「楽しみ方ガイド(ついでに考察と解説)」君たちはどう生きるか Kクラス職員さんの映画レビュー(感想・評価)
楽しみ方ガイド(ついでに考察と解説)
IMAXで2回、ノーマルで1回視聴後の感想。
ようやくこの映画の楽しみ方がわかりました。
コレは全12話くらいのシリーズを2時間にまとめた総集編だと思えば非常に楽しめる映画。
(ソレだけの強度と奥行がこの2時間に凝縮されてる)
登場人物の行動が突飛で意味不明、シーンの繋ぎがバラバラ、などと感じるのは、本来描くべき場面をカットして編集しているのだと考えれば納得。
「君たちはどう生きるか」というタイトルはつまり
「君たちはこの映画のカットされたシーンを、どんな風に想像(創造)して今後の人生をどう豊かに生きるか?」という問いかけなのです。
作品のテーマはズバリ「想像力を育もう。他者の心情を慮って友達を作ろう」です。
はっきり言って説明不足も甚だしい映画なので否定的な意見が多い作品ですが、想像力を駆使して自分だけの完全で納得なストーリーを脳内で補完しましょう。
(全12話設定ですと、当然キリコさん以外も全員若い姿で大集合です。例えばメガネの婆さんは「ド近眼のドジっ娘天然美少女」として登場!など)
さぁ、段々楽しくなってきましたね?
さらに言えば、宮崎駿初の本格派ダーク・ファンタジーなのでコレをリアルタイムに視聴出来る我々はラッキー。
「亡くなった奥さんの妹と再婚とか超キモいんですけど~」などの意見も聞きますが、昔はよくあった風習(順延婚)なのでキモくありません。
(私の父方の祖父母がそうでした)
特にあの家系は家柄良さそうですしね。
「アオサギは誰?」「大叔父は誰?」「下の異世界はジブリ?」「墓に眠るのは誰?」「このシーンは過去作のオマージュ?」とか、そんな作品のテーマから外れた穿った見方はYouTubeの考察動画投稿者にでも任せて、宮崎駿ファンはただこの映画体験を純粋に楽しめばよろしいのです。
(そもそも、同じモチーフの使い回しなど宮崎作品ではお馴染みなので「このシーンはあの作品からの引用~」「ジブリ映画の総決算!」とか、
「おま、、、いまさら何言ってんの?」と片腹痛くなります)
そして、筋金入りの駿ガチ勢である私の個人的な意見としては
“(映画)初監督作品の「カリ城」が評価はめちゃ高いのに公開時の興行収益はめちゃ低かった”
の真逆の”現象“を最後の最期に創り出した、監督の壮大な伏線回収(あるいは皮肉を効かせた復讐?これこそ、もうひとつのテーマである“悪意”)に愉快痛快、ゆえに私は拍手喝采。
(ちなみに、初“演出”作品の「未来少年コナン」は日本のテレビアニメ史上至高の大傑作だが、視聴率が低かったので知名度も低かった。これも今の状況とは真逆)
、、、。
さて、ココからは私なりの“穿った”考察的解説になります。
・主人公のモデルは監督のお兄さん?
駿監督なら、自身をモデルにしたキャラクターを美形には設定しないでしょう。
監督本人は最後にチラと出た幼児。
つまり宮崎駿が誕生するまでの物語と言えます。
(そう考えると、ワラワラの飛翔シーンや産屋での眞人とナツコのやり取りも違って見えてくるでしょ?)
・主人公の自傷行為とイニシエーション。
眞人は最初、礼儀正しいが世間知らずの自己中心的な少年として描かれています。
労働奉仕を拒絶してクラスメイトとケンカした挙げ句、腹いせに自傷行為で登校拒否を正当化。
ナツコさんが行方不明になった時も、
近付くことすら禁止されてた謎の塔に接触する口実が出来たとばかりに自作の竹弓矢で敵=アオサギを退治するコトの方を優先。
(この前に母が残した「君たちはどう生きるか」を読んでいますが、ソレはまだ“知識”にすぎない)
その後、下の世界で若キリコさんからの教導=労働を体験し、死と生の循環を目の当たりにするコトで、本で読んだ「人間は社会的動物で、他者との関わり無しには生きていけない」を知識と実践で真に理解します。
ココで眞人はようやく物語の主人公たる「人格」を得るのです。
アオサギと和解しようとしたり、ナツコさんを「ナツコ母さん」と呼ぶようになるのも、このイニシエーションがあったからですね。
(むしろナツコさんの方こそ本心では冷たく自己中な眞人を疎ましく思っていた。当たり前である)
最後に面白注目ポイント。
・お婆さんズが妖怪にしか見えない。
・出てくる鳥がもれなくキモい。
・「風切りの7番」優秀すぎ。
・青鷺と眞人のほのぼのDIY。
・包丁を研ぐインコで爆笑。
・インコ大王、結局何したかった?
・鳥が群れると周辺は糞だらけ、コレめっちゃリアル。
・ナツコさんが異常にエロい。
・ヒミ様の本名は久子?
・最後は結局ハッピーエンド、いつものジブリ映画。
それでは皆さん、この世紀の大傑作を心逝くまで楽しんで、ビッグウェーブに乗り遅れるな!
2回、3回と映画館にゴーだ!!