「ワガママな少年は自分の生き方を探し続ける」君たちはどう生きるか Teiさんの映画レビュー(感想・評価)
ワガママな少年は自分の生き方を探し続ける
友人やメディアからの情報を遮断し、事前知識は一切なしで見て参りました。
◼︎前提
これはジブリ作品というより宮崎駿作品だと感じました。子供の頃にジブリを見た大人は当時見た記憶を辿りながら、大人になってその作品を見た時に懐かしさを感じながらその作品に込められている社会に潜む闇に対してのメッセージ性に気づきます。子供の頃の思い出を作る、そして大人になってまた異なった視点で作品を懐かしんで見ることのできる、それがジブリ作品の良いところだと私は思っています。
この作品ははっきりいって子供が見ても楽しむことはできないでしょう。ジブリ作品としてではなくて宮崎駿監督の作品としてみれば、私としては満足でした。
◼︎感想
ストーリーは実は難解ではなく、1人の主人公の成長譚だと私は捉えています。宮崎駿監督が描く世界って実はメッセージが込められているようで、そのほとんどを視聴者の解釈に委ねていることも多く、今回の映画もところどころでそれが見られたように感じます。だからこそ解釈は無限大。ここからは私が感じたこの作品を語ります
主人のマヒトは突然母を失い、戦時で目まぐるしく変化する環境の中で「自分」を見つけに異世界を旅する。思えば喧嘩したあとマヒトはなぜ自分の頭に石を叩きつけたのか。なぜあれだけ周りに止められながら塔に近寄ったのか。母の死も受け入れられず、環境の変化にも順応できないわがままなマヒト。さらに言えばどう見ても当時としては恵まれた環境なわけです。ご飯だって食べられない人がいる中、「おいしくない」というぐらい。そんな彼が異世界を旅する中で、数々の不条理でそして納得できない出来事に遭うわけです。
少しずつマヒトは学ぶんです。自分が恵まれていることも。この世界には自分ではどうしようもないことも起きる。自分が憎んだ相手も実はその人なりの事情もあったのかもしれない。最後にマヒトは選択を迫られます。この異世界を司る大叔父から。私はこの大叔父を創造主だと勝手に思いました。いま、ここにある積み木(運命)を好きに積めば自分の思い通りになるかもしれない。それをマヒトは最終的に拒否します。それはこの不条理を受け入れ、前に進むことを決心したからです。大叔父は決してマヒトに自分の跡を継がせたいと思ってこの世界に呼んだのではない。自分が取り憑かれた、自分らしい生き方を忘れた自分を見せ、マヒトはどう思うか、それを試したかった
そう彼がマヒトに問いたかったことは
「君はどう生きるか」
マヒトは最終的に大人になったかというと私は全くそうは思っていない
まだ道半ばそれでも彼はこの不条理な世界で自分の生き方を探し続ける