「解像度の高い悪夢の連続」君たちはどう生きるか あしたさんの映画レビュー(感想・評価)
解像度の高い悪夢の連続
ひと言で言えば、世の中に絶望した老人の戯言と妄想とお説教を映画にしました!ってことになり、近年タランティーノが言っている巨匠の晩年作に良い映画は一つもない、ってことの1つになってしまうだけども。
とにかくキツイなーもう目を背けたいなーと思ったのは、ほぼ全てのシーンに既視感が、しかも宮崎駿作品の既視感が詰まりまくっていることだった。
冒頭の風立ちぬの震災シーン、トトロの引越しのシーン、千尋の湯屋、もののけ姫の弓矢、耳をすませばのバロンのシーン、それを総集編のように見せられているようで、それは今までの宮崎駿作品には感じたことのないイマジネーションの欠落を感じずにはいられなかった。
脚本はまだいい、許せるんだけど、この新しさがないシーンの連続は、さすがにつらかった。
観ていて一番近い感覚は、まさかの思い出のマーニーだった。
ひょっとしたらゲド戦記か。
それでも星が2.5なのは、アニメーションの動きの気持ちよさ、冒頭の火災のシーンのフレッシュさ(そこだけ何故か泣きそうになった。新しい表現だったから)
大叔父(=宮崎駿)による仕事業(=映画作り)を軽やかに拒否してみせる若者、っていう大叔父の絶望感に思いを馳せ、その恨みによって作られたこの悪夢のような作品を30年後くらいに私は絶賛していそうな予感も感じている。
もちろん観て良かった。
同じ劇場で観ていた周りの人のため息含め、記憶していきたい、マジで。
2023/7/23 2回目鑑賞
様々な個人ブログレビューや出始めた評論家たちの解説批評をこの1週間読みに読んで家族と再度鑑賞。
基本的には↑の感想に変化なし。
この映画の趣旨のためにジブリの過去作のセルフオマージュが必要だったのだろうけども、それを観たいなら私は最高の過去作を観ます、と再度思った。
ただ、ジブリ単独出資である、不誠実な宣伝もしない、直前に出した書籍(スタジオジブリの歴史をまとめた「スタジオジブリ物語」)、など色々とジブリ的にも補助線を引いたつもりの映画だったのだろうと擁護もすべきかとも思った。
冒頭の火災のシーンは、これは何度観ても凄まじいシーンだなと思った。
あの数分のシーンで状況、主人公の思い、が見事に描かれていて本当にフレッシュだった。
このシーンだけで1900円の価値は余裕であるぜ。