「広告が無いの凄いし良いね」君たちはどう生きるか てけと2さんの映画レビュー(感想・評価)
広告が無いの凄いし良いね
広告が入るとどうしてもこの作品はこうやって見るものなんですよ、ってガイドラインが見えちゃってそこから外れたものには疑問や大人の事情を感じて考える邪魔になるのでタイトルの問いかけについてだけ考えられるのはありがたい。
ジブリと宮崎駿ってだけでワンビジュアルの公開のみなのに全国の映画館の1番広い部屋と回数で流してもらえて興行収益もガッツリあがるんだから客呼ぶために打つ広告にお金出す必要なんてナイナイ。こんな凄いことが出来るところまでスタジオが成長したのだから邪魔されずに届けたいものを作れば良いと思うよ。
内容は別に感動はしなかったんだけど最初の火事のシーンの表現を見れただけでも十分すぎるくらい良かったし、ジブリアニメは見ていて楽しい。それと感情表現が出すだけのものじゃなかったのがアニメとして新鮮でした。アニメだと描けるから無言の痛みも絵に起こせるけどありきたりな傷付き表現じゃなかったので良い意味で既存のアニメっぽさが無かった様に思う。
心の傷は深いほどさわりたく無いし自分だけの痛みだと思いたいから周りにも自分にも触れさせずにいると愚鈍になるわなーみたいな。
あの時代じゃあの子の経験よりも酷い別離や境遇の人はわんさか居るんだけど、周りに対して気付いたり配慮したり出来ないくらいの余裕の無さとか、別の事に追い立てられる必要のない甘えられる環境の中で鬱屈してつい親の力を自分の力のように使ってしまう生活の余裕に対して捌け口をつくるしか発散出来ない状況であのままいったら金と力を持ったしょうもない大人になったろうな。
息子のために自分でも無意識に気持ちよく権力を使ってしまうお父さんの一抹の悪意やエゴイズムが悪い方向に加速して引き継がれそう。
ラストは冥界行をして生まれ直す話なだけに最後は浄化されてかなりスッキリしました。
自分の中や外からくる悪意を冷静に見て対処する余裕は何処から生まれるのかと考えると友達をつくって視野を広げるって答えは具体策で、自己完結から他者と協調への王道ストーリーから外れずに強い作品になるって凄い。
あとはクリエイターに関わらず影響された環境や作品、人や師みたいなものに対しても影響は受けるけれどもどの経験を選んで身にするか引き継ぐかは本人の自由にしろって意志を感じたり。特に自己発信するタイプのクリエイターなんて色々な表現の影響は作品に顕著に出るし手法やイデオロギーは引き継げてもそれで作るものの作家性の核は自分から出力するものでしかないからコピーとか作れないし作るなよって。
ヒミ姉妹とばあちゃん'sが白雪姫と7人の小人なことだけは分かるんだけどなんでそうなのかが最後まで分からなかった。ディズニーの白雪姫がアニメ制作の道に入る出発点とかそういう事?
宮崎駿は普段どれだけおばあちゃんを見ているのか。そんなイメージ全く無いけどおばあちゃん観察しすぎだし好きすぎ。婆ちゃんにはもはや女の理想が詰まってるの?
全ての儀式は死と再生を現していると澁澤龍彦は言いましたが、この塔の冒険全体がまさしく成長の儀式でした。
もしかして自分達も、子供の頃はあんな冒険していたのかもと思うと、何かワクワクします。
旦那さんにとって自分はお姉さんの代わりでその息子は冥界守りにさせられそうで、名家の娘が結婚前に妊娠までしてで、旦那を愛してるけど自暴自棄気味な状況でお腹の子供共々お姉さん親子の代わりになろうとしたら、当の原因に向かえにきましたーって言われて。
そりゃ大嫌いだーって言いたくなるわ、みたいな。でも元々は家族になりたいのは本心で愛情深い人だと思いますよ。状況のせいで愛情に負の感情乗っちゃった様に見えました
そうですねーナツコさんが迷い込むくだりはポンと納得いく説明なかったですよね。
自己解釈だと、
妊婦=生死が曖昧な存在だからあの世界に入れる。
あそこは冥界なんで命が生まれる場に死者やそれに類する側にいる者は触れてはいけない。
ナツコさんは主人公とお姉さんのために子供と自分をあの世界を支える役割として人柱にしようとしたのかな?って思います。