「 この作品は、宮崎駿というアニメーション監督に関心があるかないかで...」君たちはどう生きるか KNG-UDNKさんの映画レビュー(感想・評価)
この作品は、宮崎駿というアニメーション監督に関心があるかないかで...
この作品は、宮崎駿というアニメーション監督に関心があるかないかで評価が分かれるのではないかと思う。
映画の脚本としては、正直あまり良い出来ではないと思う。
何しろ、舞台背景や、主人公の少年の家族になぜあのような役割が課せられているか、大叔父さんがなぜ世界を守っているのか、少年が冒険しているこの世界が、現実世界とどう関連しているのか、といったところの説明がほぼない。あえて言えば、大叔父さんについては、あの世界に迷い込んだ結果、持てる知識を元に世界をまもる役目を務めることになったのかもしれない、位は読み取れるけど。
ただ、この映画はそんなことはどうでも良いと言わんばかりの宮崎駿の妄想大爆発の映画なのだと思う。70歳を過ぎた老人が(今はもう82歳だ)、これだけの妄想力を発揮して少年少女の大冒険活劇を描ききることができているのがすごい、と思う。もう、自分の好きなものをひとつの映画にできる限り押し込みました! それのどこが悪い! といわんばかりの豪腕さ。 これだけ自由に好きなものを作れるというのは、他のアニメ関係者はうらやましいと思うかもしれないな。
とにかく大冒険だ。意外とおとなしいなと思っていたのは最初の30分くらいまでだった。徐々に徐々に別世界を紛れ込ませて、最終的には世界を守るための大冒険にまで発展する。見始めたときはとてもそんなことになるとは思わなかった。
そんな大冒険を通して、主人公の少年は元の世界で強く生きることを決意し、ヒロインの少女である少年の母親も(ややこしいが全くその通りだ)、母親としての役割を全うするため、元の世界に帰って行く(このあたりが原作本に対する宮崎駿なりの感想なのだと思うが、宮崎駿自身の、少年少女に対する思いでもあるだろう)。
お約束のように少年と少女が走りながら抱き合うシーンも登場すれば、ヒロインの少女が手に顔を埋めて泣くシーンも登場する。これであと飛行機による空中戦やら戦車による地上戦が入ればまさに全部入り、という作品になっただろう。恐らくそのあたりは前作である程度やったからすっきりしたんだと思う。
随所にカリオストロの城やナウシカ、ラピュタ、それ以降の宮崎作品を彷彿とさせるシーンが登場するので、宮崎駿という監督に関心があり、作品を見てきた人たちはそれだけでも楽しいだろうし、その上でこれだけ妄想を大爆発させられたら、それだけで満足できてしまうのではないかと思う。
反面、宮崎駿という存在自体には大して関心がない映画好きの人や、話題の作品だし、宮崎作品はいくつも見ているけど、あまたいる映画監督の一人、くらいの関心しかない人がこの映画を見た場合、なんだかよく判らない、ということになってしまうのではないだろうか。それは仕方がないことだと思う。