「宮﨑駿監督の描く児童文学作品」君たちはどう生きるか ◁ひろさんの映画レビュー(感想・評価)
宮﨑駿監督の描く児童文学作品
3回鑑賞しました。
初回に鑑賞した時は、何となく面白いんだけど消化不良気味な感じは否めませんでした。ストーリーがわかりにくいのか、演出のテンポが悪いのか、今回の久石譲氏の音楽が全編通じて静かなトーンだからなのか…色々考えました。
しかし何度も鑑賞していくにつれ、次第に自分の中でこの映画の輪郭をはっきり捉えることができるようになった気がしました。
この物語の主人公を取り巻く現実はとても辛いことばかりです。戦争、親との死別、新しい親との関係、不慣れな田舎での暮らし、イジメ…。
そんな主人公は自暴自棄になりつつも、不思議な鳥(アオサギ)や実母の残してくれた本とのを出会いを経て少しずつ生きる力を取り戻していきます。そこから物語が動き出します。
誘われるように入り込んだ不思議な世界で主人公は様々な出会いを体験をし、少しずつ成長していきます…。
難解…と言われているようですが、難解なのはあの不思議な世界の構造だけで、物語そのものはシンプルで少年の瑞々しい成長譚である…というのが3回目を見たあとの自分の感想です。エンターテイメントというよりは、児童文学という言葉が相応しい映画だと思います。
このようにこの映画の輪郭を捉えてからは、初回にはピンと来なかった演出も、静かな音楽も全てが腑に落ちるようになり、3回目の鑑賞後は含蓄のある素敵な児童文学作品を読み終えたような感じを覚えました。
最後に、個人的にこの映画の好きなシーンは、終盤、ある目的の為に主人公がありえない身体能力を次々と発揮していくところです。非常に爽快なその演出に「未来少年コナン」を彷彿とさせる宮﨑駿監督のアニメーションの真骨頂を見た気がしました。
私は元々児童文学が好きなので、ジブリが児童文学作品を作ってくれた!という喜びに近いてす。ゲド戦記もアリエッティもマーニーも「児童文学が原作の映画」でしたけど、今回は児童文学作品と感じました。