「ジブリ最高の名作」君たちはどう生きるか 浅川総合保険事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
ジブリ最高の名作
日本人の日常生活から物語ははじまり、やがてファンタジーの世界へ、そして現実の世界に戻る。主人公が抱えたトラウマや苛立ち、葛藤がファンタジーの世界での登場人物との関わりやぶつかりを経て解消され昇華される。人生や世の中の問題…生と死、老い、友情、恋愛、成長、退行、愚かさ、勇気、挑戦、弱さ、天地創造とは、性的マイノリティー、人間性、権力欲、優しさ、強さ、絆などの数々が盛り込まれ、その答えを言葉ではなく、映像で示している。なので、その人の感性により、感じ取れる人、何も感じない人に分かれるし、感じ取れる人でもその分量は異なってくる。そして、宮崎駿が伝えたい「君たちはどう生きるか」を映画を通して映像で伝えているメッセージは、自分で考えること、前を向いて生きること、正直であること、人と本音でぶつかりあうことにより物事の進展がある、自分の短所を認めることが自分を成長させる、人の死の悲しみを感じることは悪いことではないがそれに囚われすぎずに眼の前に居る人間(登場人物の夏子、おばあさんたち、アオサギ…)も見ること、大事な人が亡くなって悲しい気持ちは大事だが、今眼の前にいる人間に心を開いていくことにより、いまを生きることが出来る、亡くなった人のことも忘れる必要はない、時間は一方向に向かって進んでいるばかりではなく、現在から過去へと進んだり、ある点からある点へと飛び越えたりするものであるので、時間軸に囚われずに「今」に存在すること…などを感じ取ったが他にもまだまだ気がつかないメッセージが作品の中に込められていると思う。そして、「君たちはどう生きるか」には、学校に通うべき年齢の主人公にとっての学校生活がほとんど出てこない。学校生活を送らずとも成長は出来る、だから学校生活にこだわる必要はない、老人や大人からも生きることについて学んだり、安心を与えられたりすることがある、という現代の不登校の子供たちへのメッセージも込められていると思った。
宮崎駿監督は天才であると確信させられる映画である。
ディズニーとの縁が深い宮崎駿監督ならではだが、お屋敷の使用人の老女たちは、白雪姫の七人の小人のように主人公たちを助け、主人公の母親のヒミは白雪姫と似ている髪型、服装をしているなど、ディズニーとのつながりが深い宮崎駿監督ならではのディズニーへの恩返しのような一面も感じられた。