「壊れた作品」君たちはどう生きるか ぴっぷさんの映画レビュー(感想・評価)
壊れた作品
宮崎駿さんのアニメはアニメーターデビューした最初から好きだった。
1978年にNHKで放送された「未来少年コナン」は当時まだ珍しかった家庭用ビデオデッキで全話録画し何十回も繰り返し見た。「ルパン三世カリオストロの城」も劇場で観た。「風の谷のナウシカ」と「天空の城ラピュタ」は初日舞台挨拶で宮崎駿監督を直接見た。「天空の城ラピュタ」の舞台挨拶では「白蛇伝」の監督の藪下泰司さんの訃報について語っていたのを覚えている。更に時代を遡れば「太陽の王子ホルスの大冒険」も大好きだし「ガリバーの宇宙旅行」の殻を脱いで素顔になった紫の星の王女(宮崎駿担当シーン)も大好きであった。
そのようにほとんど最初からの宮崎駿ファンの私だが「君たちはどう生きるか」は初日に観てがっかりした。一言で言えば「映画になっていない壊れた作品」だった。
風の谷のナウシカのラストで腐った巨神兵が登場するが「君たちはどう生きるか」はあの腐った巨神兵に思えた。
ストーリーも滅茶苦茶、説明も無し。ドキドキハラハラも無し。伏線の回収も無し・・・というか伏線自体無かった。
面白い場面も、美しいシーンも無かった。食べ物を美味そうに描くのが得意な宮崎監督だったがパンにイチゴジャムを塗るシーンのパンが美味そうには見えなかった。
宮崎駿監督の得意とした気持ちの良い飛行シーンも無かった。
本田雄作画監督の力で作画力だけは高いが肝心の作品の骨格が滅茶苦茶なので面白くもなんともない退屈で記憶に残らない映画になっていた。
宮崎駿監督は現在82歳。「君たちはどう生きるか」を作り始めたときは70歳過ぎだが、セオリーで映画を作る監督ではなく動物的勘で映画を作る人なので知力体力の衰えがそのまま映画の完成度に反映されてしまうのだろう。「風立ちぬ」で長編アニメからは引退しておくべきだった。創作意欲がある限り「めいとこねこバス」のようなジブリ美術館用の短編アニメを作り続けるのが良いと思う。宮崎駿監督は、もう長編アニメを作るのは無理であろう。
ご同輩ですな。
私は駿ガチ勢として楽しめましたが、ご同輩の意見も至極もっともだと思います。
宮崎駿氏には「遺産」とも言える、未だ映像化されてないアイデア、イメージボード、漫画作品が大量に残されています。
これ等が我々が生きてる内に映像化されるかは謎ですが、いつか必ず掘り返しチャレンジする次世代が現れると、私は確信しています。
もののけ姫は山猫バージョンで見たかったし、多砲塔戦車「悪役一号」の活躍、戦国魔城も映画で見たかった。
それらがいつか映像化されるコトを期待しつつ最後に一言。
「駿監督、お疲れ様でした。今までありがとうございました!」
ファンとしての素晴らしい経歴感服します。
僕も激しく作品に没頭してきたファンの一人としてコメントには99%同意します。
最後に、年食ったからこの作品になったのではとのコメントには同意出来ません。
「僕が見てもわけがわからない」とこの映画を評した駿監督。この映画のストーリーに責任を持ってない証拠だと思います。
吾郎さんの作った「ゲド戦記」と物語の構成(支離滅裂・表情が死んでる・既存作品の劣化コピー)が同じな点、エンドロールで妙に目立つ位置に吾郎さんの名前があった点、などから吾郎監督、もしくは吾郎さんがストーリーの取りまとめをしたのではと思いました。
おっしゃる通りだと思います。
真に宮崎作品をしっかり観てきた人なら今作は駄作とみるでしょう。
寿司屋でネタを並べられて、いっこうに握らないおやじを眺めさせられたようなそんなイメージ。
ストーリーが安定せず、起承転結も散らかって鑑賞するにも戸惑う…
例え自伝でもエッセイでも前衛作品でも良いものはグッと来ますが今作は感じられませんでした。
黄泉の国、イザナミを母親と見立てて救いにゆこうとした神話の焼き直し?とも見えなくもないですがそれにしては演出がチープでお決まりの扉を開け閉して脱出とかも重みを感じませんでした。
ある程度脚本と構成を名のある人に任せればそこそこの仕上がりにはなったこもですが、しかし試写で監督がOK出したとのことで疑問しかなかったですね。