「ジブリだから耐えられる」君たちはどう生きるか えさんの映画レビュー(感想・評価)
ジブリだから耐えられる
内容に関する前情報無し、ただし、よく分からないという感想が多いのは認識しての鑑賞。
最初の火事のシーン、緊迫感や眞人の感情、主観的なイメージ(群衆を駆け抜ける、その群衆の雑感)、火の表現など素晴らしくて母の喪失が悲しくて、いきなり涙が出そうになった。
疎開先での新たな生活が始まり青鷺と出会う、その青鷺がキーキャラクターになりそうだというのがビンビン伝わる。新たな母、夏子やお婆達も何かを知ってそうだ。
ここら辺までは、小説版(というか、題名のネタ元)の雰囲気があり、そういう物語なのかと思っていた。が、全然違っていた。
眞人が同級生と喧嘩して、その後自身でこめかみに石を打って出血するシーンから雲行きが怪しくなってくる。
いきなり喋り出す青鷺、それを狩ろうとする眞人、羽が主である青鷺にに向かって行く理由(結局活かされるわけでもない設定)、夏子が塔の世界に誘われた理由、帰りたがらなかった理由、産屋の存在、ヒミが火を操っている理由、ワラワラもろともペリカンを燃やしていること、帰り道を知っているのに自分の家を持って、大叔父とも仲良くしているまで帰らない理由、キリコが何者なのか(ヒミと一緒に塔へ入った?)、インコが眞人を食おうとしている理由、昔空から降ってきた塔の存在、、
など??な部分がどんどん出てくる。
中々疑問に思っても結局解決されずに崩壊して終わったという印象だった。
しかも現実に戻ってきた人物達も記憶を無くして、眞人もそのうちこの出来事を忘れるので、本当に分からないで終わる。
ただし、これでも観れるのがジブリの力だとも思った。
塔の世界が崩壊するところがクライマックスだろうが特段盛り上がるかといえばそうでも無い。
キャラクターが魅力かといえば、前半部分、後半部分で登場人物が大きく変わる為、そこまでキャラクターを好きになる時間もない。なんなら本人達の存在感が強い木村拓哉や柴咲コウは上手いのだが、声とともに顔が浮かんできて途中ノイズにすらなった。
青鷺のキャラクターも本当によく分からない。自分で誘っておいて、俺たちは友達じゃない勝手に行けと悪態を突いたかと思えば嘴を直してから必死に主人公を守ったりする。大叔父から後継者たる眞人を連れてくる様指令を受けているのかと思ったが、その大叔父との関係性も希薄そうで、終始よく分からなかった。最後青鷺だけ存在が消えたのはなんだったんだろう。
それでも観れる。アニメーションだからこそ耐えうる支離滅裂さとも思えるし、ジブリだからこそ観れたとも感じる。最後も余韻もなく、東京に戻った。で終わり。いや終わりかい!ってなるのだけど、なんかまぁ、良い映画だったな。と思えてしまうのである。
広告宣伝無しというのも宮﨑駿、ジブリという確固たるブランドにより耐えられるもので寧ろ、その力を使った広告宣伝無しという名の広告でもある。キャストが豪華俳優陣、アーティストなのも公開後に明らかに話題になるのを狙った人選だと言える。リスクもあっただろうけどさすがと思う。
各媒体で考察が飛び交い面白いし、成程と勉強になる。宮﨑駿は大叔父なのか、眞人なのか、、個人的には両方説を推したい。13個の石がこれまでの作品数だそうで、それを積み上げてきた大叔父は宮﨑駿に重なるだろう。それを若者に継がせようとするのも頷ける。そして出生やら家族関係からも眞人もまた宮﨑駿に重なる様だ。宮﨑駿から宮﨑駿へのバトンだ。
つまり、大叔父(これまでの宮崎駿)は、積み上げてきた悪意のある石から今度は純粋な悪意のない石(作品)を作っていきなさいと眞人に継がせようとする。眞人はそれを拒否する。今までの世界が崩壊する。インコの王も含めてスタッフや観客をメタファーしたほぼ全ての鳥達が塔の世界から追い出されて現実に戻される。
眞人(これからの宮﨑駿)はどう生きるのか。また映画を作ってくれるのか、どうなのか。とても楽しみである。
確かに考察を読んだり、それを元に自分で考えたりすると作品の深さや広がりを感じるが、純粋な作品の面白さ、満足感で言えば5は難しい。と思った。
宮﨑駿自身も分からないところがあると発言しているから分からないことが悪いことではないはずである。ということにしたい。
ちなみに題名の君達はどう生きるのかのネタ元の本は本当に良い本なのでまだ読んでない方はぜひ読んで頂きたい。
面白かったとは思います。ただし、アニメーションであること、ジブリ作品であるというバイアスは大いに含んでいるとも思います。例えばこれが全然知らない実写映画ならキツかったと思います。
色々疑問点はありますが、それを補う何かがあれば構わないという判断で、結局は感覚で評価しています。ありがとうございます。