「丁寧に作られた退屈な映画」君たちはどう生きるか LCさんの映画レビュー(感想・評価)
丁寧に作られた退屈な映画
上映前にポスター一枚しか公開しないという前例の無い方法で宣伝?され、しかもあの宮崎駿監督作品とくれば期待しないわけにはいきませんでしたが、結論から言うと実に不可解な作品でした。
東京から疎開した少年が、疎開先で異世界に迷い込むといったような内容で、タイトルにある『君たちはどう生きるか』というのはその舞台となった時代に出版された本のことです。亡くなった母親が持っていたその本を偶然見つけた主人公が、その後に本とは特に関係の無い幻想的な展開に巻き込まれていきます。
冒頭の空襲のシーンからファンタジー展開を経て、最後に疎開先を後にするシーンに至るまで、作画やカメラワークは非常に丁寧で、流石はスタジオジブリだなと思いましたが、それだけでした。
話の展開が不可解すぎて、物語を堪能しようとする気持ちとの剥離が広がる一方でした。
一時間ほど経過した後、既に先が全く気にならなくなってしまい、時間ばかり気にしてしまいました。途中退席しようかと思いましたが、エンディングに流れるであろう米津玄師氏の主題歌と、誰が声を当てているのかが知りたかったが為に最後まで残りました。
この作品から何かを必死に汲み取ろうとする人や、素直に自分なりに何かを受け入れた人、そもそもがファンタジーなのだからストーリーなんて気にしなくていいという人までいろんな人がいると思います。日本を代表する宮崎駿監督作品だから、シンプルにつまらないと言えない空気のようなものが全く無いとも言えません。
しかし私はこの作品を観ても何も受け取れなかったし、何も感じることが出来ませんでした。恐ろしく丁寧に作られた、退屈なアニメ、それ以上でもそれ以下でもありません。
この作品は予告編を作らなかったのではなく作れなかったのかなとさえ思ったし、どう生きるか以前に何を見せられたのかも分からないといった状態で映画館を後にしました。
真に素晴らしい作品は、必死になってその良さや込められた意味を考察して見つけようとせずとも、自然と称賛の言葉が出てきます。
この映画を褒める言葉は自分の中から湧き上がりませんでした。ただ時間と労力をかけて作られた不可解な作品としか思えませんでした。もうジブリの作品を観ることは無いだろうなと思いました。