「よくわからないと評判を聞いていたから期待を低くしていたけど、良いも...」君たちはどう生きるか kpさんの映画レビュー(感想・評価)
よくわからないと評判を聞いていたから期待を低くしていたけど、良いも...
よくわからないと評判を聞いていたから期待を低くしていたけど、良いものをみたという気分。
まず、人間の動かし方や表現の仕方、音の出し方、静物の雰囲気、一枚一枚綿密に作られた背景から、宮崎駿のアニメ表現を見れただけでも感動があったし、石が出てきたあたりからSF的な人類的な視座にも到達したし、さまざまな場面でこれまでの作品の自身によるオマージュが散見され、色々な意味で集大成を感じた。
映画の内容自体については、そもそも何か目的(感動とか社会問題とか)があるような映画ではなく、彼が「世界」から要請を受けて描かざるを得なくなり、そうして描かれた世界を観ているのだという風な凄みを感じた。細かく意味や論理を捉まえにいこうとすると何も与えてくれない。1人の人間が頭で考えて拵えられるようには思えないほど、描かれた世界自体に統一性がある。もしかしたら書いている方も突き詰めることなしに直観的に感じ取ったものが、映画の中の世界に作り上げられ、それを総体としてこちらも受け取るべきものなのだろう。セキセイインコが幅を広げるけどペリカンはワラワラを食べることしかできない世界が不思議とリアルに感じられて成立している。だから、論理が一つ一つ積み上がってストーリーを追うものではなく、一つの世界を直に感じるというタイプの映画鑑賞であったし、何かわかりやすいストーリーがある映画よりも直接存在に働きかけてくれるような滋味があった。といっても、そもそもそこまでストーリーが崩壊しているわけでもなく、およそ三つくらいに分かれているパートがそれぞれの中で筋をもっていたし、彼の表現技術も相まって退屈になることはなく、訳がわからず時間が過ぎるのを待つ映画鑑賞にはならなかった。
ただどういうストーリーだったかと聞かれたら、曖昧に答えることしかできないけれども。