「宮崎駿監督作品エッセンスを潤沢に盛り込んだ少年の成長物語」君たちはどう生きるか みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
宮崎駿監督作品エッセンスを潤沢に盛り込んだ少年の成長物語
学生時代、授業の合間に近くの名画座で貪るように映画を観ていた時期がある。その時に、喝采、波止場、白鯨、などの名作に出会い感銘を受け、事前情報ゼロの映画鑑賞の醍醐味を知った。以来、現在に至るまで、極力、原作を読んだ作品は観ないし、事前情報は最低限での映画鑑賞が続いている。本作の事前情報ゼロを聞いた時には、久々に学生時代の感覚が味わえると思うと公開が待ち遠しかった。
予想通り、先が読めない、何が起きるか予測不可能な、宮崎駿監督作品のエッセンスを潤沢に盛り込んだ、らしい作品だった。無心で画面を追い続けた。本作の舞台は、太平洋戦争中の日本。主人公は眞人。彼は、住んでいた東京の空襲で母を失い、父は母の妹なつ子と再婚する。なつ子は妊娠する。3人家族は父の実家に疎開する。疎開先は、となりのトトロを彷彿とさせる雰囲気がある。そこで、主人公は、虐められたり、ふとした切っ掛けで、人間界とは違う異世界に触れ、摩訶不思議な異世界の多様な価値観を知る。ここは、千と千尋の神隠しを彷彿とさせる。また食物連鎖の非情さを改めて知る。貴重な経験をして眞人は、大きく成長していく。
ラストシーン。眞人一家は東京に戻っていく。眞人が疎開してから東京に戻るまでの数年間のプロセスは、眞人が疎開先での体験を通して自分の生きるべき道を定め行動していくプロローグである。眞人はどう生きるかを決めた。そして、日本の戦後復興に貢献、尽力したと推察できる。
では、本作を観終わった観客=君たちは、今後、多様化が進み、科学技術が進歩し、ますます複雑化する社会のなかでどういう価値観、覚悟を持って生きていくのですか。誰も教えてくれません。君たち自身が、今後の人生をどう生きるのかを決めて行動して下さい。ラストシーンの眞人の東京に戻る姿を通して、本作は、我々観客に、そう強く主張していると感じた。日常に追われ漠然と生きていくのではなく、本作を機会に今後どう生きていくのか真剣に考えていきたい。
共感ありがとうございました。意味がわからないというレビューが多い中、自分は不覚にも寝てしまって、本当にわからないのですが(苦笑)、みかずきさんのレビューでなるほどと思いました。
自分で考え決めていくことを、今のような時代には本当にみんなに伝えたいですね。特に子どもたちに。
白鯨、高校の英語Rの時間に見ました!。海の輝きとダイナミックな映像が印象に残ってます。君たちはどう生きるかの原作は中学の国語の臨時講師の先生が授業で毎回10分読んでくれました、自分でも読みましたが。
繰り返し見たくなる、不思議な映画です。3回見ました!
コメント、ありがとうございました。
いつも深い洞察力と知識に圧倒されます。
しかも、大勢の方のコメントを読み、共感ポイントを更に深めてコメントを送る。
常人ではありませんね。
尊敬します。
亞lexさん
コメントありがとうございます。
仰る様に、様々な解釈が成り立つ作品ですね。
眞人は疎開先で人間界ではない異世界に触れ、色々な価値観を知り、大きく成長していきます。眞人は宮崎監督がモデルになっていると推察しますが、人間は小さい、世界は広い、広い世界から多くを学べという宮崎監督からの激励だと解釈しました。
本作は眞人が東京に戻るところで終わりますが、この時、既に、眞人はどう生きるか定めていたと推察します。
作品のラストは作品タイトルに繋がっていくと解釈しました。
世界を広く知って、どう生きるかを定めよ。そして行動せよ。
宮崎監督からの熱いメッセージ、エールを感じました。
では、また共感作で。
ー以上ー
色んな人の解釈を見たくなる作品で、みかづきさんのレビューを楽しく読ませてもらいました。
私は、宮崎駿の頭の中を見せてもらったような気分でした。
この発想力はどこから来るのか。
私(宮崎駿)は、こんなにも自由だぞ、お前達はどうなんだ。
人に合わせて生きることに一生懸命になってどうする。
と題名そのままの問いを投げかけられたように感じました。
物語の奴隷として主人公を使わないので、異世界で義母を探す同機が曖昧になっているところにも好感を覚えました。物語を敢えて駆動させない、この事に気づかない観客が現在の私たちなんでしょうね。
みかずきさん 丁寧なコメントありがとうございます。あとを引く素晴らしいレビューですね。
私が「君たちは」で1番面白かったのは、異世界へ行くまでの過程でした。行動力のない主人公が、自分で考え納得して能動的に異世界へ向かいます。そこに全てが詰まっているように思います。
こんにちは。
静かに鋭く考察されているこのレビューを何回も拝見いたしました。
情報時代に逆をいく今作のスタート。様々な意見のなか、私はとても新鮮に感じたタイプです。
いつもより、知らない分、目を凝らし耳を傾けて知ろうとしたようにも思います。
共感していただきましてありがとうございます。
みかずきさんがレビューされていますように、私のアタマの中にも今までのジブリ宮﨑作品のワンシーンワンシーンが既視感のように流れてゆき、ストーリーに追いつくのに必死でした。
ストーリーに遅れることなく評論できてしまう方々は凄いと感じました。
私は映画を観ているというよりも「絵本の読み聞かせをきいている」ように思いました。映画が終わったあと、「続きはきみたちでつくりなさい」といわれているようでした。
みかずきさんのレビューを確認するためにも、もう一度観にこうと思います。
共感をありがとうございます!
学生時代からとても贅沢な鑑賞経験をお持ちなのですね!
いつもみかずきさんのレビューに感動を頂いておりますが、柔軟な感性や鋭い考察力はこんな風に映画と向き合っておられるから培われるのだなと納得しました!
私も事前情報は極力とりたくないのですが、劇場でネタバレになるような予告を見ちゃった時は
えーーーーん!となりますw
最近だと「最後まで行く」のあの車のシーンとか、、w
そして本作2回目鑑賞してきました。読み取れていない部分が大半かと思いますが、、芸術的でとても好きです。
リアルタイムで経験できて幸せでした!
今晩は。
レビュー拝読しました。
結論から申しますと、素晴らしいレビューだと思いました。
敢えて、情報を一切開示せずに、観る側に現況下の世界情勢を想起させつつ”君たちはこの混沌とした世界の中でどう生きるのか、どう行動するのか、どう思索するのか!”という宮崎監督の貴重且つ崇高なメッセージがビシバシ伝わって来て、会社を途中で抜けて(コラコラ)観たかいがあった作品でした。
有難い事に多くの方から共感を戴いていますが、殆どの方はレビューを書かれていないので”ホントに、共感してくれているのかな‥”と思っていましたが、安心しました。では。