「題名が全て、そこに尽きる。」君たちはどう生きるか @ひまちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
題名が全て、そこに尽きる。
アカデミー賞受賞と知り、久しぶりに映画館へ足を運びました。ジブリ作品は元々好きだが、大人になり仕事をし、手軽にサブスクで何となく面白そうな作品をダラダラ見る毎日を過ごす中。そういえば、映画を観る機会も減ったと感じた今日この頃。
予備知識ほぼ無し、少しの好奇心と観た後に何かを変えてくれるような期待の中いざ映画館へ向かう。
まず結論から言うと、明日にでもまた観たいと思える作品でした。考えが止まらないと言いますか。人生観にクリティカルヒットしました。
戦時中、幼い主人公が母親との死別から始まりますが、これはズルイですよ。
ええ、勿論すぐ泣きましたよね。(こういうの弱い人はハンカチ必須ですね)
とにかく、どのシーンで泣いたのかなんて覚えてないくらい何度も泣いてしまいました。
私的に印象深いシーンは、大お爺様の諦めの入った老人特有の瞳の色。(なんでやねんって聞こえる笑笑)
老ペリカンの瞳のドロっとした暗さ。
いやいや、人生って瞳に出るんですよね。ほんと。それが伝わるくらい描かれていると思いました。
あとは、母親の病院が燃えてると聞いた後の主人公が階段を降りる姿。もう、感情が先につっ走ってますよね。激しさだけで泣けましたよ。
炎の中走る姿は胸がギュッと締め付けられて苦しかったです。ハァハァ‥。
キリコが船で帆を操る躍動感も何故か印象に残ってます。最後の波?を越えたら静かになるよっていうキリコのセリフは、まるで人生を例えるかのような哲学的なものを連想しました。
主人公が父親の工場で作った特攻機のガラス枠?を見た時に、綺麗だと言ったセリフは恐ろしかったです。
石で頭を傷つけて親を動かし、登校拒否を叶える最短ルートを導き出せる子なので、理解した上での綺麗だという発言でしょう。
そして、色んな葛藤や矛盾が集約された瞬間が、夏子さんに大嫌いだと言われた時の主人公の気持ち。爆発的なあの一瞬で、頭の中で色んなことが巡って巡ってたどり着いたのが、お母さんという言葉。
すごいよ、少年。大きな壁を乗り越えたのね。私はまいったよ。
ああ、思い出したらキリがないくらい色々考えさせられる部分があって楽しいです。
そして、この映画で一番好きなところは、悪役がただの悪役じゃない所ですね。
人間の善悪、矛盾、多面性のあるキャラクターが本当に良かった。
特に、狡猾で傲慢で少しひん曲がっていて、臆病で少し抜けてて泥臭く、根は優しいけど現実的、お調子者で自由に生きている青サギがなんだかんだ1番魅力的だと思いました。
下の世界の住人なのか現実世界の住人なのか?
一見、綺麗な青サギかと思いきや、グロテスクな生き物に変貌し、曖昧で奇妙でなんとも不思議な生物。
でもそれは、私たち人間の事なのかもしれないですね。
主人公が現実世界へ戻って来て、向こうの世界の石を持っていたから記憶が残っていた。
でもいずれは忘れてしまうだろう。という最後の青サギのセリフが尾を引きます。
辛い事も良いことも、いずれは記憶が薄れて忘れていく。
心が引き裂かれるようなトラウマや過去の栄光が忘れられなく執着していると前には決して進めない。
そうして忘れられるからこそ人は前に進んでいける。
いずれは誰もが必ず辿り着く死へと続く道へ歩みを進めていく。
その死を迎えるまでに、私たちはどう生きるのか?
仕事と家事の繰り返しで変わり映えのしない日々。危機感のない贅沢な暮らしを貪っている日々。どうにかせんとなぁ。
少し考えたら気持ちがピシャンとなったような気が。
題名の通り考えさせられました。
また考察とかも色々巡って更に考えてみます。
宮崎駿監督、本当にありがとうございました。