔がありますが)何か仏教的な、全ての魂への鎮魂を意味しているのかなとも思います。キリスト教徒であった遠藤周作やヘルマンヘッセが最後、仏教を書いたように。(作品数との説が有力かな)

私には、前作『風立ちぬ』から感じる、血の描写、デフォルメされたキャラクター、あと、やはり声優陣には違和感(菅田将暉は良かったなあ)が正直あり、主人公も2年後と2年前の声の変化は欲しかったと思います。上から目線ですみません、ぜひ次回作でご検討お願いします笑。(でも、声はさておき『風立ちぬ』は感動しました。今回シベリアも出てきました!よね?。私はあのシーンが好きでした。主人公のやさしさと、子供ながらに「物乞いではない!家族を待ってるんだ」という毅然とした精神が感じられて)

眞人はきっと、コペル君のような道を歩んでゆくと私は思います。
俗世で生きることを決め、様々なしがらみや反面教師としての父と闘いながらもきっと、この体験を胸に秘めながら...。

「風立ちぬ。いざ、生きめやも...」
(愛する人(母)は風となって空に舞い上がっていった...さあ、僕はこの世界で生きてゆかなければ...)と

星4つですが、5つめの☆は、今後自分の人生で何か探し出せたら、付けさせてもらいたいと思っています。(実は私も後悔している出来事や謝りたい人がたくさんいます)

 長々と自分目線ですみません。

追伸:
※あと鳥好きの私としては(長々ついでで、笑)
日本の水辺にもいるアオサギは、古代エジプトでは「再生をつかさどる(雨を呼ぶ)鳥」と言われ、ペリカンとともに「聖なる鳥」とされていたようです(山下達郎の「Heron」もアオサギなんですよね)。ペリカンは「愛の象徴」との事で、というと?ワラワラを食べてしまうのは逆につらい俗世に生まれないようにとの愛でしょうか?? 劇中のインコは解き放たれた瞬間、目の位置が正面から本来の横の位置に戻ったような。人間の姿のほうが視野が狭いのかな?笑(インコのキッチンのシーンは、なんか遠い記憶にある、映画『デリカテッセン』を思い出したようなユーモラス(ブラックな)感じで私の中で◎でした)

AKIRA