「もっといい映画はたくさんあります」君たちはどう生きるか 通りますさんの映画レビュー(感想・評価)
もっといい映画はたくさんあります
まずメッセージ性はすごく高いと思います。
各キャラクターが誰を、何を象徴していて、彼らの行動にどういう意味があって、展開、エンディングから監督が伝えたいものは何か。
それを感じたい、考えたい人にとってはとても面白いんじゃないかと思います。
これが漫画や小説だったら私は楽しく読んでいたでしょう。読後感も良いものだったと想像できます。
しかしタイトルの通りこれはアニメ映画であり、わざわざお金を払って劇場で観ていると考えると、私としてはイマイチと言わざるをえません。
開始数分でアシタカは呪われて村を出ましたし、シータは空から降ってきましたし、千尋は名前を失いました。その後の冒険のボリュームとその面白さたるや。
一方で今作の主人公「眞人さん」は、結構お家でグダグダしています。体感、20〜30分でしょうか?もっと?私は辛気臭いという印象を受けました。早く本筋に入れよと。
あとは好みと見方の問題です。
この映画を「冒険活劇」と取るのであれば、この映画はとにかく辛気臭くて、展開とメッセージの出し方が雑です。
冒険活劇はわかりやすいストーリーの裏に、実はそこそこ深いメッセージがある、というものが多いかと思いますが、メッセージが「メッセージ」として結構露骨に描かれている印象でした。もちろん比喩の皮は被ってますが、それが逆に雑さというか、こなれていなさを感じて、私はなんだか悲しい気持ちになりました。
身体が動かなくなったベテランアスリートを見るような感覚でしょうか。。
この映画を「宮崎駿による黙示録」と取るのであれば、お世辞抜きにめちゃくちゃ面白いと思います。特に2回目です。冒頭に書いた通り、いろんなものがいろんなものとして描かれていると思います。
監督の言いたいことはなんだろう?何を表現しているのだろう?
眞人さんのお家での暮らしも、冒険に旅立つまでの過程を丁寧に描いたといえます。
彼の心の動きとは何か。彼の行動や発言が何を表しているのか。
そしてこの映画は何を表しているのか。。
他の方の考察や評価、この映画に至るスタジオジブリと宮崎駿のバックグラウンドを含めて考えるのであればとても面白い作品だと思います。
繰り返しになりますが、これが進めるペースを自分でコントロールできる小説や漫画であれば私は楽しんだと思いますが、これは2時間縛りつけで展開スピードは提供側任せの映画というコンテンツです。
キャラクターの顔も、情景も、音もスピードも、全て決まっている中で、出てきたものに対して私はあまり良い印象を受けませんでした。
同じ条件下で存分に楽しませてもらった他の映画や、私が大好きな過去のジブリ作品と比較したら、「つまらない」という感想になります。
誰にでもわかるエンタメの中に深いメッセージを隠すのがかっこいいと思ってるので、この作品は好きではありません。
メッセージを無理矢理アニメ映画の形に押し込んだようなものでした。
まあ、何を求めるかによります。
考察等々を読んで2回目見れば面白いのではないでしょうか。